きょうは「目の日焼け」について。日焼け対策といえば肌、というイメージですが、実は「目」も紫外線の影響を受けているんです。
「目の日焼け」で白内障リスク大。とくに子どもは注意
最近、この「目の日焼け」が将来の病気につながるという研究を発表した、金沢医科大学の教授、佐々木 洋さんにお話を聞きました。
金沢医科大学・教授 佐々木 洋さん
僕らは西表島で調査したんですけれども、「西表島に20歳まで住んでた人」と、「20歳以降に移住してきた人」で目の病気を見ると、明らかに沖縄で子供の時代を過ごした人の方が、「白内障のリスクでいうと8倍ぐらい高い」。「翼状片(よくじょうへん)」という白目が黒目に入ってくる、《紫外線》でしかならないような病気も「だいたい6倍ぐらい、もともと西表島に住んでいた人の方が、有病率が高い」。
しかも気温に関しては最近のトピックス、僕らが見つけたんだけど、《気温》がものすごい高いところにいると、白内障もすごいなるっていうのはわかったんですよ。37度以上に目の温度が上がっていると、水晶体に熱負荷っていうのがかかって、それが白内障のリスクになってる。だから、外の暑いところにいると、ほんとまずいよ。
<イメージ>「紫外線」と「暑さ」、どちらも目にとって大きなダメージになるそうです。
まず、紫外線。目に紫外線が入りすぎると、中にある「水晶体」(ピントを調節するレンズのような役割)がダメージを受けて、時間が経ってから白く濁ってくる…これが白内障です。
さらに近年わかってきたのが、「暑さ」そのものが目に悪影響を与えるということ。水晶体はタンパク質でできているため、目の温度が37度を超えるような環境では、中のたんぱく質が傷んで、レンズの働きが悪くなってしまう。
しかもこの「紫外線」+「暑さ」のダブルパンチ、子どもの頃にどれだけ浴びたかが将来のリスクを大きく左右することから、佐々木さんは「幼いうちから、目を守る習慣が大切」と強調していました。
少年野球でサングラスって…珍しい?!
そしてこうした背景から、今「子どもの目を守ろう」という動きが、各地で少しずつ広がり始めています。練馬区の小学生で構成される少年野球チーム「練馬アークスJr・ベースボールクラブ」の中桐 悟さんに聞きました。
「練馬アークスJr・ベースボールクラブ」中桐 悟さん
チームとして、サングラスの着用を推奨しています。ず炎天下で活動すると子供の目が真っ赤になってしまう。やっぱり目からの刺激っていうのは、夏場は強いんだろうなっていうのは思ってますね。あまり見かけたことはないですが、普通に子供を外で遊ばせるときに、「帽子をかぶっていきなさい」っていう親は、ほぼ100%なんじゃないかなと思いますが、真夏に子どもが外に遊びに行くって言った時に「サングラスをかけていきなさい」っていう親は、なかなかまだいないと思う。そういう意味でも定着してないんでしょうね。「子供がサングラスをかけて目を守らなければならない」っていう認識はもたれていないと思う。
高校野球では「甲子園球児がサングラスをかけている姿」も見かけるようになってきましたが、少年野球でサングラス…ちょっと意外に感じるかもしれません。
実はこのチーム、ほかにも進んだ取り組みをしていて、練習は日中の炎天下を避けて午後3時以降に開始。さらに、熱中症の暑さ指数が一定を超えた日は活動を中止するなど、子どもの健康管理に細かく気を配っていて、サングラスもその一環のようです。
ただ、中桐さんによると、実際に着用しているのはごく一部、40人中ほんの数名。子どもたち自身も「かっこつけてるみたい」と遠慮してしまうことがあり、大人の側にも抵抗感がまだ根強いという風潮も残っているようです。
北海道の学童野球クラブ「札幌イーストフォース・ジュニア」の代表兼監督・田中勇貴さんにも取材したところ、チームでは子どものサングラス着用を積極的に推奨しているとのことです。「唯一むき出しの臓器である目を守るのは当然のこと」と田中さん。猛暑日が増える北海道で、目を紫外線から守るという発想が、少しずつ根づき始めている様子が伺えました。
制服でサングラスって…アリ?!
他のチーム含め、少年野球でサングラスが当たり前になるには、もう少し時間がかかりそう…と話していましたが、そんななか、こうした「子どもの目を守る」取り組みは、学校現場にも広がりはじめています。眼鏡ブランド「ZOFF」が、ある実証実験をスタートさせています。広報の野澤 千春さんのお話。
「ZOFF」広報・野澤 千春さん
サングラスを「制服」に定着させていきたいなというふうな活動になっています。中学校1年生から高校3年生までを今回の学校では対象に、夏休み期間中、サングラスを使っていただいて、サングラスに慣れていただく。それを踏まえて10月末あたりに、全国生徒分のサングラスを導入いただく。多分、校則の中で、サングラスって「華美なもの」として捉えられていることが多くて、校則的にNGを出している学が、調べた限り結構あったので、ちょっと「格好つけ」のアイテムのイメージもある。
制服にサングラスを「標準装備」させるという、全国でも前例のない取り組みに挑戦しています。協力しているのは、東京・駒込にある中高一貫の女子校「女子聖学院」。まずは、夏休み中にサングラスに慣れてもらって、その後、10月末をめどに、制服とセットでの着用をめざしているということでした(真っ黒のタイプではなく、少し茶色が買っていたり、色が薄くても紫外線をカットするタイプのもの)。
たとえば、日差しの強いオーストラリアの一部の小学校では、サングラスの着用を義務化。これが、日本の学校の通学や部活動で、根付くかどうか。学校や社会の側が意識を変えていけるかどうかも、今後の定着を左右しそうです。
(TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ!」より抜粋)