今日は8月20日と8月も残りわずかとなりました。そうなると夏休みの宿題に追われる、お子さんもチラホラ出てきているのでは…?
夏休みの宿題廃止!その理由は?
実は今の学校現場では、夏休みの宿題を廃止している学校もあるんです!3年前に夏休みの宿題を廃止した、新宿区立 西新宿小学校の長井満敏 校長に、廃止した理由を伺いました。
新宿区立 西新宿小学校 長井満敏 校長
経緯としては、そもそも夏休みということの意義というか。
夏休み期間中は家庭の中で過ごすということが第一義的な目的だったと思いますから、学校で宿題をして縛るみたいなものっていうのは本来的ではないんじゃないかなということで、なくそうということですね。保護者から復活させてくれっていう声はほぼゼロですね。以前は、図工の絵画のコンクールみたいなのが、募集が来るんですけど、宿題としてやりなさい、みたいにやっていた時もありましたけれども、(廃止後は)やりたい人はやっていいよ、そういうふうなやり方でやると宿題に出していた時よりも作品が多く集まったっていうのはありましたね。たぶん一番変わったのは子どもたちのプレッシャーっていうか、やんなきゃいけないっていうのがない分、のびのび過ごせているっていうことが一番大きな変化だったと思いますけどね。
のびのび過ごせる分、心に余裕もできて、自ら宿題をやってくる子が出てきているようですね!
西新宿小学校は、生徒の主体性を育むため、先生の負担を軽減するため、などの理由で宿題以外にも、通知表やテストの廃止、授業の見直しなどを行っています。宿題の廃止については、廃止後、大きなマイナス面は無かったようです!
ただ、西新宿小学校では何でもかんでも廃止というわけではなく、理解度チェックをしっかり行いながら生徒に寄りそった教育改革を!という事で、廃止したモノも、話し合いを重ねて適切なカタチへ、臨機応変な対応をとっているそうです。
長井校長のお話で面白かったのは「先生たちのガマンの話」。宿題が無くなれば先生たちの負担も減るはずなのに、なぜか無意識に宿題を出してしまう、もとに戻そうとする動きがみられるとのこと。これは、宿題はあった方がいい、教える事への使命感などの先生たちの概念があるから。子供たちの主体性を伸ばすためには、この考えをぐっと我慢して、いかに見守ることができるか。先生たちも教育という概念に向き合う難しい立場なのです...!
親御さんの意見は?
ただ気になるのは、今まで当たり前にあった夏休みの宿題が無くなる事を、子供をもつ親御さんはどう思うのか?街で聞いてきました。
ある程度あった方がいい。午前中ぐらいは勉強してほしい。
今の子はゲームしかやらないと思うので、(宿題は)あった方がいいかな。
何もないと、こっちで考えて与えなきゃいけないのでだいぶ厳しい。
お家でやってください、お母さんお父さんお願いします、の時、かなり大変だった。(宿題がないと)親子のトラブルが多々発生する。全部任せられるのはちょっと…。
やりたいことをやってほしいというところはあるので、宿題がないメリットもあると思う。
夏休みの宿題と一言で言うのは簡単ですが…宿題は子供だけのものではなく、親御さんの戦いという側面もあるようなんです。話を聞いていると、今の時期になっても宿題をやっていない、お子さんに宿題をやらせるのは大変!という嘆きの意見も...(笑)また、進学したときに、再び宿題がある習慣に戻れなさそう、他の生徒と学力の差がつきそう、などの意見もありました。
なかには宿題の廃止に好意的な印象を持つ親御さんもいましたが、こうした教育改革は、自治体や国単位で改革を行い理解を深めることが重要です。その一例となるのが渋谷区の、探究「シブヤ未来科」という取り組み。こちらは、渋谷区内のすべての公立小中学校で、教科の授業時間を1割減らし、探究の時間(総合学習)にあてるという大胆な取組。生徒の主体性を高めること、そして「探求」=教科で学んだことを活用して、深い理解を得てほしいという目的があるようです。
教育改革の背景、子供たちに求められるもの
このように学校単位や自治体単位で取り組む教育改革は各地で行われているようなんですが、その背景には、教育そのものを見直す必要性が出てきいるという事で、詳しいお話を教育ジャーナリストの中曽根陽子さんに伺いました。

1つは、教員の働き方改革。もう1つはですね、子どもたちの不登校の問題ですよね。不登校の数が非常に増えているというところでいくと、子どもたちも悲鳴を上げているというか。今までの考え方とか、常識というものが当てはまらなくなってきているというところも大きいかなというふうに思いますよね。要は一方通行に教科書の内容を教わって覚えるというようなことではなくてですね、今特にまたAIとか出てきているわけですから、そこをうまく自分で過去の知識ではなくて、それをいかに活用していくのかとかですね、そこをベースにして自ら何かを作り出していくとかですね、そういったことが必要なわけですよね。そこに教育でも主眼に置くというような流れにはなってきているということですね。
これまでの教育スタイルが今の子供たちに合わなくなってきている面もあるようで、不登校の問題につながる部分もあるのかもしれません。
今後は、決められた範囲で行動する「自主性」ではなく、自ら考え行動する「主体性」を伸ばす教育スタイルを皆で考えていく必要があると中曽根さんは話していました。宿題の有無をきっかけに、「本当に必要な学び」を社会全体で考える時期にきています。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)