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今日は、リチウムイオン電池を捨てる時に役立つ、世界初の装置を紹介していた記事に注目しました。

埼玉県本庄市にある電池劣化診断業の「電知」という会社と、精密プレス業「エムケー工業」が共同で開発したこの装置。経済産業省が所管する国立研究開発法人NEDO(ネド:新エネルギー・産業技術総合開発機構)の懸賞金活用型プログラムで1位を受賞しました。

いま困ってるリチウムイオン電池の発火を解決!

今回、二つの装置が開発されたのですが、まず一つ目はリチウムイオン電池の発火を安全に消火する装置。株式会社電知の代表取締役で工学博士の向山大吉さんにお話を伺いました。

株式会社「電知」代表取締役 向山大吉さん

NEDOのお題自体は、その電池がリサイクルに至るまでの過程で、安全にリサイクルの現場まで運ぶ仕組みを提案しなさいというものだったんですけど、我々、そこで開発している中で、実は、今、みなさんお困りなのは、燃えそうになっているとか、燃えている電池を、そのまま放置するしかない現状っていうのが一番困るんじゃないかと思ったんですね。

それで、もう燃えそうになってる、燃えてしまっているものを、今までですと、例えば消火器とかで火災を止めようとすると思うんですけど、リチウムイオン電池、実はすごくエネルギーが中にあるので、火を止めにくいんですね。中からガンガン燃えるので、水かけても消えないんですよ。ですので、我々、箱にその物を入れてしまえば延焼というか、そこからの被害を防げるという仕組みを開発しました。

リチウムイオン電池を入れて、延焼を防ぐ箱なんです。

リチウムイオン電池は、発火してしまうと、とにかく消すのが大変な火。消火器でもなかなか消えないし、まして、水をかけてもほぼびくともしません。そこで、向山さんたちは、発火しそうな、もしくはすでに火の出ているリチウムイオン電池を安全に消火する装置を開発しました。その名も「DENPOI(デンポイ)」。

ポイっと捨てるだけ!簡単で安全なDENPOI!!

向山さんと「エムケー工業」の三浦滝雄社長の解説を聞きながら、DENPOIを実際に使わせていただきました。

近堂:これが実物ですね?消火器くらいのサイズですね。(向山さん)はい、50センチくらい。

近堂:で、例えばこれが危ない電池、ちょっと熱いなっていう状態になった時に、どうしましょう?

向山:もう、DENPOIの名の通り、ポイっと入れていただいて、で、フタを閉めていただきまして。で、中で実際に燃え始めますと、熱でフタが開きまして、砂がドンっと落ちるようになってるんですね。これは基本的に耐熱・耐火の箱でして、ここから外に燃えることは無いですし、できるだけ初期に火災を抑え込めると。

三浦:一切の電気系が入ってませんので、どこでも置けるということで、あとは、やっぱり、今、砂を使おうということで、非常に環境にも良くて、やっぱり自然のものを使ってあれば、リスクも少なくなるかな、ということで。

箱に入れるだけ!本当に簡単でした!

DENPOIは、高さ50センチほどの円筒形。

世界初!?リチウムイオン電池を安全に捨てる装置!の画像はこちら >>
こちらが「DENPOI」

てっぺんのフタを開けると、半円で仕切ってあって、片側が電池を入れる投入口。

世界初!?リチウムイオン電池を安全に捨てる装置!
世界初!?リチウムイオン電池を安全に捨てる装置!
上のフタを開けると、投入口があります

下までストンと電池が落ちます。

世界初!?リチウムイオン電池を安全に捨てる装置!
このリチウムイオン電池の上に自動でドサッと砂が落ちて消火します

もう半円の部分に砂が入っていて、下まで落ちたリチウムイオン電池が発熱、発火すると、その熱で、砂を入れた部分の底フタが自動で開いて、砂が落ちて消火する、という仕組み。

向山さんは電池の研究を長らくしていますが、研究室などでも、火が出たら砂で消せと言われてきた。しかし、火が出たところに気軽に砂を撒けるとは限らない。

そこで、専用の箱の開発を思い付きました。

また、三浦社長が言うように、この装置は電気が必要ないので、コンセントのある場所じゃないと置けない、ということもないのは使いやすいですよね。タブレット端末のような、もっと大きなもの用のサイズも考えています。

学校や家電量販店など、置いてあったら便利だな、という場所は結構ありますよね。

リチウムイオン電池のエネルギーを放電させて、安全に捨てる!

続いて、もう一つの装置は何なのか?再び向山さんのお話です。

株式会社「電知」代表取締役 向山大吉さん

リチウムイオン電池をこちらの機械につないでいただいて、そこからエネルギーを抜き出すという放電機という装置なんですね。

放電という作業自体は研究者や技術者なら誰でもできるので賞を取れるような内容じゃないんですけども、我々、充電しか出来ない、例えばこういったモバイルファン(ハンディ扇風機)のような、ここでUSB使ってみなさん充電するじゃないですか。このUSBのポートを使って放電できるようにしたのが、もう一つの受賞のポイントでした。

実は、充電してこれ使えないんだって分かるじゃないですか。だから変な話、エネルギーとしてはパンパンの状態で捨てることも多いそうなんですね。なので、物としては使えなくなったけれども電池としてはパンパンに入ってる状態で捨てられて、実際それが問題になってというパターンのようでして、エネルギーさえ無くなってしまえば、そのまま捨てても、被害を及ぼすようなことは無いんですね。みなさんお困りなのこの状態なので、そうです、製品の状態なので、製品の状態としてエネルギーを簡単に抜ける仕組みという所で、我々がちょっと頑張ってるという状況ですね。

リチウムイオン電池のエネルギーを放電して、安全に捨てられるようにする装置。

モバイルバッテリーのように、USBで充電してスマホにエネルギーを送る、というものは、エネルギーの出口がもともとあるので放電は簡単。しかし、ハンディ扇風機や電子タバコなど、充電する口しかない製品を放電させるのは難しかったんです。

向山さんは100均で売っているスプレー缶に穴を開ける器具のように、自宅で手軽に放電して、安全に捨てる、という風になれば、と話していました。実はこの放電装置、まだ、どのUSBでも上手く放電させるとはいかない状況。なんとか来年中には商品化できるように頑張ります、とのことでした。

一方、DENPOIは年内の商品化に向けて動き出しており反響も大きい。

これらの装置を広めようと賛同してくれた会社などからは、日本中世界中探したけど、こういうのは無いよ!と言われたそうで、リチウムイオン電池を使った製品・商品は、これからももっと増えるでしょうから、安全に捨てられるように向山さんには頑張ってほしいですね!!

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)

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