日比谷エリアで進む都心最大級の開発の一環として、NTTグループが、創業の地である日比谷に本社機能を移転することを発表しました。移転先となるのは、2025年12月に着工した「NTT日比谷タワー」(地上48階、高さ約230m)。
日比谷公園とつながる街区での大規模開発が始動
都心にある日比谷公園に隣接した「内幸町一丁目街区」は、北・中・南の3地区に別れて、約6.5ha、総延床面積約110万㎡という大規模な再開発が開始されています。
その中の「中地区」においての新しい拠点となる「NTT日比谷タワー」が、2025年12月1日に着工をむかえました。このNTT日比谷タワーは、NTT都市開発と東京電力パワーグリッドが事業主となり開発され、地上48階、地下6階、高さは約230メートルの建物です。延床面積は約36万1000平方メートルにのぼる大規模な複合施設となり、完成は2031年10月末を予定しています。
建物の上階44~48階には、100室規模のスモールラグジュアリーホテルが、帝国ホテルとNTT都市開発により運営される予定です。
11~42階に入る賃貸オフィスのほか、産業支援施設が7~10階に、その他にもホール、宴会場が入ります。3階~5階には飲食や物販店舗などの商業施設が予定されています。
デザイン面では、この街区全体のマスターデザイン・プレイスメイキングを担当し、ロンドンを拠点とするPLPアーキテクチャーを起用。かつてこの場所にあった鹿鳴館や旧NTT日比谷ビルの歴史を受け継ぎながら、日比谷通りの景観と調和する外観を目指すとしています。
産業支援施設(7~10階)は、共創・オープンイノベーション拠点となります。NTTが提唱する「IOWN (Innovative Optical and Wireless Network・革新的な光と無線によるネットワーク)」など最先端技術を利用して世界中のさまざまな企業や人々とイノベーションを生み出したり、新しいビジネスやサービスを実証・発信するような場所になります。
南地区と連携して整備する基壇部上広場は、明治時代から続く歴史的な高さ約31m(百尺)に位置し、日比谷公園や皇居外苑を一望できる憩い・賑わいの大規模緑地空間が広がります。
低層部の屋内外には、多様なパブリックスペースを整備。屋内貫通通路である「(仮称)Cross
Gate」は道路上空公園直結の大規模なパサージュ・アトリウム空間(幅18m×⾧さ70m×高さ14.5m)で、壁面・天井一体型の大型LEDビジョン(約1,700インチ相当)とIOWNにより、新たな空間体験を提供します。
9階のホール(約400席)は文化発信の拠点となり、クラシックなどのコンサートの他にも講演会などのビジネスシーンでの利用も想定しています。座席からは日比谷公園が一望できる作りになるようです。
計画では、都営三田線内幸町駅に地下直結するほか、新橋駅や霞ケ関駅とは地下通路でつながるとしています。
さらに、東京メトロ日比谷線・千代田線、都営三田線が乗り入れる日比谷駅、東京メトロ有楽町線有楽町駅にも地下直結し、駅から建物まで雨にぬれにくい動線を整える方針です。
隣接する日比谷公園とこの開発街区の間は道路上空公園でつながれ、日比谷・内幸町エリアの回遊性を高めます。周囲に開かれて、公園と一体となった緑と水の豊かな空間と、街づくりを目ざしています。
NTTグループは、日比谷を「グループ誕生の地」と位置付け、超高速・低遅延な次世代通信基盤となるIOWNを軸にしたスマートシティ、「光の街」づくりを進めるとしています。本社移転は、オフィスの移動にとどまらず、都心の再開発と技術の実装を同時に進める取り組みとして、今後が注目されます。
周辺を含む大規模開発「TOKYO CROSS PARK構想」帝国ホテル建替えも
このNTT本社移転とタワー建設は、(仮称)内幸町一丁目街区開発プロジェクト「TOKYO CROSS PARK構想」の一環として、近隣区域一体で進められています。
構想は北・中・南の3地区からなり、都心最大級の延床面積約110万平方メートルという規模で、日比谷公園と街をつなぐ道路上空公園などを整備して回遊性を高めるとしています。
地区ごとの整備も段階的に進みます。
南地区では、第一生命や中央日本ン土地建設などが、オフィスやウェルネス促進施設、ホテル、商業施設を整備します。南地区のサウスタワーなどの整備は、2025年4月に既に着工し、2029年3月の竣工を予定しています。
北地区では、帝国ホテルと三井不動産が、帝国ホテル新本館の建設と、オフィスやサービスアパート、賃貸住宅、商業施設が入るノースタワーを計画しています。建て替え期間中もホテルの営業を継続しながら進める方針で、帝国ホテルは、本館を2030年度まで営業し、2031年度から建て替え期間に入る予定としています。
街区の東側・JRの線路側には、大規模な広場が整備される計画となっています。
有楽町・日比谷駅周辺では導線の整備も
日比谷・有楽町周辺では、駅前や駅動線の整備も相次いでいます。有楽町駅前では、再開発に向けた跡地を活用し、2026年度後半に広場空間を開設する計画が示され、イベントなどを通じて街のにぎわいをつくる取り組みが進められています。また、地下動線の快適性向上を掲げ、有楽町駅と日比谷駅の接続を意識した「駅まち空間」の形成も検討されています。
かつての『鹿鳴館』があった歴史ある場所に、最先端技術を搭載した未来のタワーが誕生します。
(図:NTT都市開発、三井不動産、PIXTA)
鉄道チャンネル編集部
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