この時期、夏休み期間ということでスポーツ観戦を楽しむ方もいらっしゃると思いますが、今日はサッカーのスタジアムの話。最近、サッカースタジアムの建設が各地で進んでいて、しかも多機能型に進化を遂げているんです!

サッカースタジアムの変化

今、Jリーグのスタジアムにどんな変化が起こっているのか。京都サンガF.C.を運営する株式会社京都パープルサンガ理事 経営企画室室長の小川雅洋さんに伺いました。

株式会社京都パープルサンガ 理事 経営企画室室長 小川雅洋さん

やはり(Jリーグは)年間20試合程度しか公式戦がないので、あとの日をどのように収益を生んでいくかという面で、VIPルームであったり諸室なんかは会議に使うとか、早めに行って楽しくグループで食事をとって、部屋で。そこから席で見るとか…。付加価値を付けて、少し高めの席でもゆっくりできるのであれば時間とか環境を買うということが結構進んできたので、段々と取り入れられていると思いますけど、今から15年前とか20年前にはそういった概念はあまりなかったと思います。

サッカーの試合がない時や、試合前にも利用してもらおうということですね!スタジアムの建設や維持には大きな費用がかかるので、試合がない日もスタジアムを「眠れる資産」にしないための工夫という事です。

多機能型って具体的にどんなもの?

そういうわけでサッカー観戦以外の利用法や、スタジアムの多機能化が広がっているんです。今お話があった京都サンガF.C.は、京都府亀岡市にあるサンガスタジアムが本拠地で、ここがまさに多機能型スタジアムなんです。具体的にはどうなっているのか、再び小川さんのお話です。

京都パープルサンガ 小川雅洋さん

いろんな施設が入ってまして、保育園であったり、クライミング施設であったり、それからeスポーツの関係であったり、そういったものがバックスタンドの建物側にありまして、複合施設としてなかなか考えられているところはあるかもわかりませんね。今回近くで花火があるんで、VIPの部屋とかスカイボックスが16室あるんで、そういった部屋でゆっくりと食事を食べて、見るのがサッカーじゃなくて花火というような。それから小学生の子どもたちが必ず一回、3年生、4年生の頃にスタジアムに行って、芝生の上を裸足で走って、観客席でお弁当を食べて、亀岡に対する思い出をちゃんと持ってもらって、そこから他の町へ巣立っていくけど、私たちが育った町にはこんな素晴らしいスタジアムがあるんだということを感じてもらうようなイベントも、亀岡市さんとサンガで協力しながらやったりしてます。

地域とスタジアムを日常的に繋げているんですね!それをねらった多機能型のサッカースタジアムは今、増えているんです。

例えばV・ファーレン長崎の「長崎スタジアムシティ」は、施設内にビール醸造所やホテルが併設されていて、ホテルの部屋からは試合の様子が見られるという、ファンにはたまらない工夫も。さらに、スタジアムの上空にワイヤーロープが張られていて、そこを滑車でスーッと滑り降りる「ジップライン」というアトラクションまであるんです!かつてこんなエンターテインメントなスタジアムがあったでしょうか!

ほかには、川崎フロンターレの「Uvanceとどろきスタジアム」は、2029年にアリーナや公園と一体化した「川崎とどろきパーク」となってオープンする予定です。

サッカーの試合がない日でも遊びに行きたくなるようなスタジアムですよね。多機能型のスタジアムというのは、サッカーのクラブ側だけではなく、地域にとっても活性化につながるということで期待されているんです。

サッカーに興味がない方もこうしてスタジアムに訪れることで、地元クラブに愛着をもつきっかけになるかもしれません。勝ち負けで左右されない、どんな時も地域と共にあるクラブというのは、地域と一緒に進化し続けているんですね!

スタジアムへ続く「アクティブシティ」へ

また最近は、スポーツや運動を盛んにすることで「地域住民を健康にしよう」という、住んでいるだけで健康になる「アクティブシティ」という町づくりが注目されているそうで、その中心となる役割がスタジアムに期待されているんです。国内外の「アクティブシティ」の取り組みに詳しい、早稲田大学名誉教授 原田宗彦さんにお話を伺いました。

早稲田大学名誉教授 原田宗彦さん

インナーとアウター、両方から見ていくのがアクティブシティなんですね。インナーは町の中に住んでいる人が幸せになる。アウターは(交流人口ということで)外から人が来ないとインナーが元気にならないですよね。スポーツ観戦に来たり、あるいは移住定住で人が動くから市街地が活性化するんですよね。ヨーロッパの都市って今、都市のアクティブ化(が進んでいる)。それは住んでいるだけで健康になる町とか、思わず歩きたくなる町づくりの中核にスタジアムがなっているというのはすごいなというのは思いましたね。

具体的には、スタジアム周辺に遊歩道を作って、その周りにフィットネス拠点を整備したり、日常的に体を動かしたくなる環境を作る。

そうすることで、試合のある日以外も頻繁に外から人が入ってきて、地域と関わる機会が増えれば、町は活性化して、さらには地域の人たちの健康にも良い影響をもたらす...。そんな役割も期待されて、今のスタジアムは進化しているんです。

スタジアムの多機能化の背景には「アクティブシティ」という新しい視点があるようです。スポーツ施設には、いま、新しい価値が求められています。


(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)

編集部おすすめ