毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。

今日は「特養のトイレ気軽に使って」という記事に注目しました。

何かあったとき安心して飛び込める場所へ!

これは、横浜市泉区の社会福祉法人「たちばな会」が、運営する特別養護老人ホームなどの職員用のトイレを地域住民に開放する、という取組みなのですが、どうして、トイレの貸し出しを始めたのか。「たちばな会」の理事長で、
特別養護老人ホーム「天王森の郷」施設長の鈴木啓正さんにお話を伺いました。

社会福祉法人「たちばな会」理事長・特別養護老人ホーム「天王森の郷」施設長 鈴木啓正さん

「私はこういう施設だからこそ、多くの方に中も知ってもらいたい。特別養護老人ホームというと、どっちかというと高齢者のためだけの施設であって、一般の方は何かがない限り来ることはまずないと思うんです。

でも、この災害が多い日本の中で、逆に施設というのは災害の時に特に一番活躍をしていかなくちゃいけない場所だと思っておるので、何かの機会で施設に入っていただくと、施設の中のことも分かります。

安心して何かあった時に飛び込める場所であるべきだと思ってますので、そのためにも、とにかく垣根をいかに低くしていくかということ、普段から、多くの区民の方に安心して使っていただきながら、また困ったときはお互い様に、区民の皆さまからもお力添えをいただけるような関係作りを求めておりますので、それだけに普段の関係作りをしっかりしてくことが非常に重要なことだと思っております。」

地域の人と顔の見える関係に、ということなんですね。鈴木さんは、社会福祉法人というのは地域貢献が大きな義務です。でも何かをやるとなると、お金も人手が足りない。何ならできるのかと考えて、トイレを開放することを思い付きました。

施設前の掲示板に、お手洗いご利用いただけますと張り紙がありました。

特養のトイレ気軽に使って!の画像はこちら >>
<バス通り沿いにある施設の入り口 この看板に張り紙があります>
特養のトイレ気軽に使って!

通学途中の子どもや、バスが減便になり駅から20~30分歩くことになった人などの利用者があるそう。張り紙を見ながら電話をかけてきて「今、借りれますか?」と聞かれたことも。

同時に、東日本大震災や熊本地震の被災地に足を運び、特養のような大型施設が、一時的に避難所として、地域住民が2~3日間しのぐ場所になるのを見てきた鈴木さん。

そういうとき、全く知らない施設だと、入りにくい、頼りにくい場所になってしまう。そのためにも、垣根を低くして一回くらいは入ったことがある場所にしておくことが大事だし、逆に災害時は、施設側も人手が必要なことも考えられるので、普段から関わることで、顔の見える関係を築いておきたい、ということなのです。

福祉施設で、一般企業で、広がる取り組み

トイレを貸すという非常に簡単なことで、いざというときの備えにもなるのはすごいですよね。そして、簡単なことだからこそ、広がっているそうです。再び鈴木さんのお話。

社会福祉法人「たちばな会」理事長・特別養護老人ホーム「天王森の郷」施設長 鈴木啓正さん

「まず福祉施設で広がりまして、それに協賛いただく区内の一般企業さんもどんどん増えてきました。福祉施設と一般企業とが一緒になって、今、横浜市泉区では『泉サポートプロジェクト』というものを作って一緒に行動してるところが現状でございます。「あ!それならウチでもできます!」ということで手を挙げていただく方が非常に多かったですね、そこら辺は助かってます。

私は色んな他区の方からも、どういう風な形で進められたかというその手法を聞きたいというのが来ておるんですけど、やることはもう簡単なことなんで、そんなにかしこまることじゃないんですが、やはり興味を持ってる方いっぱいいらっしゃるので、一考しなくても出来ることですから、ぜひ輪を広げてっていただいて、横浜市内どこ歩いてても、トイレ行きたくなったらどこでも使える、全国がそうなってもらうと私は一番いいと思ってます。」

一般企業にも広がっているんです。今の時代、企業も【地域貢献をしているか】は非常に大事な指針。「ここにあって良かった」と思ってもらえれば、その会社の勲章みたいなものになりませんか?と鈴木さん。

他の区からの問い合わせも多く来ていますし、横浜市の保健福祉局からも連絡が。ついに横浜市も動き始めました。

大賛成!!せっかくいいことだから、もっと宣伝したらいいよ!

広がりつつある、この取り組みについて、泉区の方々にお話を聞いてみました。

▼「そりゃいいと思うわね。年寄りなんか特にじゃない?トイレ近いから(笑)。知らないとこ入るよりはね。」

▼「いいですよ、そういうの、私なんか近いからいっぱいあった方がいいですね、そういうのはね。無いとこはずっとないからね。」

▼「全然知らない、うん、聞いたことない。なんとなく入りにくくない?でも。だって、ずずずっと奥に入って行かなくちゃいけないよ、言える?トイレだけ、みたいな。ちょっと、ちょっと出来ないと思う。そうそうそうそう一回でも入ればちょっと違うと思うけど、お知らせが無いし・・・あ、書いてあるんだ。じゃ今度はお借りします、なんかありましたら。」

▼「施設に勤めてたもので聞いたことはありますけども、いましたよ、やっぱり飛び込んで来て『貸してください!』っていうの。そうですね、やっぱり近くにあるってことはね、うん、良かったんじゃないかなともいますけど。」

▼「誰でもさ、どこでも、困ったときにすぐ使えるとかっつう面ではね、ありがたい取り組みじゃないかなと思うんだけども、みんな早く知って、利用していただける方向に行った方がいいんじゃないかな。いいことやるんだから、みんなに知ってもらうためには、やっぱり宣伝が必要だよ。

やっぱり広めることが大事だね。」

みなさん、この取組みには、助かる!と大賛成。ただ、知らなかったとおっしゃる方が多かったですし、最初に鈴木さんが言ったように、やはり特養と聞くと敷居が高い、関係ない人は入ってはいけない、というイメージもあるようでした。

ちなみに、トイレの貸し出しだけでなく、給水機の冷たいお水や、赤ちゃんのミルクを作るためのお湯の提供。バスを待つ時間の涼み場の提供としても使ってください、といったことも行っていて、最後の方がおっしゃるように、せっかくいいことしてるので、宣伝をもっと大々的にして、ぜひ利用者に知ってもらいたいですね。

困ったときに駆け込める場所、横浜市だけでなく大きく広がってくれると嬉しいですね。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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