杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。


9月14日(日)の放送テーマは、「SAFでクリーンに! 空のカーボンニュートラル」。国土交通省 航空局の永瀬智規(ながせ・とものり)さんから、環境にやさしい航空機の燃料「SAF(サフ)」について伺いました。

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(左から)杉浦太陽、永瀬智規さん、村上佳菜子



◆航空分野におけるCO2削減の取り組み

飛行機は、島国である日本にとって人々の生活や経済活動に欠かせない存在です。国内外の移動だけでなく、貨物輸送にも大きな役割を果たしています。経済や文化のグローバル化に伴い、航空需要は今後さらに増えると予想されています。

一方、懸念されるのが環境への負荷です。日本は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を掲げていますが、飛行機は鉄道やバスに比べてCO2排出量が多く、環境負荷が大きい交通手段です。つまり現在、「飛行機の出番はますます増えるのに、CO2は減らさなくてはいけない」という課題に直面しており、これを解決するために世界的なルール作りや新しい技術の導入が進められています。

その対策の1つが、航空機そのものに対する新技術の導入です。「例えば、燃費効率を上げるために、機体やエンジン部品の材料を軽くて強い素材にすることで、燃費のいい新しい航空機に置き換える取り組みが進んでいます」と永瀬さん。また、EV(電気自動車)や水素自動車のように、「電動航空機」「水素航空機」といった次世代航空機の開発も進められていて、将来的に大きな期待が寄せられています。

「運航改善」による取り組みも重要です。
航空管制の精度を高めることで上空での待機や迂回を減らし、燃料消費を抑える工夫がおこなわれています。また、静止衛星を活用することで、視界不良時の着陸精度を向上させる取り組みも進んでいます。しかし、永瀬さんは「新技術の導入は普及に時間がかかり、運航改善もCO2削減効果に関しては限定的です」と現状を明かします。

◆持続可能な航空燃料「SAF」

こうした背景から、大きく注目されているのが「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」です。SAFとは“持続可能な航空燃料”のことで、石油由来のジェット燃料に代わる環境配慮型の燃料として、世界的に導入が進んでいます。

永瀬さんによると、海外では既に大規模な生産が始まっており、日本でも大阪府堺市のプラントで、国産SAFの生産がスタートしています。「日本の航空会社はすでに海外産のSAFを使い始めていて、国産のSAFを使用した運航も開始されたところです。そして今後も、多くの航空会社がSAFの利用拡大を目指しています」と説明します。

SAFの効果は非常に大きく、石油由来のジェット燃料と比較して約60~80%のCO2削減効果があるとされています。さらに、原料は家庭やレストランから出る使用済みの食用油、農業で排出される木くずや間伐材のほか、都市ごみ、サトウキビやトウモロコシといった植物など、実に多様な原料から製造されます。すでに技術が実用化されているものもあり、日本で生産が始まった国産SAFも使用済みの食用油から作られています。

◆空のカーボンニュートラルが進まないと…

SAFの原料は主に植物由来です。
ジェット燃料もSAFも、燃焼するとCO2が発生しますが、植物は成長過程でCO2を吸収します。そのため、ライフサイクル全体で見ると、SAFは石油由来のジェット燃料に比べて、最終的に大気中へ放出されるCO2の量が少なくなります。また、永瀬さんは「SAFはジェット燃料と混ぜることができるので、いま使われている航空機と空港の設備をそのまま使えます。性能もジェット燃料と変わらないので、現状ではCO2の削減に最も効果的な対策といえます」と補足します。

一方、SAFの利用には大きく2つの課題があります。その1つは“運用コスト”です。SAFの製造には、ジェット燃料に比べて数倍のコストがかかるといわれており、技術開発や生産量拡大によって価格を下げる努力が必要です。

もう1つは“原料の確保”です。「世界的に持続可能な原料確保が難しく、現状の見通しではまったく足りておりません」と永瀬さん。実際に、2050年に必要とされるSAFの量に対して、現時点の生産量は1%も満たしていないのが実情です。

CO2削減に大きく貢献できるSAFの生産を増やすには、私たちの行動も重要となります。その取り組みの1つが「Fry to Fly Project」です。
SAFは、家庭やレストランから回収した食用油も原料として活用することができますが、「Fry to Fly Project」では企業や自治体が主体となり、回収活動やイベント、出前授業などをおこなっています。そして、国土交通省 航空局も国の機関として初めてメンバーに加わりました。

もしも空のカーボンニュートラルが進まなければ、航空ネットワークの維持が難しくなり、「直行便が減る」「運航数が減る」といった影響が出る可能性もあります。最後に永瀬さんは「国や航空会社、民間の企業などが一丸となってCO2削減、空のカーボンニュートラルの取り組みを進めています。皆さんには、こうした取り組みに理解を深めていただき、“CO2削減のために自分は何ができるのか”と考えて行動していただければと思います」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「SAF」について復習。2人が特に注目したポイントをピックアップして発表します。まず、村上は“SAFで地球をクリーンに! 使った油を回収ボックスへ”を注目ポイントに挙げます。続けて、杉浦は飛行機のイラストとともに“持続可能な航空燃料SAF”とスケッチブックに書き、「空のカーボンニュートラルについて詳しく知りたい方は、国土交通省の「ソラカボ☆ポータル(空のカーボンニュートラルポータルサイト)」をご覧ください」とコメントしました。

「最大約80%」のCO2削減効果が!環境にやさしい植物由来の航空燃料「SAF」の可能性と課題を専門家が解説

(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm
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