トップ画像は、東北本線村崎野(むらさきの)駅。花巻駅の一つ東京寄りです。
植栽を避けながら無理矢理に駅舎の正面を撮影しました。
村崎野駅は、1919年(大正8年)村崎野信号場として開業。その31年後の1950年(昭和25年)駅に昇格しました。駅舎は駅に昇格した際に建てられたものです。
東北本線は御存知の様に盛岡から奥羽山脈の東側を仙台まで南下します。その東側には太平洋との間に早池峰山(1917m)などの山々が連なります。
東北本線と太平洋岸を結ぶのは、盛岡駅~宮古駅間の山田線、花巻駅~釜石駅間の釜石線、そして一ノ関駅から気仙沼駅までの大船渡線です。
村崎野駅は、その山の間を進む区間、位置的には遠野駅の西側になります。1986年(昭和61年)貨物取扱廃止。同時に村崎野駅長も廃止され北上駅の管理下で駅員配置は継続されました。国鉄分割民営化でJR東日本に継承された後、2013年(平成25年)業務委託駅になります。
1950年(昭和25年)に建てられた駅舎は、良くも悪くも合理的で装飾の無いモダン建築風です。
意外に戦後のこの時期に建てられた木造駅舎というのは珍しい気がします。もう少し時間が経つと、その頃大量に作られたコンクリートの集合住宅に似た四角い駅舎が多く登場します。
鉄道が近代の最先端インフラだった時代に建てられた木造駅舎のどこか誇らしげな風情とは異なる、無表情で無機質な「合理的な道具」という佇まいの駅舎群です。
それらと比べると村崎野駅には切妻屋根があり、人間的な呼吸が感じられる気がします。
妻壁の処理などに1950年に建てられたという「モダンさ」が表れてもいます。そういう意味では面白い駅舎だと思います。
個人的には、モダニズムの終焉後に巻き起こった、ポスト・モダニズムの建築も嫌いではありませんが、村崎野駅の様な「デザイン評価」などを全く顧慮していない、言い換えれば「何の衒い(てらい)も感じられない率直さ」も貴重だと感じます。
【木造駅舎カタログ】の出発点は、老朽化で建て替えられそうな古い木造駅舎の画像を記録していくことです。しかし、紫波中央駅や日詰駅、そしてこの村崎野駅の様な駅舎も撮っておきたいと改めて思いました。
※鉄道の撮影は鉄道会社、鉄道利用者、関係者などのご厚意で撮らせていただいています。撮影は何よりも安全が最優先。
(写真・文章/住田至朗)



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