ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。
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7月23日(水)のテーマは「トランプ氏も警戒⁉︎ 注目のNY市長候補・マムダニ氏って誰?」。ニューヨーク市長選の若き注目候補について、ラボのメンバーが語り合いました。

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※写真はイメージです



◆注目のNY市長候補・マムダニ氏とは何者?

日本でも参院選があり、ほとんど知られていなかった政党や候補者が注目され、論争の的になったことなどがアメリカでもニュースになりました。

ニューヨークでも、これまで誰も知らなかったものの、「もしかするとトランプ氏に対抗する民主党のスターになるかも?」とまで言われる若い政治家が現れ、大きな話題になっています。

その政治家の名前は、ゾーラン・マムダニ氏。先日のニューヨーク市長選の予備選で民主党候補に躍り出た、33歳の若きニューヨーク州議会議員です。彼が11月の本選で勝って市長になると、国政にまで激変が起こると予想されており、特にアメリカZ世代は騒然としています。

若干33歳のニューヨーク市長候補マムダニ氏は、民主党のなかでも左寄りの民主社会主義者。移民でイスラム教徒でもあり、まさに多様性の街ニューヨークを象徴するような存在です。まずラボのZ世代がなぜ彼を支持するのか、その理由を聞きました。

テオ:ゾーハン・マムダニ氏って、実は僕の高校の先輩なんだ。
ニューヨーク市長選の民主党の予備選に出馬していたけれど、けっこう反体制派って感じで、反トランプの姿勢もはっきりしているんだよね。

ノエ:マムダニ氏の公約は、「家賃を下げる」「バスを無料にする」「中間層をサポートする」「物価を下げるために市が運営するスーパーを作る」とか、いろいろなプランがあるよね。もちろん全部が実現できるかはわからないけど、少なくとも何も言わない政治家より全然マシ。ちょっとぶっ飛んだアイデアもあるけど、ちゃんと筋道を立てて考えているし、そこが全然違うんだよね。

メアリー:「裕福な大企業にもっと税金をかける」という政策も掲げているけれど、隣のニュージャージー州と同じくらいの税率だから、そんなに無理な要求じゃないと思うよ。

テオ:マムダニ氏の選挙運動が、すごくよかったと思う。特にSNSとかTikTokをめちゃくちゃ活用していて、若い世代にすごくアピールできていたよね。

僕の知っている若い人たちでも、前回の大統領選では投票しなかったけど、今トランプが大統領になって「やばい、投票しとけばよかった……」とか言っている人が多いし。だから、今回の市長選では「ちゃんと投票に行かなきゃ!」って気持ちになっている人が増えているのかも。

マムダニ氏は右にかなり寄ったトランプ政権とは対照的に、左派の民主社会主義を掲げ、庶民や労働者階級の立場に立った政策で支持を集め、民主党の市長候補の座を獲得。しかも今回の予備選では、若者の投票率が最も高かったという、異例の結果になりました。

トランプ氏も警戒!? 注目の若きNY市長候補 ゾーラン・マムダニ氏とはいったい何者なのか?

(左から)ミクア、シェリー、ヒカル、ノエ、シャンシャン、メアリー/©NY-Future-Lab



◆“市民の味方”マムダニ氏 一方で大企業やトランプ氏は警戒?

一方で、マムダニ氏の強みは11月の本選では弱みになるかもしれません。
その理由は、ニューヨークという世界経済の中心で莫大なお金を動かす大企業や富裕層たちが、マムダニ氏に警戒感を抱いているからです。

驚くべきことに、トランプ大統領までが、この泡沫候補と言ってもいいマムダニ候補を名指しで攻撃しています。一体なぜでしょうか?

ノエ:トランプ大統領なんて、マムダニ氏を批判するためにわざわざ記者会見を開いたんだよ。「彼が違法なことをしているかもしれないという情報を得た」とか言って、「彼の移民としての記録を調べるぞ」みたいなことを言っているんだよね。つまり「マムダニ氏が不法移民かもしれない」と匂わせているんだ。

シェリー:それで、彼は市長になれると思う?

テオ:彼に勝ってほしいとは思っているけれど、相当大きな「体制側の力」が全力で阻止してくる気がする。それをどう仕掛けてくるかがすごく気になる。マムダニ氏がちょっとでも失敗したら、「ほら見ろ、だから社会主義はダメなんだ!」って、あらゆるネガティブなことを細かく取り上げて叩かれると思う。「この悪の社会主義者を排除せねば!」みたいなノリで。

ノエ:アメリカって本当に、社会主義にビビりすぎなんだよ。僕が今住んでいるフランスなんて最高だよ。僕はフランス人ですらないのに、最近、家賃補助でいきなり2,000ドル(約30万円)くらいもらったし、電動バイクを買ったら環境にいいことをしたというので400ドル(約6万円)のキャッシュバックもあったし、「社会主義みたいで最高かよ!」って感じ。


でも、これはアメリカの話だからね。アメリカでは政治的にいいことって、基本的に起きない(笑)。最近本当に思うのは、民主党も共和党も、なんだかんだ言って資本主義、大企業やテック業界のためのシステムの一部になっている感じがする。

でもマムダニ氏は、そうした上流階級の価値観に真っ向から対抗している存在だから、もう全部が彼の敵になっているんだよ。だから、彼が予備選で勝てたのは、ある意味で奇跡。権力を持っている人たちは本気で「どうにかして阻止しよう」と動いてくる気がするんだよね。

マムダニ氏が本当に市長になって、公約で言ったことをちゃんとニューヨークで実現して、「この街、前よりよくなったよね」と市民に思わせたら、全米にもめちゃくちゃ影響を与える存在になるはず。だって、トランプがここまで国をめちゃくちゃにしたからね。共和党支持者ですら「え、なにこれ……」ってなっているし。だから今、振り子がめっちゃ右に振れている状態だけど、逆にそれが左に大きく振り戻される可能性もあると思う。

民主社会主義者で反体制、庶民の味方のマムダニ氏が本当にニューヨーク市長に当選したら、アメリカが揺れ戻り、「トランプ体制に風穴をあけるきっかけになるかも」という意見が出ました。

アメリカ人は一般的に社会主義を嫌う傾向があるという話も出ましたが、アメリカの保守派は、日本のようなスタイルの国民皆保険制度の導入を呼びかけるだけで「社会主義者」と言って嫌うほど。
そこには政府に頼るのをよしとしないプライドのようなものが存在します。

一方で、ラボのメンバー・ノエが今住んでいるフランスは、民主主義国ですが、学費も医療費もほぼ無料。対するアメリカ人は高い学費にあえぎ、10人に1人は保険に加入できない状況にあります。そうした状況を変えたがっている人が多いのも、アメリカのZ世代の特徴です。

シェリーは「果たしてマムダニ氏は市長になることができるのか? もし彼が勝てばアメリカに新しい景色が広がるのは間違いないでしょう」と話し、話題を締めくくりました。

<番組概要>
番組名:NY Future Lab
放送日時:毎週水曜日18:40~18:55放送
出演:シェリーめぐみ
番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/nyfutureweb
特設サイト:https://ny-future-lab.com/
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