「ルキシロン」である
ポリと言ったら「○○○○○」。
あなたはそこにどんなブランドの名前を入れるだろうか。
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世界で最もテニスが上手い人たち、プロの場合もポリ人気は絶大である。
ATP、WTAのトップ100では100%の選手がポリを単張り、もしくはハイブリッド張りで使用しているという調査結果もある。その彼らが選んだのは「ルキシロン(LUXILON)」だ。各トップ100の内、ATPでは約6割、WTAでは約50%が「ルキシロン」のポリを使用しているのだから、その人気は圧倒的だ(2021年6月のデータ)。契約の問題もあり、実名は出せないものの、選手によっては他ブランドと使用契約を交わしながらも、自身で購入して張っているケースもあるのだという。

なぜ「ルキシロン」が、それほど支持を得ているのか?
一つ言えるのは、ルキシロンの製造技術の高さにある。一口にポリといっても、そこに様々な素材を組み合わせることによって、多種良多様なポリを作り出しているのだが、ルキシロンの素材合成技術は、業界随一と言われる。他社には真似のできないクオリティーのポリを作ることができるわけだ。プロは勝たなければならない。
そのルキシロンが誕生したのは、1959年のこと。当初は、電線やワイヤーを作っていたメーカーだった。その後、80年代に医療施術用の縫糸に進出。質の高い糸に対して高い信頼を得ると、その技術を利用して1984年に初めてのテニス用ポリストリング「オーキット」を発売する。その後も、新たな素材との融合、新たな製法の開発を弛まず進めていくと1994年に「アルパワー(ALU POWER)」が誕生。さらに2000年には「4G(フォージー)」シリーズ、「エレメント(ELEMENT)」シリーズと新たな世代のポリを発表している。
ルキシロンの歴史にとって、非常に重要なのがグスタボ・クエルテン(ブラジル)の存在である。社長と旧知の仲だったことから1996年末に契約に至ったが、当時の彼は世界ランク88位という選手。ネットが発達した現在とは異なり、ほぼ無名と言ってもいい存在だ。
当時、ラケットの面は拡大化していき、よりパワフルなボールを打つ時代が到来していた。ところが、ストリングが急激な進化を遂げるわけもなく、どの選手もその調整に手間取っていた。ところが、クエルテンだけは常識では考えられないスピードとスピンが効いた「回り込み逆クロスのフォアハンド」を放てていた。アウトになると思った打球がコートに落ちる。プロたちは“あのポリだからできるんだ”という皮肉も込めて、そのショットを「ルキシロン・ショット」と名付けた。アンドレ・アガシ(アメリカ)に至っては、ポリがうまくフィットしなかったこともあり、「ATPはルキシロンの使用を禁止にすべきだよ」と冗談を言っていたという。

そのようにして始まった“ルキシロン伝説”。中でも「アルパワー」、「アルパワーラフ」、「4G」「4Gソフト」、「エレメント」は、あまたあるルキシロンのポリの中でも特に人気の5モデルである。使ったことがあるという人も多いはずだ。
一般的に、ラケットとストリングは50:50の割合でパフォーマンスが決まるという。先ほども書いたとおり、ツアープロが、ルキシロンのポリを選んでいる理由は、ラケット×ルキシロンの掛け合わせが最もパフォーマンスを発揮できるから、最も勝てる可能性が高いからである。
--{おすすめポリ(1)は「アルパワー」「アルパワーラフ」}--
フェデラーも選んだパワーとスピン
おすすめポリ(1)は「アルパワー」「アルパワーラフ」
まずご紹介したいのが「アルパワー」。ルキシロンを象徴するポリである。
1994年に誕生後、あまたのプロの心をつかみ、数多くのグランドスラム・タイトルも手にしてきた (憶測となるが、自費で購入しているプロも含めると近年では最も優勝しているはず)。
その特徴は、パワー、スピン、特筆すべき柔らかなフィーリングにある。グランドスラム20冠と歴代1位タイの記録を持つ生ける伝説、ロジャー・フェデラー(スイス)も、そのパフォーマンスに魅了されたプレーヤーだ。

「アルパワーラフ」をクロスで使用するロジャー・フェデラー(スイス)
「ルキシロンは、プレーに大きなインパクトを与えている。これだけ強打できて、これだけコントロールできるのは、20年前、ルキシロンが革命を起こしてくれたから。より鋭いアングルショットが打てるようになったのも、軌道を高くすることができたのも、これだけトップスピンをかけられるようになったのも、その時からだ。私は、ルキシロン以外は使えないよ。ツアーでもみんなが使っている。私は、縦に『ウイルソン・ナチュラル』を、横に『アルパワーラフ』を26キロ(約57ポンド)くらいで張っているんだ。もしルキシロンを使わなかったら、独りだけ競争力が落ちてしまうと思うよ」とフェデラーは語っている。
その言葉どおり、冒頭で各トップ100の内、ATPでは約6割、WTAでは約半分が「ルキシロン」のポリを使用中と書いたが、その内、約6割が「アルパワー」シリーズを使用しているという調査結果もある。

「アルパワー」シリーズは、パワーを発揮できるアルミ・ファイバーと耐久性の高いポリ素材が組み合わされているものだ。素材の「ポリ・エーテル・エーテル」は素材としては非常に高価だが、疲労にも熱にも強いという特徴があるもの。同素材を組み合わせたポリは、実は他社でも発売となっている。ところが人気という点ではアルパワーが圧倒的勝利という状況だ。なぜなのか? ルキシロンが開発した製法「ビッグバンガー・テクノロジー」があることが何より大きい。ポリと異素材を高品質で融合させる独自技術により、ストリングのバラつきがほぼゼロであるため、より高いパフォーマンスを発揮することができているのだ。
フェデラーが語るとおり、スピード、パワー、スピンにおいて高い性能を誇るだけだが、魅力的なのが、独特のフィーリングである。ポリというと、カンカンした打球感など硬い印象があるが、アルパワーは違う。モッチリとしていて快感級なのだ(スイートエリアで捕らえたケース)。こればかりは打ってみないとわからないものだ。
ウイルソンでは“パワーとスピード、加えてボールをつぶした際の包み込むフィーリングを求めるプレーヤーに最適”と紹介している。


錦織圭が認めた「マイルドさ」が最大の売り
おすすめポリ(3)は「エレメント」
「エレメント」は、ルキシロンの第4世代モデルに当たる。そのテーマは「ソフトフィーリング」。何より錦織圭が2018年シーズンより、横糸に使用していることで有名である。
その錦織は、「4G(ソフト)も良かったのですが、エレメントの方が、フィーリングが好みというか打球感がマイルドになって、伸びが良いように感じます。衝撃も少ないように感じました。あと変なもたつき感が無くて、キレも良い感じで、気に入っています」とその感想を語っている。

「エレメント」をクロスで使用する錦織圭 Photo by Takeo Tanuma
秘密はその構造にある。一般的に、ストリングは「モノ・フィラメント(単一の芯)」か「マルチ・フィラメント(複数の芯)」のどちらかに分類され、ポリストリングスではその多くがモノ・フィラメントである。
ところが、この「エレメント」の構造は、「モノ・マルチフィラメント」と呼ばれる複合型。モノ構造でありながら、ストリングの内部に複数の芯(=PEEK)がある造りでパワーアップを実現。さらに周囲に独自のエレメント・コーティングを施すことで、テンション維持性能を向上させている。つまり、ソフトフィーリングという最大の特徴を持ちながら、パワー、テンション維持性能も高めたポリというわけだ。錦織によるインプレッションも、その3点について語られていることがわかる。
興味深いのは元々若い世代、ジュニア層でも使えるものを目指して作られたものということ。だから、多くの人にとって打ちやすいことは当然。ところが、錦織圭のようなトッププロも使えるということが証明された。基本的にすべてのレベルにとって扱いやすいポリだと言える。ポリ入門者に特にいいはずだ。

ルキシロンおすすめポリ5モデルを
どのように選ぶべきか!?
ユーザーは、どのように選ぶべきか? ルキシロンの開発を担当するセアリー・ベイルティアンス氏(プロジェクト・イノベーション・マネージャー)が、この3つの代表的モデルを説明してくれている。
「まず『アルパワー』は名前のとおり、パワーが特徴で、スピンもよくかかります。さまざまなショットを駆使し、多彩なテニスをする選手に使ってほしいストリングですね。
続いて『4G』です。ポリの第1世代では耐久性をフォーカスしていました。それが、第2世代でパワー&スピンを高め、第3世代では柔軟性を高めた。そして生まれた第4世代が『4G』、これはテンション維持性能を高めたものです。なおかつ、コントロール性能も上げることができました。攻撃的に打っていくタイプや、コントロール性を求める人にこそ使ってほしいストリングですね。
最後の『エレメント』ですが当初は、ジュニア層でも使えるポリストリングというテーマでした。だからこそ、フィーリングにこだわって作ったのです。ところが、錦織選手が試合で使ってくれたことによって、トップ選手でも、十分に使える性能であるということが証明できたわけです」
パワーが最大の特徴の「アルパワー」、「アルパワーラフ」がいいか? それともテンション維持性能で勝る「4G」、「4Gソフト」か。はたまたルキシロンで最も柔らかい「エレメント」か。何を求めるかで5つの中から使ってみたいポリを選んでみてほしい。

ストリング交換は早めに!
「ルキシロン」のおすすめ5大ポリを
ぜひ試してみよう!!
さて、ここであなたにお聞きしたい。今、あなたが使用しているラケットにストリングは、いつごろ張ったものだろうか?
一般的にナイロン・ストリングは4、5ヵ月、ポリ・ストリングは2、3ヵ月が張り替えの目安と言われるが、より早く交換できるなら、それがベストである。特に、暖かい季節と寒い季節だと、飛びも変わってくるので、ストリングのテンションも変える必要がある。ぜひ、いつものショップで張り替えをしてみてほしい。
そして、その際には、「ルキシロン」のおすすめ5大ポリを張ってみるのはいかがだろうか。ストリングを変えれば、プレーも変わる。あなたのテニスがより良くなるチャンスである。
取材協力:ウイルソン