今日、高校野球、夏の甲子園が開幕します。

審判不足 三重では試合日程変更も

ただ、その高校球児を支える審判が、いま全国的に不足しているということなんです。三重県では、審判不足で、県大会の日程が変更されたこともあったようです。

三重県高等学校野球連盟理事長 栗谷佳宏さんに伺いました。

三重県高等学校野球連盟理事長 栗谷佳宏さん

2年前の秋の県大会なんですけど、雨天順延になってしまって、平日に試合日になってしまいました。働いている人は、最初から平日に試合が入っていると、そこに年休を当ててもらって上手いこといくんですが、急きょ平日になってしまうと、急きょ年休はなかなか難しいこともあって、本当に審判がそのとき平日に4、5人しかいなくて、4会場でやるのに全く足りないっていう状況があったので「この日に今度順延するのでお願いします」ということで、何とか順延して審判が足りたということになりました。若い子が毎年2人くらいは入ってきてくれるんですけど、やってみると現実と違うということで、辞めていく率が高い、高齢化も進んでいるということで、今、審判不足で困っているという現状です。


まず前提として、アマチュア野球の審判員はボランティア。普段は別の仕事をしていて、休みの日に審判をしています。そのため、急な試合日程の変更があると、なかなか対応できないということなんです。

今年の夏の三重県大会も、雨で順延が重なった場合、32人の審判が必要なところ5人しかいない恐れがあったそうです。幸い雨天順延が少なかったので何とか運営できたということでした。

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夏の甲子園開幕!しかし全国で審判不足が課題

また、審判が高齢化して、なり手が減っているという指摘もありました。若い世代の審判も毎年入ってくるんですが、そもそも審判の仕事がしんどいことに加え、土日の試合が多く、休みの日に遊びたくても遊べないため、辞めていく率が高いそう。三重県では今、60人ほどの審判がいるそうですが、40代以上が8割、若い人が増えないので、平均年齢はどんどん高くなっています。

審判 職場や家族の理解が不可欠

審判不足や高齢化の要因の1つである、普段の仕事と審判の仕事の両立について、現役の審判員に実情を聴きました。東京六大学野球、東京都の高校野球のほか、春・夏の甲子園でも20年連続で審判をしている日本高等学校野球連盟 審判規則委員 鈴木隆行さんのお話です。

日本高等学校野球連盟 審判規則委員 鈴木隆行さん

これは報酬を得ているものではないので、職場の理解、家族の理解が本当に重要になってきます。正直、大変なことばかりですね。若干の手当、交通費はいただいているんですけれども、もちろん生計を立てられるものではないので、仕事は別にしっかり持ちつつ、後輩のために私どもが恩返しの気持ちでお手伝いをする、後輩たちを支えるという気持ちでやっていますから、金銭的なものはいただいていない形になっています。職場の理解が大きくて、例えば試合がある日にあらかじめ予定を立てておくと、そこに打ち合わせは入れないでおくとか、調整を取りながら「行ってらっしゃい」と送り出してくれますし、温かい、そういう職場でやらせていただいていて、ありがたいなという気持ちでいっぱいです。

夏の甲子園開幕!しかし全国で審判不足が課題

仕事との両立は大変ながら「選手と同じフィールドで汗を流せるのが魅力。後輩のために」と、ご自身も慶應義塾大学で大学まで野球をやっていた鈴木さんは原動力を話していました。

鈴木さんは医薬品の卸売業を営む「アルフレッサ」という会社で働いていますが、かなり協力的で、例えば朝仕事に行って、日中に試合があれば「ちょっと審判行ってきます」と試合に行くようなこともあるそうです。

ただ、甲子園に行くとなると10日から数週間、朝から晩までずっと球場にいますし、地方大会でも準備や、試合時間などを考えると、拘束時間の長さも、なり手不足の1つの要因でもあるようです。

審判も暑さ対策にあの手この手

そして、今は避けられない、審判の大変さがもう1つあります。再び、日本高等学校野球連盟 審判規則委員 鈴木隆行さんのお話です。

日本高等学校野球連盟 審判規則委員 鈴木隆行さん

(暑いですよね?)球審が一番しんどいです。

皮膚呼吸ができないです、防具つけているので。ずっと着脱ができないので、熱がこもっちゃうというのは、本当に大きな要対策項目ですね。手のひら冷却っていうのがあって、手のひらには深部体温を下げるための、血流を交感させてくれる血管があるらしくて、それを掴んで。あとはいろんなサプリメントをとったり、水分補給を気をつけたり、前の日は呑まないとか、朝ご飯をちゃんと食べるとか、いろんなことをやりながら。でも大事なのは、今問題点をしっかりあらうことですよね。なぜ今、足りないのかとか、問題点を認識して、審判部門だけじゃなくて事務局部門、競技部門、審判部門のこの三者でしっかりと協議を重ねて、方向性を定めていく。お互いに手を取り合っていく、これが一番大事かなと思います。

夏の甲子園開幕!しかし全国で審判不足が課題

私も今年実況した高校野球の試合で、選手ではなく球審が足がつって、試合が中断したこともあって、審判の方も暑さ対策は課題だなと改めて実感しました。

冒頭お話を伺った三重県では、今年初めて県大会を朝と夕方の2部制にしたら、熱中症の件数や、足をつる選手がかなり減り、審判からも間に休めると好評だったそうです。

このほかの課題としては、SNSの普及によって審判の判定が一気に全国に拡散されることも増えて、審判が敬遠される一因になっているという話もありました。鈴木さんは、まず動画の撮影、拡散されること自体がいいのか悪いのか、ルール作り、整理が必要だと思うと話していました。

試合をするには審判の方は不可欠です。

甲子園で球児はもちろん、審判にも注目してみてください。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:西村志野)

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