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美術ライターの浦島茂世さんに「この夏注目の美術展」を教えていただきました。

関東地方の美術展のトレンドは「渋め」
今年は万博の影響で、大坂・京都・奈良を中心に大型の展覧会(国宝展など)が行われていて、関東地方は渋めの展覧会が行われていることが多いです。言い換えると「アイデアで勝負」的な、きらりと光る展覧会が行われている、という感じでしょうか。「知らない作家やジャンルの展覧会でも、けっこうおもしろかったな」みたいな、意外な出会いがある夏って感じです。

スライドショーも楽しんでほしい、東京ステーションギャラリー「藤田嗣治 絵画と写真」

乳白色の肌の女性像で1920年代に世界的な大ブームを巻き起こした画家・藤田嗣治の「絵画と写真」に関する展覧会。

藤田は絵もうまいが、写真もかなり上手。そんな彼の写真と絵画を見ていくもの。藤田は写真の撮影も上手いが「どう撮られるか」もすごく上手。フランス時代はいかにも「東洋の芸術家」という感じで写真に写っていたが、第二次世界大戦でフランスから帰国したら坊主頭・作務衣と、特に戦前と戦後で彼のイメージが大きく変わった点も興味深いポイント。

展示室で、藤田が撮ったポジフィルムを淡々とみせていく「スライドショー」がある。いまどきの若者はスライドを見たことがないかと思うので、機械だけでも見に行ってほしい。

また、戦時中の藤田が描いた絵は、現在、東京国立近代美術館で開催中の「記録をひらく 記憶をつむぐ」で見られます。あわせて見るのがいいかも。




「東京ステーションギャラリー」
東京駅直結、大手町駅から徒歩約5分、二重橋前駅から徒歩約8分でアクセス可能。
入館料は、一般1500円、大学生・高校生 1300円、中学生以下 無料。
ご紹介した展示は8月31日までの予定。
開館時間等が異なることがあるので、ぜひ美術館のHPをチェックしてみてください。

なんだか心がざわざわするけど、でも言葉にできない・・・そんな作品を楽しむ。サントリー美術館「まだまだざわつく日本美術」

「ざわざわ」「ぎゅうぎゅう」「おりおり」「ラブラブ」といったオノマトペをキーワードに日本美術作品を集めた展覧会。一昨年開催された第1弾が好評だったことから、「まだまだ」と銘打った第2弾が登場。

展示冒頭の「袋法師絵巻」は、法師が女性の家を訪れる場面で、布団の中にもう一つ顔があるという「ざわざわ」する作品。「展覧会に入るとこれを見せつけられて、『なんじゃこりゃ』というところからざわつく」(浦島)

なんだか心がざわざわするけど、でも言葉にできない、、みたいな作品がずらりと並ぶ展覧会。
「図録の説明が面白いので、一緒に読んでほしいです」と浦島さん。

「サントリー美術館」
東京ミッドタウン ガレリア3階。最寄駅は、都営地下鉄大江戸線六本木駅・東京メトロ日比谷線六本木駅。


開館時間は、午前10時から午後6時。金曜日は夜8時まで開館。
休館日は火曜日。入館料は、当日券が一般 1700円 大学生 1200円 高校生は1000円。
ご紹介した展示は8月 24日までの予定です。
※開館時間等が異なることがあるので、ぜひ美術館のHPをチェックしてみてください。

サイバーパンクと千葉の意外な関係性に迫る現代美術 「未来/追想 千葉市美術館と現代美術」

今年開館30周年をむかえた千葉市美術館は、現代美術のすてきな作品をずっと収集してきた美術館。そして総計120の現代美術に関する展覧会を開催してきた美術館。

ということで、千葉市美術館のコレクションを大披露する展覧会。草間彌生などのビッグネームはもちろん、西島大介さんのゲームなどおもしろそうなものがたくさん。

また、特筆すべきは、展示の配置。「美術館のありとあらゆるところで展示されているので、彷徨って歩くのも楽しい」と浦島さん。

展示室だけでなく、広間や階段の踊り場の横など、美術館の様々な空間を活用した展示が見どころ。

最大の発見は「千葉市はサイバーパンク発祥の地」という意外な事実。ウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』(1984年)の第1章の舞台が「千葉シティ」だったのです。西島大介さんはこれにインスパイアされ、ドット絵によるサイバーパンクゲームを制作。美術館1階の「ゲームコーナー」では、8月31日までテクテク歩きながらゲームができる体験型展示も楽しめます。


「千葉市美術館」
JR千葉駅東口から徒歩約15分、京成千葉中央駅より徒歩約10分です。
開館時間は、午前10時から午後6時
休館日は、月曜日(祝日の場合は翌平日)
入館料は、一般1,500円、大学生1,000円、小・中学生、高校生無料
※開館時間等が異なることがあるので、ぜひ美術館のHPをチェックしてみてください。

以上おすすめの3つの展覧会はいずれも「意外な発見」があるもの。キュレーターのアイデアが光る個性的な展示で、新たな興味を発見してみてはいかがでしょうか。

今回紹介した展示ですが、展示の変更や開館時間、入館料がが変更になることがありますので美術館のHPをぜひチェックしてください。

浦島茂世さん
神奈川県鎌倉市出身。
大学では美学美術史を専攻し、1920年代の西洋美術・工芸について学ばれます。


卒業後は、国内外で年間150以上の美術館やギャラリーへ足を運び、常日頃、美術の最前線を取材。
著書に『東京のちいさな美術館めぐり』『猫と藤田嗣治』があるほか、博物館学芸員免許持っています。

(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)

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