カーマニアの安東弘樹が、これまた車が大好きな方をお迎えしてお送りする30分。
今週はマツダの「魂動デザイン」の生みの親、マツダ株式会社・エグゼクティブフェロー・ブランドデザイン監修の前田育男さん登場。
日本のカーデザインについてお話を伺いました。
<日本のカーデザインについて>
前回の放送でチュートリアルの徳井さんが「日本のカーデザインにはセクシーさが足りない」とおっしゃっていたのを受けてご出演いただいた前田育男さん。
今、国産メーカーの中では最もセクシーな車を作り続ける(と思われる)マツダのブランドデザイン監修者が、今の国産カーデザインについてどう思っているのでしょうか?
世界と比べると日本がカーデザインをリードしているとは言えない。
残念ながら日本のデザインがリスペクトされているかといえば怪しい。
日本の文化、美意識は世界中から尊敬されている。
しかしなぜかカーデザインに限ると、日本の様式のフレームを持っていないような気がする。
ジャーマンデザイン、北欧のデザインなどは骨格はあるけど、ジャパンデザインには確固たるデザイン骨格が作れていない気がして、そこが弱い気がする。
鋭い指摘です。
そしてコンセプトカーは特筆すべきデザインの車が多く展示されているが、それがプロダクトレベルになると普通のフォルムになっている車も多い点を指摘すると・・・
コンセプトかーはなんの制約もなく、デザイナーが自由に腕が振える。
しかしプロダクトの段階になると色々な制約がかかり、最終形が残念な結果になっているものが多い。
ドイツなどではコンセプトカーに近いモデルが市販されるケースもあるけど、国産メーカーにおいてはそうとは言えない。
それはおそらくデザインのディレクターの意志の強さ、国産メーカーがどれだけデザインに対してヒエラルキーを置いているか、その違いがあると思う。

<マツダのデザイン哲学>
マツダのデザインを牽引する前田育男さんは、今までの国産メーカーのデザイナーとは違う立場にいらっしゃいます。
そんな前田さんのデザインに対する意識を伺うと「デザインに哲学を持つこと」。
明確な哲学を持ち、それを海外にも発信することで、マツダのデザイン改革がスタートしました。
そのマツダのデザイン哲学とは「魂動」。
魂動デザインとはフォルムに命を与えるという意味。
車のデザインで最も大切なのはフォルムと語る前田さんは、そのフォルムに生命感を与えるために光までもをコントロールする必要があると語ります。

過去にマツダは経営難からフォードグループの一員だった時代があります。
その頃、デザインのトップを張っていたのがフォードから出向者。
他社ブランドの傘下に入ることで自由もきかず、そして出向者にマツダ愛があるかといえばそれも微妙。
前田さんをはじめとしたプロパーの方々は相当フラストレーションを抱えていたと思います。
しかし2009年4月にデザインチームのトップとなったのが前田育男さん。
およそ10年ぶりとなるプロパーのトップ誕生です。
そしてそれは10年で失ったマツダのDNAを根底から作り直す作業の始まり。
まさに苦労の連続だったと振り返りますが、そして生まれたのが今のマツダブランドを支える哲学「魂動デザイン」だったそうです。

(『RAGE HERO’s~愛車のこだわり~』より抜粋)