最近市街地や住宅地に熊が出たというニュース、多いですよね。
猟友会とは
捕獲に貢献したとして、よく「猟友会」という言葉を耳にすると思いますが、どんな団体で、どんな課題があるのか、10万人以上の会員が所属する狩猟者の全国組織 大日本猟友会の副会長 尾上貞夫さんに伺いました。
大日本猟友会 副会長 尾上貞夫さん
活動は、主にやるのは狩猟。
そこに社会貢献として、熊害捕獲活動などをやっています。とにかく里に出てきた熊は、可哀想ですが捕獲して殺処分するというのがこれからは基本になると思います。人的被害がかなり多いので。(今猟友会の皆さんとしての大変さ、ご苦労とかってどんな点がありますか?)結局、高齢化。ここ20年ほど前からそういう傾向が出てきてるな。若者はいろんな趣味が今できるからそっちに走るのと、銃を所持するのにかなり厳しい許可、銃刀法から始まって受けていかないといけないので、なかなかハードルが高い趣味になってくる。お金もかかる。後継者を作るにあたってでも、今の先輩方がいる間に若い人を育てないと、これもなかなか難しい。
猟友会は、趣味として狩猟を楽しむ人たちの集まりで、仕事を退職した後、そもそも60代以上で入会する人が多いそう。狩猟には、狩猟免許の取得と、狩猟者登録をする必要があって、猟銃を持つには、厳しい審査をパスする必要があります。
猟友会頼みではない仕組みづくりを
猟友会の現状や、熊の狩猟の課題について、1990年代から熊の研究を行っている東京農業大学 森林総合科学科 山﨑晃司教授のお話です。
東京農業大学 森林総合科学科 山﨑晃司教授
これまでの緊急的な熊害捕獲、そういうのは猟友会の会員が、半ばボランティアという形で行ってきてたんですよね。猟友会の会員の方たちの平均年齢は、もう60とか70になっていますので5年先、10年先も頼れるかと言うとできないです。
さらに本来は、アマチュアの趣味で狩猟している人たちに、そういう重い責任を負わせるということ自体に無理があったわけですから、専門の技術を持った業者とか団体、そういう従事者を育成することを含めて考えていかないと、うまく機能しないと思います。猟友会自体もこれから役割はきっとあって、趣味の狩猟の中で熊をはじめとした動物の数を抑制してくれるはずなんですよね。でもそれはあくまでも、趣味でやっている狩猟の中で実現できる話で、そこにあまり大きな期待をするのではなくて、一方で特に人の生活圏に近いところでは、プロの集団がその仕事をかわりに担っていくという形が理想だと思います。
これまで地域の人たちを守るということで、地元の狩猟者、ハンターが狩猟をやってくれていたけれど今はそれだけでは済まないほど出動の機会が増えています。とてもじゃないけれど猟友会頼みの仕組みでは、維持できないそう。
捕獲従事者を確保するために一番いい方法として、行政の内部に行政の職員として、いわゆるガバメントハンター、公的なハンターを抱える取り組みを行っている自治体もいくつかあります。
それができないときには、都道府県に登録した専門の技術を持った業者に、担ってもらったり、人材派遣という形で野生動物のモニタリングができる人を、市や町の臨時職員として配置したりするやり方もあるそう。行政の事情に合わせて採用していくことで、かなり対応できるはずだと山﨑さんは話していました。
9月に法改正 市町村の判断で猟銃使用が可能に
熊の出没が相次ぐ中、9月には、市町村の判断で市街地で猟銃を使用できる改正鳥獣保護管理法が施行されます。改正のポイントや、課題について、再び東京農業大学 山﨑晃司教授に伺いました。
東京農業大学 森林総合科学科 山﨑晃司教授
これまでは市街地、あるいは人間の生活している空間に熊が出てきた時に、銃で撃つのが一番早い解決法なんですよね。でもやっぱり、球どこに飛んでいくか分からないし、跳ね返ったりもしますよね。
その発砲に関しては、非常に慎重だったわけです。これまでだと警察官が、ハンターに発砲許可を出さないと撃てなかったんですよね。でもそれだと、なかなか許可が出ないという現実があって、そこで環境省管轄の鳥獣保護管理法という法律の中で、市街地での発砲要件を緩和したということですね。ただ、今回法改正がされて、誰でもそういう市街地発砲ができるかというと、かなり技術を持った捕獲従事者でないと、判断と技術が伴わないので、返って危険になると思います。
その危険な部分をどう担保するかが課題になるということでした。山﨑さんは「ヒグマもツキノワグマも今、数が増えている中で、人と野生動物の問題は一層深刻化すると思う。少ないマンパワーで、いかにその動物たちを管理するか。猟友会頼みではない専門の技術を持った人たちに活躍してもらえるように、活躍の場を作り、その育成のために援助するのが大事だ」と話していました。
熊への対策は命にもかかわる喫緊の課題。国全体で力を入れて取り組んでほしいです。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)