2007年……「ひたすら安定性」を希求開始。
上級競技者が求めるコンバットブーツへ!
テニスシューズに関する記事を書き始めてから40年……、数々のテニスシューズを見て、履いて、感じてきたが、アシックスに対しては特別な思いがある。素晴らしいシューズを作るスピリットを持ち、70年前、ただのズック製運動靴からテニス専用シューズを生み出したのが、かつての『オニツカタイガー』だった。
▶テニスクラシックオンラインストア(公式通販ショップ)のアシックス「GEL-RESOLUTION X」はこちら
1980年代には、クレーコート専用シューズの名品【アドバンテージLE】を生み出し、その後、【GEL】搭載でアスレティックシューズに衝撃緩和システムという機能カテゴリーを確立した。その当時、アシックスの友人と「靴作りは世界一だけど、売るのは世界一ヘタだよなぁ~」と言いながら酒を飲んでいた。
性能と品質では間違いなく「世界一」だったが、あの「アシックスストライプ」が「いかにも競技系で、マジすぎ」と揶揄されていたのに、いまやあのストライプを目にしない日はない。
今日、アシックスが世界的ブランドと認められるムーブメントは、世界から始まった。1980~1990年代、1990~2010年代に大流行を果たした2つのブランドが、急激に勢いを失うなか、トッププロたちは新たに優秀なシューズを求め始め、注目を集めたのが……アシックス。
彼らが使い始めたことで、世界のトッププロが欲しがっている「機能」とは何か? という情報が日本の企画チームに集まってくる。とくに「サマンサ・ストーサー」という選手は、来日するたびにアシックスとミーティングを重ね、要望や、新作モデルの評価などを提供し、綿密な情報収集が積み重ねられていく様子を、筆者は毎年、その打ち合わせに同席し、観察させてもらっていた。
アシックスというブランドは、「メーカー」である前に「研究施設」。集まった情報を解析し、要望性能を叶えるために、企画立案・性能シミュレーション・試作・テスト・解析研究、そしてまた試作……と、開発のための年月が、あっという間に過ぎ去っていく。
こうして誕生したのが、アシックステニスを世界舞台に押し上げた名シリーズ【ゲルレゾリューション】である。トッププロたちは、その「安定性」の優秀さに目を見張った。選手の誰かが履いているのを見つけると「ちょっと履かせてもらえない?」となり、そこから選手間に噂が広まって、無契約・自己購入で履く選手が増えていった。
加速増加したベースラインプレイ世代が
【レゾリューション】の価値を磨いた
初代モデルから18年も続く【ゲルレゾリューション】のコンセプトは「徹底した安定性」。そのためには、シューズは「硬く」、「重く」なる宿命を抱える。バトルブーツだからしかたがない……と思っていたし、軽量機動モデル【ソリューションスピード】という存在によって、「安定性」と「機動性」を特化した「2枚看板」として確立させていた。

とくに【ゲルレゾリューション】を初代から見つめてきた筆者を驚かせたのは、2019年【ゲルレゾリューション8】の登場だった。プロの過激な踏み込みでもブレない、ズレない、止まる……しかも快適性が劇的に向上した。正直言って、それまでとは「別物」の【ゲルレゾリューション8】は、揺るぎなき安定性を保ちながら「快適性」をも手に入れていた。

すでにトッププロたちの主な戦闘エリアは「ベースライン」に集中し、2023年【ゲルレゾリューション9】はサイドへのサポート性を強烈に高めていた。見た目の印象は「重そう」だったが、この【9】は、想像よりもはるかに軽量だった。
そして2025年、最新の【ゲルレゾリューション】は【X】となり、堅牢なバトルブーツのイメージをさらに強める。前モデルよりも全体重量はやや増したが、履き口の内足側を高めて足首周りの状態を脳に伝達し、「安定への意識」を増幅。外側へは「ダイナウォール(DYNAWALL)」で「流さない壁」を作る。
もはや他のシューズが、これを超える安定性を実現することはできないだろう。

外に逃げようとする足を「引き戻す」……?
「レゾの魔力」を生み出した、研鑽と才能
【ゲルレゾリューション8】が登場した際に驚かされたのは「ダイナラップ(DYNAWRAP)」という新システム。シューレースの下から2~3孔めにベルトが設置され、足が外側へ流される動きが発生すると、それを内側へ引き戻すアクティブスタビリティシステム(筆者造語)の搭載だった。それが今年の【ゲルレゾリューションX】では、「ダイナレーシング(DYNALACING)」へと進化した。アシックスから公式には説明されていないが、よく見ると、ベルトが「下から2~4孔め」と、カバーエリアを拡大している。筆者は「これぞ注目すべき進化」と見ている。
これまで小指球部(小指の付け根あたり)の、やや上を局所的にサポートしていたのが、中足部全体をサポートするような感覚に変化している。じつはこの変化に感覚的に気付いたのは、多くの【ゲルレゾリューション】ファンで、「【X】は【8】【9】よりもウィズが広がっている」というSNSでの投稿が多くあった。
これにより「前足部がユルくなった」などとのカキコミも見られるが、筆者は「小指あたりの圧迫感が減り、ラクになった」と考える。「1サイズダウンで購入するのがいいかも」との意見もあるので、前足部のタイト感を好むプレイヤーは、まずテニスショップヘ行ってみよう。
【ゲルレゾリューション】ファンは、実際に足を入れて確認すべきと思う。その際には、自分で納得するだけではなく、ショップスタッフのアドバイスも積極的に取り入れるのがいい。

アシックス GEL-RESOLUTION X<ゲルレゾリューション テン>
●素材:<アッパー>合成樹脂・人工皮革(合成皮革)・合成繊維 <アウター>ゴム底 <インナーソール>合成樹脂(Ortholite)
●サイズ:25.0~29.0cm、30.0cm
●幅/ラスト:スタンダード
●カラー:Greyish Purple / Nova Orange
●品番:1041A481.500
●価格:19,800円(税込)
【毎日セール開催中!】テニスクラシックオンラインストア(公式通販ショップ)はこちら
文=松尾高司
1960年 生まれ。『月刊テニスジャーナル』で 26年間、主にテニス道具の記事を担当。試打したラケット2000本以上、試し履きしたシューズ数百足。「厚ラケ」「黄金スペック」の命名者でもある。テニスアイテムを評価し記事などを書く、おそらく世界で唯一のテニス道具専門のライター&プランナー。