※2022年6月撮影
トップ画像は、船橋市指定史跡『葛羅の井』。
船橋市教育委員会の案内板。
内容を写します。
「旧栗原本郷の葛羅(かずら)の井は、葛飾明神の御手洗(みたらし=手水・ちょうず)といわれ、明神の旧社地東下の古作道の路傍にあります。現在はコンクリートで固められた直径180cmほどの円い井戸で、昔はこの水脈が竜宮界まで通じているといわれてました。またいかなる日照りにも水が涸れることはなく、瘧疾(瘧おこり。主にマラリアの一種。)を患う者がこの井の水を飲めば、治るともいわれました。
葛羅の井の前には、石碑があります。この石碑は文化9(1812)年、蜀山人大田南畝が本郷村の世話人惣四郎に頼まれて「葛羅之井」を揮毫し、銘文を撰したものです。文化10(1813)年に刊行された鈴木金堤の『勝鹿図志手繰舟』に、早くもこの石碑が紹介されました。また天保7(1836)年刊行の『江戸名所図会』では「葛飾明神社」の中で、挿絵と共に「葛の井」として紹介されています。
その後人々の記憶から遠ざかっていましたが、戦後永井荷風が随筆『葛飾土産』でこの石碑を紹介したことから、再び世に知られる存在となりました。
船橋市教育委員会」
榎木の大木の背後に石碑があります。
永井荷風の『葛飾土産』の一部を引用します。長くなるので関係する箇所だけです。
「小高い岡の麓に、葛飾という京成電車の静な停車場がある。榎の大木が立っていて、その下に一片の石碑と、周囲に石を畳んだ一坪ほどの池がある。わたくしは古木と古碑との様子の何やらいわれがあるらしく、尋常の一里塚ではないような気がしたので、立寄って見ると、正面に「葛羅之井。」側面に「文化九年壬申三月建、本郷村中世話人惣四郎」と勒されていた。そしてその文字は楷書であるが何となく大田南畝の筆らしく思われたので、傍の溜り水にハンケチを濡し、石の面に選挙候補者の広告や何かの幾枚となく貼ってあるのを洗い落して見ると、案の定、蜀山人の筆で葛羅の井戸のいわれがしるされていた。下総の国栗原郡勝鹿というところに瓊杵神という神が祀られ、その土地から甘酒のような泉が湧き、いかなる旱天にも涸れたことがないというのである」※岩波文庫『荷風随筆集(上)』
永井荷風が蜀山人大田南畝の楷書と見抜いた石碑の表。
こちらが銘文。
「下総勝鹿 郷隷栗原 / 下総の勝鹿(葛飾) 郷は栗原に隷す
神祀瓊杵 地出禮泉 / 神は瓊杵(にぎ)を祀る 地は禮泉を出す
豊姫所聲 神龍之淵 / 豊姫の聲する所 神龍の淵
大旱不凋 湛乎維圓 / 大旱にも涸れず 湛乎としてこれ円なり
名曰葛羅 不絶綿々 / 名つけて葛羅と曰う 絶えざること綿綿たり」
※船橋市教育委員会の看板からの引用です
これが葛羅の井。金魚が泳いでいました。
葛羅の井から駅に戻る道に「葛井山萬善寺」の石碑を発見。
永井荷風(の自由な生き方や江戸趣味)が大好きなのでついつい深入りしてしまいました。駅に戻ります。
(写真・文/住田至朗)
※駅構内などは京成電鉄さんの許可をいただいて撮影しています。
※鉄道撮影は鉄道会社と利用者・関係者等のご厚意で撮らせていただいているものです。ありがとうございます。



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