2023年はアフリカのテクノロジーエコシステムにとって苦難の年となった。同地域から投資家が姿を消し、残った投資家の動きも鈍化。
ステージ、分野、国を問わず等しく困難を経験する中、ナイジェリアはエクイティ・ファンディングでの資金調達額上位2位、投資件数は111件で調達額首位の南アフリカ83件を抜いて最多を記録。さらに、同分野ではヘルステックが投資額2億1200万ドルで上位4番目となっている。これを裏付けるかのように、ナイジェリアのヘルステック企業Helium Healthが好調だ。
2016年の創業以来、成長を続けるナイジェリア企業Helium Health
昨年6月、同社はシリーズBラウンドで3000万ドルの資金を調達したと発表。このラウンドはアクサIMが主導した。既存投資家としてGlobal Ventures、テンセント、大原薬品、LCY Group、WTI and AAICが名を連ねたほか、Capria Ventures、Angaza Capital、Anne Wojcicki氏(23&Me創業者)、Flatworld Partnersが新規で参加した。
Helium Healthの経営陣は同社サイトではイラストで描かれている。下部は昨年の資金調達に参加した投資企業のロゴ。Helium Health公式サイトより引用
Helium Healthは、調達した資金を利用して自社のフィンテック製品「HeliumCredit」の範囲を拡大する方針とのこと。エクイティ・ファンディングの分野別では、フィンテックは投資額8億5200万ドルと、2位Eコマースおよび3位クリーンテックの約3億ドルに大きく差をつけた注目の分野だ。先駆的アプローチでアフリカの医療提供システムを変革
Helium Healthは、ナイジェリアのラゴスに拠点を置くスタートアップ。デジタル化サービスと金融ソリューション、データによってアフリカのヘルスケア分野を変革し続けてきた。
デジタル化医療サービス分野では、日常業務を効率化する医療業務OSである「HeliumOS」、および医師の診察予約プラットフォーム「HeliumDoc」を提供。医師と患者間のシームレスな対話を実現している。

Helium Health公式サイトより引用
金融分野では上記のとおり「HeliumCredit」に注力。この商品によって医療提供者が重要な医療用品の購入、機器のアップグレード、新規拠点拡張に必要となる資金にアクセスでき、患者に対するケアの品質も向上する。迅速かつ柔軟な融資を旨とし、各医療施設のニーズや予算に合わせて返済計画をカスタマイズするという。一方の「HeliumWallet」は最先端支払い処理プラットフォームで、医療提供者が複数ソースからの支払いを簡単に処理・管理できるようにするものだ。データの分野では、提携先である世界各国の主要医療機関および政府が戦略を実行できるようサポートし、方針策定や意思決定に役立つ情報を提供、実りの多い結果を実現している。これまでに1000以上の医療施設および1万人の医療従事者と連携し、100万人を超える患者にサービスを提供してきた。
実体験を活かしアフリカ各地で異なる多様なニーズに応える

Helium Healthの創業者たち。左からDimeji Sofowora氏、Tito Ovia氏、Goke Olubusi氏。Helium Health公式サイトより引用
現在10ヵ国に150人の従業員を抱えるまでに成長を遂げたHelium Health。資本が大きく不足するアフリカの医療セクター。年間660億ドルの財政赤字によりインフラ整備が整わず、医療従事者も不足してしまう。アフリカは医療従事者と患者の比率が世界で最も低い地域の一つで、人口1000人当たりの医療従事者はわずか1.55人。このリソース不足とデジタル化および自動化の欠如が相まって、医療ミスや長い待ち時間につながるという悪循環になっている。
アフリカの医療施設において、デジタル化が済んでいる施設の割合はいまだ10%未満。使命を遂行するためのHelium Healthの取り組みはこれからも続くことだろう。
引用:Helium Healthcare
(文:Techable編集部)