日本で働く外国人が増えていて、去年10月末の時点で、外国人労働者数は初めて200万人を突破。同時に、保護者と一緒に来日したり、両親のどちらかが外国人だったりする、「外国にルーツがある子どもたち」も増えています。

保護者に「運動会」「遠足」が伝わらない

そうした中で、保育園や幼稚園では、さまざまな苦労があるようです。川崎市にある「桜本保育園」の園長、朴 栄子さんに伺いました。

「桜本保育園」園長 朴 栄子さん
うちの保育園のある川崎区っていうのは、外国に繋がる人がたくさん住んでるところで、どの保育園にも今は、「外国に繋がる子たち」がいます。

子供に対しては言葉がわからないので不安がたくさんなので、身振り手振りをしながらやってます。

あと保護者は、『やさしい日本語』でやり取りをするようにしています。「運動会」っていうのは「体をみんなで動かしながらするイベントだよ」とか、「遠足」っていうのも遠足じゃ伝わらないので、「子供たちと一緒にどこかに出かけていって楽しみます」とか。

でもかなり優しくしてるつもりですけど、まだ伝わらないつもりことがいっぱいあります。

そもそも、運動会や遠足、は世界共通の行事ではないですし、言葉や文化が違うので、困り事がたくさんあるようです。

こちらの桜本保育園は50年続く保育園で、以前から積極的に、外国にルーツを持つ子どもを受けていているのですが、ここ数年で、国が多様化。

現在は、日本の他に、韓国、朝鮮、中国、フィリピン、ベトナム、ブラジル、ペルーなど7か国。定員90名のうち30人近くのおよそ3割が、海外ルーツの子どもということです。

「水筒にお茶」で誤解。先生向けのガイド本

保育園が出しているお便りも、「やさしい日本語」で書くようになったということですが、こうした現場の声をうけて、今年、あるガイドブックが作られました。

「かながわ国際交流財団」の、福田 久美子さんに伺いました。

「かながわ国際交流財団」福田 久美子さん
保育園の先生、幼稚園の先生向けのガイドブックです。

例えば「水筒に<お水>か<お茶>を入れてきてください」って言われて、ただ日本人はお茶って言うと「麦茶」が一般的で、カフェインが入ってなくて、子供たちも大丈夫みたいなのがあるんですけど、外国人の多くの方にお話を聞くと、お茶っていう物がカフェインが入っているお茶。そういったイメージがあるので、「子供にお茶なんてありえない!」という意見が多く聞かれたりするんですよね。

あとは「上履き」も同じような感じなんですけど、真新しいスニーカーやスリッパを持ってきたりとか。

やっぱりその当たり前と日本の当たり前が違うので、「持ち物をきちんと説明しないとわからないですよ」っていう話を書いたりしてます。

外国にルーツがある子どもたちへ、伝わる情報提供をの画像はこちら >>

<受け入れガイドブック(かながわ国際交流財団のHPからダウンロードできます)>

外国にルーツがある子どもたちへ、伝わる情報提供を

<麦茶がわからない>

「かながわ国際交流財団」のホームページから、誰でも無料でダウンロードできる、「受け入れガイドブック」という冊子。

実際に、保育の現場からあがってきた困り事をまとめて、イラスト付きで紹介。

例えば、宗教上や、文化上の理由で、生まれてすぐにピアスの穴を開ける国があるのですが、そうると、子どものピアスを外すように求めても、保護者から断られる可能性があります。

また、差別や偏見、ステレオタイプの問題も解説されていて、例えば「どうせわからないでしょ」という態度は、
差別にあたるなど、丁寧に書かれています。

保育園申請の書類で挫折

すでに、神奈川県内の一部の幼稚園、保育園で、この冊子を活用しているところもあるようですが、こうした「入園したあと」に出てくる困り事がある一方で、外国人の保護者にとっての最大の壁は、「入園するまえ」にあるそうです。

「桜本保育園」園長 朴 栄子さん
保育園の申請が、まず難しいんです。

多分どこの自治体もそうでしょうけど、保育園申請に書類がたくさんあって、役所の書類なので、まず日本で育ってる人たちも、あの書類を準備したりとか、読み解いて、いろいろ書いてくってのはすごい大変な作業なので、外国人の方はまずそこで挫折する方も結構いらっしゃいますね。

「何とか証明書」って役所の文書いっぱい書いてあるので、何だかわからないじゃないですか。

なので実は保育園入所の書類のところが一番大変です。

だから書類を出すのがなかなかうまくいかなくて、結構わりと、締め切り間近になって持っていくとか、過ぎちゃったとかっていう方々は、結構いますね。

幼稚園や保育園に入るシステムがわからないという人が、非常に多いようです。

川崎区役所に問い合わせてみたところ、英語、中国語、韓国語、朝鮮語、タイ語、タガログ語、マレーシア語、ベトナム語で書かれた、書類を用意しているようですが、中身を見ると、たしかに日本人でもわかるやすい内容とは言えません。

外国にルーツがある子どもたちへ、伝わる情報提供を

<保育園の種別が難しい(板橋区役所の書類)>

また、必ずしも区役所に通訳が常駐しているわけではなく、対応言語も限られているので、提出が遅れてしまう人もたくさんいるそうです。

すでに日本は、外国人に労働力を頼っている状況ですが、インバウンドで盛り上がるだけでなく、同じ地域に暮らす「隣人」としてのサポートもして欲しいところです。