杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。


8月10日(日)の放送テーマは、「イランカラプテ! アイヌの世界」。ゲストに法務省 人権擁護局の田谷真嗣(たや・まさつぐ)さんをお迎えして、アイヌの文化や歴史、偏見や差別をなくすための政府の取り組みについて伺いました。

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(左から)杉浦太陽、田谷真嗣さん、村上佳菜子


◆身近な言葉が実は「アイヌ語」!?

アイヌは日本列島北部、特に北海道にルーツを持つ先住民族です。“アイヌ語”という独自の言語で話し、長い歴史のなかでさまざまな固有の文化を築き、今に受け継いできました。

現在の北海道の地名のうち、約8割がアイヌ語が語源となっています。例えば札幌は、アイヌ語の「サッ・ポロ・ペッ(乾いた・大きな・川)」が由来とされ、知床は「シリ・エトク(陸の突端)」という意味を持つとされています。ほかにも長万部(おしゃまんべ)や興部(おこっぺ)など、一度聞いたら忘れられない響きの地名もアイヌ語がルーツとされています。

また「シシャモ」「トナカイ」「ラッコ」「昆布」「オットセイ」といった身近な言葉も、アイヌ語からきているという説があります。知らず知らずのうちに、現代の日本語のなかにもアイヌ語が根づいていることが分かります。

◆“アイヌ語”が失われつつある理由

近年、日常会話レベルでアイヌ語を話せる人は非常に少なくなっており、2009年にはユネスコが「消滅の危機にある言語」に分類するほど深刻な状況に陥っています。その背景には15世紀後半、アイヌ民族が暮らす地域に本州から多くの人がやってきてアイヌ民族からさまざまなものを搾取し、過酷な生活を強いた歴史があります。

田谷さんは「アイヌ民族は明治時代になってからも差別的な扱いを受け、生業である鮭漁の禁止や鹿猟の制約など、伝統的な文化が禁止されていました。
それだけでなく、日本語の習得が優先されるなど、いわゆる同化政策が取られました。そのため、アイヌ語は日常生活から急速に姿を消していったのです」と解説します。

こうした問題は日本だけでなく、世界中の先住民族に共通しています。そこで国連は、差別的な扱いや言語・文化の消失といった問題に対して、「先住民の疎外と極端な貧困、深刻な人権侵害に終止符を打つこと」を目的とし、先住民の権利を推進・保護する姿勢を明確に示すために、1994年8月9日を「世界の先住民の国際デー」に制定しました。

国際的な動きを受けて、日本でも近年はアイヌ民族の権利保護に向けた政策が進められており、2019年には「アイヌ施策推進法」を施行。アイヌ民族が先住民族であることを法律上でも認め、アイヌを理由とした差別の禁止に関する基本理念などが定められました。

◆動画や体験プログラムで“アイヌ”を学ぶ

政府は、アイヌの人々が民族の誇りを持って生活でき、その誇りが尊重される社会の実現を図るための施策を推進しています。その1つが、法務省が制作した動画「アコㇿ青春」です。

この作品は、アイヌの文化やアイヌの人々が抱える問題について多くの方に知ってもらうために制作され、アイヌにルーツを持ちながらも、アイヌとは無縁に生きてきた青年が、文化の継承者として生きることを決意。アイヌ文化を学ぶ小さな旅へと出発する30分ほどのドキュメンタリー動画です。ちなみに、アコㇿはアイヌ語で“わたしたちの”という意味を持ちます。

作中では「自然界すべてに魂=カムイが宿るとされる精神文化」「アイヌの人々の歴史と人権」「アイヌ料理」「子どもたちへのアイヌ語教室」など、多彩なテーマが盛り込まれています。


続いて田谷さんは、2020年に開業した北海道白老町にある施設「ウポポイ」を紹介。ウポポイはアイヌ語で「大勢でうたうこと」を意味し、アイヌ文化の復興と創造の拠点として建てられました。

施設には国立アイヌ民族博物館や体験交流ホール、体験学習館、工房など、複数のエリアでアイヌの暮らしや伝統芸能を体験することができます。「たとえば、ムックリという竹でできた口琴(こうきん)と呼ばれる楽器の演奏体験ができます」と田谷さん。ほかにも、木彫りや刺繍など、アイヌ工芸の体験プログラムも用意されています。

さらに、敷地内のフードコートやカフェでは、アイヌ文化に根ざした食材を使った伝統料理や創作メニューを味わうことができます。「食」という日常的な体験を通じて、アイヌの人々の暮らしや自然との関わりを学ぶことができるのも大きな魅力です。

◆偏見や差別をなくすために…

アイヌは多彩で魅力的な尊い文化がありますが、その一方で、その文化や歴史を誤解したり、そもそも理解しないまま、アイヌであることやアイヌ固有の言語、伝統的文化を揶揄するような偏見・差別が今も存在しています。田谷さんは「こういったことが起こるのは、アイヌについて“知らないこと”“知ろうとしないこと”が要因の1つではないかと思います。まずは『アコㇿ青春』の動画を観たり、ウポポイへ行ったりして、歴史や文化をきちんと知ることから始めていただきたいと思います」と力を込めます。

法務省ではアイヌの人々をテーマにした人権教室を実施しています。全国の学校からの要望に応じて、人権擁護委員や法務局の職員が出向き、アイヌの歴史や文化を紹介しながら、差別や偏見の解消を目指した取り組みをおこなっています。


さらに、全国の法務局では人権に関する偏見や差別に悩む人のため、電話やインターネット、LINEで相談を受け付けています。北海道内では特設人権相談所の開設もおこなっており、直近では8月20日(水)に札幌市・北海道立道民活動センター かでる2・7で予定されています(午後1時~午後4時)。このほか、相談窓口の情報は法務省のWebサイトをご確認ください。

最後に、田谷さんは「アイヌの人々の固有の言語や伝統的な儀式など、その暮らしは魅力に満ち溢れています。ぜひアイヌの世界に触れ、感じ、その歴史や文化を知ることを第一歩として、偏見や差別をなくすことについて考えてみてください」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「アイヌの世界」について復習。2人が特に注目したことをピックアップして発表します。まず、村上は“ウポポイに行ってアイヌを感じよう”と注目ポイントを挙げます。一方、杉浦は“「アコㇿ青春」の動画を観てアイヌを知ろう”とスケッチブックに書き、「動画『アコㇿ青春』は法務省のWebサイトで紹介されています。また、ウポポイのホームページでは、さまざまなプログラムが紹介されていますので、ぜひご覧になってアイヌの世界に触れてみてください!」と話していました。

知ることが偏見や差別をなくす第一歩!先住民族「アイヌ」の文化や歴史を学ぼう

(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm
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