京都市と小田急電鉄は20日、「持続可能な地域コミュニティの推進に係る連携協定」を締結しました。
関東大手私鉄である小田急電鉄が遠く離れた京都市と連携協定を結ぶのは意外なことのように思えますが、実はこの協定、鉄道事業に関するものではありません。カギを握るのは、小田急電鉄の開発したSNSサービスでした。
自治会・町内会向けSNS「いちのいち」
昨今の自治体・町内会は、次に挙げるような地域課題を抱えています。
・自治会や町内会運営の担い手不足
・回覧板などアナログな情報発信
・若年層を中心とした地域とのつながりの希薄化
・高齢者の社会的孤立
・災害時の情報伝達
これらを解決するため、小田急電鉄の社内事業アイデア公募制度第1号案件として企画されたのが、自治会・町内会向けSNSサービス「いちのいち」です。
「いちのいち」は電子回覧板、電子掲示板、災害時の安否確認などの機能を有しています。対面でのやり取りや電話等で行っていた連絡をSNSに集約することで、迅速な情報伝達や作業負担の軽減に貢献するほか、サークル活動による地域のつながり作りや災害時のタイムリーな情報確認に役立ちます。
簡単な例を挙げると「イベントは雨天中止になりました」といった連絡もSNS上に投稿するだけで良いので、電話などでの連絡が不要になります。自治会や町内会運営の手間を省けば若年層の参加のハードルも下がり、空いた時間を地域社会に役立つことに使ってもらうことも可能になります。
京都市の門川市長は「町内会が地域の自治活動を行う『地域力』やそれを支える人々の『人間力』『文化力』、これが京都の最大の宝」としつつも、ライフスタイルの変化や核家族化、単身世帯の増加などで状況が厳しくなりつつあるといいます。そのような状況において「技術によって地域の情報が共有できる、課題意識が共有できる。そんな試みも生まれてきております。そのなかで小田急さんから素晴らしい仕組みを提案をいただきました」と提携の理由を語りました。
小田急の星野社長は、地域価値創造や街の魅力を高める取り組みだけでなく、従業員からアイデアを募集して新規事業やサービスを立ち上げるといったグループとしての方針を紹介。「いちのいちは必ずや持続可能な京都の町の実現に寄与できるのではないかと考えております」と語りました。
「いちのいち」は小田急沿線の神奈川県秦野市・川崎市、東京都町田市・世田谷区をはじめとした約400の自治体・町内会で利用実績のあるサービスですが(※2023年2月末時点)、沿線から遠く離れた京都市での導入が決まったことで、関西進出を果たしたかたちになります。両者は現在、京都市の西京区樫原学区でモデル事業を進めており、ゆくゆくは京都市全域へ展開を図ります。



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