昭和の名車として今もファンの多い、〝青ガエル〟こと東急5000系電車(初代)。
東急5000系は東急車輛製造(現・総合車両製作所)が1954年、東横線のスピードアップを目指して設計した通勤用電車。それまでの電車は基本的に直線状の箱形だったが、東急車輛に結集した元航空技術者らは曲線状の断面を持つ張殻(ちょうかく)構造の車両を考案した。
正面からは卵形にも見える5000系、一般には青ガエルのニックネームで親しまれ、鉄道の専門家からは「翼のない飛行機」とも評された。軽量の電車は最高時速105キロで走行。渋谷~桜木町最短34分という、大幅な時間短縮を実現。1954~1959年に105両製造された。
張殻車両はその後、小田急3000形(初代。SE車)などに引き継がれ、現在も高速鉄道の標準技術として継承される。
東急での引退後は長野電鉄(長電)、福島交通、岳南鉄道、熊本電気鉄道、上田交通、松本電気鉄道(現アルピコ交通)に譲渡され、地方鉄道の近代化に貢献した。
日本機械学会が今回、機械遺産に認定したのはデハ5016。1956年にデビュー後、東急から長電に転じて引退後に復原、総合車両製作所横浜事業所(横浜市金沢区)で保存される(非公開)。
機械の日は、日本の機械の原点ともいえる織機で御衣を織る「棚機(七夕=たなばた)」の伝説にちなんで、日本機械学会が2006年に制定した。8月7日は旧暦の七夕。
日本機械学会の機械遺産、鉄道分野では東海道新幹線0系電車、230形223号タンク式SL(いずれも京都鉄道博物館)、自動改札機(オムロン)、鉄道跳開橋・末広橋りょう(JR貨物、三重県四日市市)などが認定される。
記事:上里夏生