先月、群馬県高崎市のローカル線の踏切で、小学生の女の子が電車にはねられて亡くなるという事故がありました。この事故を受けて、高崎市は市内にある「第4種踏切」を無くすと表明しました。
「第4種踏切」とは?
踏切には第1種から第4種まであって、第1種は警報機も遮断機もついた踏切です。今回、高崎市が無くすという第4種踏切というのは、警報機も遮断機もない踏切のこと。
第4種踏切は全国に約2,400ヶ所。思った以上にまだまだあるんですね。
では、第4種踏切はなぜ残っているのか。第4種踏切の現状について、鉄道ライターの杉山淳一さんに聞きました。
鉄道ライター 杉山淳一さん
「第4種から第1種に、警報機を付けて遮断機を付けるってやりますと、だいたい1,000~1,500万円くらいかかるそうなんですよ。でも、渡る人が少なければそんなにコストも掛けられないということですよね。しかも電気を通してますから点検も必要ですし、維持費も結構かかってくるということで。
踏切は踏切道という道路の扱いなんですよ。だから鉄道会社さんの都合と道路を管理する自治体、ないしは国との折衝で決まっていくかたちになるんですよね。なので、基本的には自治体も鉄道会社さんも、お金がない場合は、ここの踏切は閉鎖しましょうってなっちゃいますよね。踏切が無ければ安全なんだっていう考え方なんですけど、そうすると、やっぱり普段その踏切使ってる人たちは不便になるからヤダなって話になっちゃいますよね。
実際、「勝手踏切」と言って、踏切になってない線路を渡っちゃえるように、板を敷いちゃったりしてるようなところも、結構あるんですよ。なかなか頭の痛い問題なんですけど。」
高崎市は、市内全ての4種踏切を廃止する方針です。ただし、住民の同意が得られない踏切については、第1種踏切に変えるとしています。第1種の設置について、高崎市は1,500万~3,000万かかるとしていますが、費用は鉄道会社ではなく市で負担するとしています。
しかし、杉山さんによれば、これはなかなかないケースだそうで、自治体も鉄道会社も、財政難に悩んでいます。その結果、第4種踏切を廃止するだけにとどまり、「勝手踏切」という、より危険な踏切ができてしまっています。数の把握は難しいのですが、「勝手踏切」は全国に少なくとも1万7千ヶ所。3万ヶ所以上ともいわれています。
第4種踏切をどうなくす? 独自の取り組みを進める自治体も
そんな中、独自の取り組みで対策を進めている自治体もありました。茨城県筑西市、市民安全課の早瀬正行さんのお話です。
茨城県筑西市市民安全課 早瀬正行さん
「2016年に、第4種踏切の井ノ上第一踏切というところで死亡事故が発生しまして、市ではこのような悲惨な事故を無くすために、市内の4種踏切の安全対策を進めております。
死亡事故が発生しました第4種踏切は、廃止のみということで、迂回路等は整備していないのですが、栄踏切というところですね、JRと関東鉄道、真岡鉄道、鉄道3線をまたいで、極めて危険性が高いというところがありまして、あの地元の自治会から廃止の同意を得られたため、そちらの4種踏切を廃止して、迂回路整備費を予算化しまして、迂回路を整備しました。
住民の方の利便性も考えつつ、危険性も考えねばならないということで、なかなか時間のかかる作業ではあったと思います。」
踏切を廃止にすると、住民にとっては不便になるだけですが、安全な踏切までの道をしっかり整備しますよ、ということ。
筑西市では住民の合意が何よりも大事と考え、住民への説明会などを丁寧に行いましたが、その際に、「廃止してもいいけれど、代わりに迂回路を作ってほしい」という声がありました。
それを受けて、市は鉄道会社から用地を借り上げて、迂回路の整備を行いました。廃止までに2年と、時間はかかりましたが、迂回路は住民たちに受け入れられて、しっかり使われています。また、残りの4種踏切も、住民との対話の最中です。
第4種を残したまま、事故を防ごうとする取り組みも
他にも、また別の対策をしているところがありました。再び杉山さんのお話です。
鉄道ライター・杉山淳一さん
「JR西日本が、いま面白いことをやっていて、第4種踏切は残しておきながら、遮断機ではなく、踏切ゲートという手動のバー、棒を設置して、普段は棒が道路を封鎖してるんですけど、渡る人はその棒をどけて渡る。
要するに「踏切を渡るんだ」という認識をしっかり持っていただいて、という意味なんですよね。このバーを設置するだけだと100万円くらいで済んじゃうんですって。で、手っ取り早くこれでやってみたら、実は、踏切の前で停止する人っていうのが、今までは6割くらいの人たちが一旦停止しないで通っちゃったんだけど、バーを設置してからは9割の人が、そこで一回停まって確認をしてくれるようになったっていう。
なので、当座、ホントは第1種、お金をかければいいんだけど、そこまでしなくても一旦これでなんとか、という感じですかね。そうですね、これはちょっといいアイデアだなと、僕は思います。」
自分でバーを上げて「踏切を渡るんだ」という意識が強まることで、注意して踏切に入るようになるんです。
道路としては交通量が少ないことで第4種踏切となっていることが多いので、住民の利便性と安全面、そして費用と、どれかを犠牲にすることなく、それぞれの自治体や事業者に合った方法で、対策を進めてほしいですね。
ちなみに、現在、新しい路線が走る場合は、何種であろうと踏切は作ってはダメ。必ず立体交差になっています。既存の踏切も高架化、地下化工事も多く、踏切はなくしていく方向になっています。