毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。 今日は地域の情報面で見つけた『練馬で中学校分断する道路計画』という記事を取り上げます。
住民から「道路を作る計画をめぐって問題になっていて、反対運動の集会をする。」という情報提供を受けて取材を始めた、東京新聞社会部記者の浜崎陽介さんにどんな問題が起こっているのか、お話を伺いました。
道路計画が実現すると、中学が四分割!!
東京新聞社会部 浜崎陽介記者
「大泉第二中学校という学校の建て替えと一体になった道路計画なんですけれども、ただこの道路計画が実現すれば、新たな学校の敷地が分割されるっていう、こういう計画になります。
敷地は四分割されるんですけれども、南北の道路を挟んで、西側に校舎、東側に体育館と運動場という構造になるんですけれども、区の言い分としては、渡り廊下でこの東西を通すんですけども、そこは屋根をつけて覆うと。なので生徒の転落の心配もないし、また運動場も南側の離れたところに第二運動場を設けると、なので道を挟んで東側と南側を足せば、これまでの運動場のスペースよりも広くなるっていうのが言い分なんですけれども、保護者の声からすると、その離れた運動場まで信号挟んで、交通量の多い道路を通って行くっていうのが、安全性がどうなのか、不便じゃないか、ですとか、周辺にそういう大きな道路が通るので、騒音とか場合によっては排ガスとか、そういう子どもたちの学習環境は守られるのか、っていうのは聞こえてきました。」
中学校の敷地が四分割されるのは、あんまりですよね。運動場は二つ合わせれば、前より広くなるといいますが、体育や部活のたびに交通量の多い信号付きの横断歩道を渡る、というのは、実際どうなのよ?という気がします。
浜崎記者の取材によれば、区は学校を分断しない道路計画も検討したのですが、より多くの立ち退きが必要となってしまうため、現実的ではない、と検討段階で案から外れたそうです。
ただ、この道路計画の目的は、周辺道路の混雑緩和が主とされています。特に、大泉学園駅から南に延びる、大泉第二中学の東側を通っている学芸大通りという道路が、車、バス、自転車、歩行者、いずれも多く、住民からも、この道は危険だ、ベビーカーでは怖くて通れない、という声が寄せられているため、新しい道路を作る必要性がある、と区は考えているのです。
私も行って見てみましたが、片側一車線の道路で、交通量も人の行き来も自転車もたしかに多いな、と感じる道路ではありました。
バス通りは混むけど、それにしたって!!
そこで、実際に大泉第二中学校の付近の住民の方に、私もお話を伺ってみました。
・「(新しい道路は)無くてもいい。(交通量が多いから)そんなでもないと思いますけど、私はね。学校を突っ切る感じだったりするので、可哀そうじゃないですか、あっち行ったりこっち行ったりとか。」
・「今、人口どんどん減って来てんじゃない?な?もう何十年前の計画をそのままやらにゃいかんのかって話よ。そういう金があるんならね、ちょっとね、他の方に回した方が良いんじゃねえかと思わんでもない。」
・「バス通りが、バスがすれ違えないんですよ。
で、車道から歩道の方に出ちゃってやっぱ危ないので、(新しい道が)出来たら、ね、すごい楽になるのかなと思いつつ、でも子ども達が可哀そうかなっていう気もするしっていうのが正直な意見です。」・「あそこのバス通りが混雑してるのは、これは事実で。そこが解消するのは良いんだろうなと思うんですけど、あそこやっぱ四分割はひどいなって思ってて、そうそう学校、大二中(大泉第二中学)。地図見ると四つに分かれるんで、ちょっとやりすぎじゃいかなっていう気がするんで、できれば違うやり方で、今の道拡大してもいいだろうし、そんな風にしてくれた方がいいかなとは、個人的には思いますね。」
私も、バスのすれ違い見ましたが、なかなかのギリギリ具合・・・。
住民の方々も、それぞれバス通りを使う時間によって多少印象の違いはありますが、おおむね、確かにあの道は混んではいる、と、しかし、それにしたって!という感じ。
また、二人目の方が、何十年も前の計画を今さら?と言っていましたが、浜崎記者も取材でよく耳にしたそうです。それもそのはず。実は、今回の計画、南北に通す道路が1947年、東西に通す道路が1966年に、それぞれ都市計画決定された道路。80年近く前の計画なんです。今と事情が変わって来てるのでは?と思いますよね。
稲荷山憩いの森の整備でも反対運動が起きているんです!
中学の分断のほかにも、立ち退かなくてはいけない住民も多くいて、納得していない方はまだまだ多い、と話す浜崎記者ですが、さらに、記事にない、こんな話を教えてくれました。
東京新聞社会部 浜崎陽介記者
・「新たな道路整備となると、もちろん国や都からの補助金も含めて大変な費用がかかるわけですけども、今、ホントに建設費も高騰してますし、埼玉県八潮市で陥没事故もありましたけども、ホントに新しい道路ばかりが必要なのか、もっと改修とか点検しないといけない老朽化したインフラがあるんじゃないか、という視点も大事かなと思います。
実は、練馬区は大泉第二中学校を分断する道路計画以外にも、住民の反対が起きてる案件がありまして、例えば稲荷山公園、稲荷山憩いの森という所があるのですが、ここでも公園を整備するために、最大で400戸ぐらい立ち退きが必要になるんじゃないか、という計画が今動いてます。
で、これも住民の方が大変な反対運動をしてまして、そういったことを含めてですね、どれだけ新しい道路作ったり、公園作ったりが必要なのかっていうのは、区民の、住民の方の反対の声というのを聞くにつけても、ちょっと立ち止まって考えるべきなんじゃないかという印象は抱きました。少なくとも説明はもっと尽くすべきだと思いました。」
大泉第二中学校分断道路、だけじゃなかったんですね!
大泉第二中学付近の住民側は、有志でバス通りの交通量を調査し、それほど渋滞していないのではないかとし、歩道と車道をきっちり分ける、ガードレールなどの設置、改修で安全性が高まり、渋滞も緩和できるのでは、と主張。反対の署名は3300筆以上集まり、区に提出しました。
対して、区側の主張には具体的な数値の提示はないそうで、浜崎記者は、どうも道路の設置ありきで進んでいるのではないか、という印象が拭えない、と話していましたが、私もそう感じました。
水道管や信号なども含めた、様々なインフラ設備の老朽化は、大きな課題。練馬区側には、区民の声も聞いて、80年前ではなく、改めて、今、必要なまちづくりをしてほしいですね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)