食欲の秋。色々と美味しい季節ですが、去年の秋、我々に身近な焼き海苔が歴史的な不漁だ、というニュースがあったことは、みなさんも覚えていらっしゃると思います。

温暖化の影響で各地で海藻類に影響が出ており、焼き海苔以外の海苔も、実は、思うように収穫できない状況が続いています。

味噌メーカーが、アオサを陸上で養殖!!

そこで、この事態をなんとかしよう!とういことで、味噌メーカーの「マルコメ」が、新たな事業を始めました。マルコメの開発部、松島大二朗さんのお話です。

マルコメ株式会社開発部 松島大二郎さん

「私どもお味噌の会社なんですけれども、味噌汁の具材として【アオサの陸上養殖】の事業を開始しました。アオサというのは海藻の一種で、一般的には網にアオサの種をつけて、それを海に放流してそこからどんどん大きくするっていう、海でやっていたやり方でしたが、今回の方式は、陸上に円形水槽って言われる水槽を多数並べて、その中に海水を注水して、アオサを陸上養殖しているというような流れになります。

今、アオサ自体は人気の具材なので、需要はどんどん高まってきたんですけど、なかなか収量自体は右肩下がり。なので我々もずっと危機感を抱いておりましたので、じゃあどうしようかということで、この陸上養殖が使えるであろうということで、研究を始めておりました。」

陸育ちのアオサの開発に成功しました!!

すでに9月の出荷分から、「即席生味噌汁 料亭の味 あおさ(8食)」という商品の一部に、陸育ちのアオサが使われています。

ちなみに、天然物のアオサというのは、量が少なくてほとんど流通していないそうで、海で育てる「海上養殖」が一般的なのですが、ここ20年で収穫量が半減してしまっています。

ところが、今、アオサは大人気で、インバウンド需要もあり、大手寿司チェーン・牛丼チェーンの味噌汁に使われ、アオサの需要は増えています。

これはマルコメにとっても一大事!ということで、徳島文理大学の山本博文教授とタッグを組んで、8年の歳月をかけて商品化にこぎつけました。

現在、愛媛県内で直径5メートルの水槽を48個使って育成中。

アオサに青のり、コンビニのおにぎりも。陸育ちがピンチを救う!...の画像はこちら >>

(アオサの陸上養殖場 ずらりと48個の水槽が並んでいます 写真提供:マルコメ株式会社)

しかも、海だと冬しか収穫できないのに対して、陸なら水温の調節が可能。つまり、通年収穫が可能!「まさかお味噌の会社で海藻を育てることになるとは・・・」と松島さんはおっしゃっていましたが、陸上養殖ができるようになったのは、素晴らしいですよね!

アオサに青のり、コンビニのおにぎりも。陸育ちがピンチを救う!?

(こちらが陸上養殖のアオサ 活き活きとしてますね! 写真提供:マルコメ株式会社)

四万十川の特産スジアオノリもいつの間にか陸上養殖に!?

そして、さらにもう一つ。私たちに身近な海藻・青のりも陸育ちのものが登場しているんです。

高知大学で海藻の研究をしている、平岡雅規教授にお話を伺いました。

高知大学黒潮圏科学部門 平岡雅規教授

高知県では天然の青のりを獲ってるんですが、それが海の温度上がってて4~5年くらい前から獲れなくなってるんです。だから海苔がない、青のりないんですよ、最高級のやつが。だから、高知県内は高知大学の技術を色んな事業者に提供して、陸上養殖で生産した青のりに完全に入れ替わってる。土産物屋に【四万十川の青のり】と売ってたものが、全部、陸上養殖に置き換わりました。

高知大学、宣伝下手なんで、近畿大学は【近大マグロ】とやってますよね。そんなん全然やってないので、高知県民も知らない間にですね、陸上で生産することを完全に入れ替わりました。」

天然物の青海苔が陸上養殖に置き換わっていたんです!!

高知県の四万十川の特産「スジアオノリ」。こちらは、お好み焼きや焼きそばにかける青のりの原料としてよく使われる品種ですが、これが近年壊滅的な不漁。かつて年間50トンほど採れていた天然の青のりが、今はゼロ!!5年ほど前から、全く収穫できない事態になっていたんです。(こちらも大きな要因の一つに、海水温の上昇があるそう)

そこで、平岡先生が中心となって進められてきたのが、スジアオノリの陸上養殖。

地下300メートルの海洋深層水を汲み上げて、冷たくて栄養豊富な水で育てると、生育が良いということで、いくつかの企業から「陸育ちの青のり」が販売されています。
しかも一週間で10倍ずつ増えるそうですから、これは、心強い!!

風味は、さすがに天然物にはかなわないとは言いますが、十二分に美味しい青のり、これからはもっと商売っ気を出してアピールしたいと話していました。

(ぜひ!)

その陸上養殖技術で、コンビニおにぎりの海苔も助けて!

アピール下手、というお話もありましたが、いえいえ、見ている人は見ています!この陸上養殖の技術に、ある業界から、最近、相談が増えているそうです。再び、平岡先生のお話です。

高知大学黒潮圏科学部門 平岡雅規教授

「コンビニ業界が大変です。最近、海苔巻いてるおにぎりが減ってるの、わかりますか?コンビニのおにぎりに巻ける、手頃な価格のいい海苔が、めちゃくちゃ手に入りにくくなってる。あれ、青のりとは違って、アマノリって言うんですけど、あの種類が一番日本人が食べてる。それも不作が続いてるので、海苔が手に入らないって言って、やっぱりうちに相談に来る。『陸上養殖できませんか?』って。

試験レベルではできてる。作れるぞっていうのは、スジオアオノリと同じように作れるぞっちゅうのは分かってるんですけど、いま海苔業界、大変なんですよ。」

アオサに青のり、コンビニのおにぎりも。陸育ちがピンチを救う!?

(一番近くのコンビニに行ってみました。ピンクの網掛け部分が、海苔ナシおにぎり。たしかに多いですね!)

コンビニのおにぎりに巻く海苔、アマノリも、不作で困っていて、問い合わせが増えているのですが、こちらもすでに、試験レベルでは出来ています!陸上養殖の方法は確率されているそうですから、この状況が続けば、レタスを屋内で育てる「野菜工場」が広がってきたように、海苔の「陸上養殖」も当たり前になってくるかもしれませんね!

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)

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