6月から、企業に対して職場での熱中症対策が義務づけられました。
職場の熱中症対策義務づけスタート 緊急説明会も
熱中症の自覚症状がある人や熱中症のおそれがある人を見つけた場合の連絡体制の強化、重症化を防ぐ手順を定める、対策の内容をしっかり周知するといった内容ですが、この義務化を前に、職場の安全衛生をサポートする団体が開いた緊急説明会には、多くの企業が参加しました。中央労働災害防止協会の衛生管理士 搆健一さんのお話です。
中央労働災害防止協会の衛生管理士 搆健一さん
今回、熱中症対策が義務化されるということで、中小企業向けに緊急説明会を行いました。5月7日、14日、合計して280人くらい来られましたね。説明を終えると、質問をしたい人が列をなして、10人以上という状況でした。自分の会社、この作業では法令の対象になるのかどうか、それから、これまで熱中症対策をやってきたけど、これでは足りないのかどうかといったことが多かったです。緊急時のマニュアルって各会社で作っていることが多いんですね。これではダメですか?と言って、わざわざお持ちくださったところもありましたね。熱中症対策というのは、作業も違うし、作業現場もそれぞれですから、各会社が1番いい方法を考えるのが基本だと思います。ただ何もやらないところがある、これではまずいね、というところで法令が入ったので、それぞれ独自の取り組みをするということは変わらないと思います。
(説明会の様子)
企業側からは、義務づけられることを知ってから、実際に義務化されるまであまり時間もなく、何をしたらいいのか、戸惑いの声も多く上がったそう。当初、緊急説明会は1日だけの予定でしたが、想定以上の申し込みがあったため、急遽、説明会の日を1日増やしたということです。
搆さんは「対策内容は職場環境や業務内容によって変わってくるので一概には言えないけれど、まずは今年、それぞれの企業が取り組むことが大事。この熱中症対策の義務化についても、引き続き、各企業に周知していきたい」と話していました。
現在「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を行っています。
https://www.jisha.or.jp/campaign/neccyusho/index.html
熱中症対策に関する動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=mTqJ-t79jb0
建設会社もあの手この手で熱中症対策
中でも熱中症になる人が多いと言われるのが建設業です。今回の義務化の受け止めや、これまで行ってきた熱中症対策について、大阪市の中堅建設業 三和建設株式会社 大阪本店長 川口秀夫さんに伺いました。
三和建設株式会社 大阪本店長 川口秀夫さん
熱中症最前線業界なので、我々はずっと対策してきたこともありまして「ようやく義務化になったか」という感覚ではおります。作業してもらえる職人さんも、寝不足、二日酔いとか、そういう方は入場をお断りすることもあったり、強制的に休んでいただいたり、そういうチェックをするものもありますので、やれること、やってほしいことは明確にあると考えています。服装も、空調服はもちろん、発汗性の高いインナーとか、そういうのは社員には貸与しています。加えて、腕時計タイプの深部体温を測る装置を全社員に配っていて、体温に異常があれば、事前にアラームが鳴るということもやっています。あとは、昼休みにシャンプーしてもらったりとか、いろんな対策をしているのが現状です。
シャンプーは不快感を少しでも和らげて、それが熱中症対策にもつながれば、ということでした。
三和建設では、これまでも対策していたので、今回の義務化でバタバタすることはなかったようですが、「連絡体制の強化」という義務化の内容を受けて、さらにわかりやすく掲示するようになったそうです。

(かき氷を食べる社員のみなさん)
開発した熱中症対策ゼリー 累計販売数180万本
そして現場での熱中症を防ごうと、三和建設では熱中症対策になるゼリー「ゼネコンがつくったしおゼリー」を2020年に自社向けに開発し、要望を受けて2021年から一般販売を始めたところ、これまで累計で180万本の販売と、さまざまな用途で使われているそうです。ゼリーについて、再び三和建設株式会社 大阪本店長 川口秀夫さんのお話です。
三和建設株式会社 大阪本店長 川口秀夫さん
もちろん塩が入っていて、ミネラルなんかを摂取できるようにしています。加えて、ビタミン、アミノ酸も合わせて配合していて、パワーをくれるゼリーです。量は1本10グラムで、ツルッと食べられるサイズになっています。建設の作業所では、朝8時から全体的に朝礼を行うんですけども、朝礼の前に1本ずつ食べてもらうということから朝礼が始まります。その後10時、お昼休憩、3時の休憩、何回かに分けて成分を摂取してもらうことを考えています。毎年リピーターさんもいてくださって、ゴールデンウィーク前から準備いただいています。今年は熱中症対策の義務化も追い風になって、みなさん早い準備に入られている感想ですね。
ゼリーはスティック状になっていて、1つ10グラムなので1口、2口で気軽に食べられます。味は、りんご、ぶどう、レモン、マスカット、ライチの5種類で、およそ100本・税込5400円で、インターネットで販売しています。消防団や、高齢者施設、部活、スポーツ大会、ゴルフ場に行くときなど、様々な現場で使われているそうです。
熱中症対策、各社が業務内容にあった取り組みを続けていくことが大事ですね。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)