宮崎県は、2025年9月18日に、福岡市と宮崎市を新幹線で結ぶ構想「東九州新幹線」の整備効果についての調査結果を公表しました。
大分を経由する「日豊本線ルート」と、熊本県新八代から宮崎市に至る「新八代ルート」の2案を比較したところ、いずれのルートでも、所要時間の大幅短縮に加え巨額の経済波及効果が見込まれることが明らかになりました。
東九州新幹線は基本計画路線

東九州新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づき、1973年に基本計画として決定された路線の一つ。福岡市を起点に大分市、宮崎市を経て鹿児島市に至る構想です。九州の東側を縦断し、都市間のアクセス向上や観光回遊性の強化を目的としています。2025年時点で整備計画への格上げには至っておらず、具体的な整備区間や駅の位置、開業時期は未定で、調査・検討段階にとどまっています。
一方、西側を縦断する九州新幹線は、整備新幹線の一つとして2004年に新八代―鹿児島中央間が部分開業。2011年に博多―鹿児島中央間が全線開業し、九州南北を結ぶ高速鉄道ネットワークが完成しました。2022年には西九州新幹線(武雄温泉―長崎間)が開業し、九州の新幹線整備は着実に進展してきました。
こうした西側ルートの整備が進んだ一方で、東九州新幹線は依然として基本計画の段階にとどまっており、経済効果や所要時間短縮の試算を通じて、整備への機運を高める取り組みが続けられています。
福岡市北九州市~宮崎各都市への所要時間比較
昨年発表された調査を振り返ってみましょう。各ルートにおける都市間距離を整備新幹線の平均表定速度210キロで試算したところ、現状のJR特急利用に比べ大幅な時間短縮が見込まれる結果となりました。
宮崎市―福岡市間は現行231分に対し、日豊本線ルートで98分(133分短縮)、鹿児島中央先行ルートで132分(99分短縮)、新八代ルートで84分(147分短縮)となります。
一方、宮崎市―北九州市間は現行299分が、それぞれ79分(220分短縮)、148分(151分短縮)、103分(196分短縮)となります。都城市―福岡市間は現行196分が109分(87分短縮)、121分(75分短縮)、66分(130分短縮)となります。延岡市―福岡市間は現行254分が75分(179分短縮)、195分(59分短縮)、147分(107分短縮)とされ、それぞれ大幅な所要時間の削減効果が示されています。

開業後の観光需要と経済効果
今回の報告書によりますと、建設工事や関連投資による整備段階での経済波及効果は、日豊本線ルートで2兆4441億円、新八代ルートで1兆5723億円に上ると試算されました。直接効果の約1.9倍にあたる規模で、雇用や関連産業への需要拡大が期待されるとしています。

開業後の観光面でも効果が見込まれるとしています。日豊本線ルートでは、年間で宿泊客40万人、日帰り客89万人が増え、合計128万人の来訪者増加を予測。これにより年間234億円の経済効果が見込まれるとしています。新八代ルートでも宿泊客27万人、日帰り客58万人が増加し、年間159億円の効果とされました。宿泊、飲食、運輸など幅広い分野で雇用や税収の押し上げが期待されています。

東九州新幹線は現在、基本計画段階にとどまっていますが、今回の宮崎県による調査は、整備が実現すれば地域経済に大きな恩恵をもたらすことを明確に示しました。特に日豊本線ルートでは、最大で2兆4,441億円の経済波及効果が試算されています。所要時間も大幅に短縮され、福岡や北九州からの観光客増加も期待されています。今回の試算が、国や関係機関との協議を動かし、東九州新幹線の整備に向けた大きな一歩となることが期待されています。
(画像:宮崎県、PIXTA)
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