モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月30日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「関西電力が原発の新設に向けて調査開始…その背景と課題は?」。
情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。

関西電力「原発」新設に向けて調査開始 電力需要増・老朽化にど...の画像はこちら >>

※写真はイメージです



◆関西電力が原発新設に向けた地質調査開始

関西電力は7月22日(火)、福井県にある美浜原子力発電所で原発の新設に向けた地質などの調査を再開すると発表。原発の新設に向けた具体的な動きは、東日本大震災後、全国で初めてとなります。

吉田:塚越さん、この動きと、その背景について詳しく教えてください。

塚越:まず背景には2つの要素があります。1つは、生成AIなどの普及によって、電力需要の急増が予想されていることです。日本は人口が減っていますが、国の認可法人「電力広域的運営推進機関」の推計によると、国内の電力需要は2019年と比べて2050年は最大4割くらい増える見込みです。(太陽光発電や風力発電などの)再エネも大事ですが、発電量が天候に左右されやすいという点もあり、いろいろと問題もあるので原子力が安定供給につながる電源として(原発が)期待されているということです。

もう1つは安全性、老朽化の問題です。現在稼働している美浜原発3号機は、今年で運転開始から49年を迎えるため、今後の対応が求められています。基本的には、原発を運転できる期限は60年です。※60年を超えて運転できるようにする法律が6月6日に施行

関西電力は去年、2050年を見据えた取り組みの一環として、原発の新増設と建て替えを打ち出しました。
そこで既存の原子炉を改良して、安全性を高めた次世代型の「革新軽水炉」という原発の開発を進めています。新規の原発に関して関西電力は、2010年に美浜原発のある美浜町で地質調査をはじめたのですが、東日本大震災もあって中断していました。その間に1、2号機の廃炉が決定して、「どうするんだ?」という大きな問題になっていました。

今回、再び地質調査をおこない、建設可能となれば原子力規制委員会に申請するということです。ただ、一般的に原発をつくるには、調査で8年、建設に12年かかるので、このまま進んだとしても(稼働は)20年後の見込みです。

◆次世代技術の「革新軽水炉」とは?

吉田:新設する原発として想定されているのは、次世代型の「革新軽水炉」。こちらは、どういった特徴があるのでしょうか?

塚越:これは福島第一原発事故の後に決められた新しい規制基準に合わせて、既存の原子炉に改良を加えたものです。基本的な仕組みはこれまでと同じで、高レベルの放射性廃棄物も発生しますが、安全対策という観点で新しい技術を導入して、地震や津波、またテロ対策なども考えられているということです。

安全対策でいうと、例えば、溶けた核燃料を受け止めて冷やす「コアキャッチャー」というものを造ったり、原子炉建屋を岩盤に埋めて耐震性を高めたりする設計が特徴です。これらは福島第一原発事故の教訓を活かすということです。ただ「革新」と名前はついていますが、個人的には、あくまで「アップデート」というレベルです。

ユージ:原発の新設に関して、現状、どのような課題があるのでしょうか?

塚越:2つほどの大きい問題があります。
1つは資金です。原発は1基建設するのに1兆円かかると言われており、資金調達が大変ですし、当然ながら原子力規制委員会の審査を通す必要もあります。今回の原発は次世代型なので、審査にはより時間がかかるとも言われています。

もう1つは住民の理解です。関西電力は再稼働にあたって、使用済み核燃料を県外に移すことを地元に約束しているのですが、青森県の六ヶ所村にある再処理工場は完成が2026年度中に延期されています。

もともとは97年に完成予定だったものの、27回も延期されている事態となっています。こうした背景から、さらに時間がかかる可能性が高いと見て良いでしょう。福島第一原発の核燃料デブリ取り出しのスケジュールがずれ込む見通しとなったという報道もありますし、地元の方から原発に反対する声も上がっています。

◆アメリカではビッグテックが原発を支援する動きも

ユージ:原発を巡る、この動き。塚越さんは、どうご覧になりましたか?

塚越:実際、電力のひっ迫は世界中で叫ばれている問題です。

アメリカでも、原発が見直されています。1979年に、ペンシルベニア州・スリーマイル島で原発事故が起こりました。
アメリカのビッグテック・Microsoftは、事故を起こした2号機ではなく、同じ敷地内にある1号機との長期契約をおこない、再稼働を支援する動きをみせています。またGoogleも、新しい次世代型の小型原発を企業と提携して建設する計画を進めています。

政府もこういったものを推進しようとしているのですが、日本の社会は3.11を経験していますし、(革新軽水炉などは)革新といっても従来のものをアップデートしたレベルなので、やや信用できない点があります。ただ、推進派・反対派どちらもいるかと思いますが、電力不足を巡ってはいろいろな課題がありますし、現実的にも原発の新設も考慮に入れているのは事実だと思います。

原発を巡る核問題は、社会が二分されてしまうようなテーマではありますが、こうした流れは世界的に同じであるということを頭に入れて、これを前提としたうえで議論していかないといけません。電力のひっ迫の問題があることを頭に入れておいていただくのが重要かなと思います。

関西電力「原発」新設に向けて調査開始 電力需要増・老朽化にどう備える? 背景・課題を専門家が解説

吉田明世、塚越健司さん、ユージ



<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ・吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
番組公式X:@ONEMORNING_1
編集部おすすめ