今回は、天才女性シンガー・ソングライターと謳われたローラ・ニーロを特集。自身が自作曲を歌ったバージョンはなぜかあまりヒットしなかったローラ・ニーロですが、多くのアーティストが彼女の楽曲をカバーしたことで、大ヒット。ローラ・ニーロの音楽が大好きで、かねてから彼女の特集をおこないたいと思っていたという村上DJが、魅力的で印象的な名曲の数々を、心を込めて選曲しました。
この記事では中盤2曲について語ったパートを紹介します。
Laura Nyro「Stoned Soul Picnic」
The Staple Singers「Stoned Soul Picnic」
ローラ・ニーロは数多くの名曲を書いていますが、僕は個人的にこの曲が一番好きみたいです。「ストーンド・ソウル・ピクニック」。わかったような、わからないようなタイトルであり、歌詞ですね。Stonedっていうと、だいたいは麻薬で深くラリるという意味なのですが、この曲の場合はハード・ドラッグの雰囲気はなくて、「みんなでご機嫌なピクニックにでかけようよ」というくらいのソフトでドリーミーな、ちょっと煙っぽいくらいの内容だと僕は解釈しています。
まずローラの歌で聴いていただいて、途中からザ・ステイプル・シンガーズのソウルフルな歌にかわります。ローラのトラックをジョン・トロペイ(John Tropea)、チャック・レイニー、ジョージ・ヤングといったNYの腕利きミュージシャンが、ザ・ステイプル・シンガーズのほうはブッカー・T・ジョーンズの率いるメンフィスのミュージシャンたちがバックを務めています。テイストはけっこう違っていて面白いですね。この曲もLP「Eli and the Thirteenth Confession(イーライと13番目の懺悔)」に収められています。
ちなみにこの曲はフィフス・ディメンションがカバーして、全米チャートの3位に入りました。僕はローラ自身が歌ったバージョンのほうが気に入っていますが、彼女の歌った自作曲のシングル盤って、100位以内に1枚もチャートインしていないんです。不思議ですね。彼女の声がいささか甲高いということも影響していたかもしれないけど、あるいは彼女の音楽を愛する人たちの多くはシングル盤じゃなく、LPを買ってじっくりと音楽を聴き込んでいたのかもしれませんね。
Laura Nyro「Lonely Women」
これもLP「Eli and the Thirteenth Confession(イーライと13番目の懺悔)」に入っている曲です。「Lonely Woman」オーネット・コールマンの作った有名な同名の曲がありますが、こちらはローラの作曲した別物です。ブルージーで素敵な曲ですが、このトラックの聴きものはなんといっても、ズート・シムズが裏につけるテナーサックスの優しく静かなバッキングです。シムズはこの時期、かなり調子を落としていたみたいで、スタジオでレコーディングするのは2年ぶりだったということですが、ここでは心のこもった見事な演奏を聴かせくれます。ローラの歌にそっと寄り添うような、気配を殺した繊細な息づかいが素晴らしいです。おお、さすがズート・シムズって感じですね。
ローラはズート・シムズがどれくらい凄い人なのか知らなかったようですが、そのときのレコーディングについて後にこのように語っています。「そのテナーサックスはあまりに素晴らしかったので、私は思わずそこに座り込んでおいおい泣き出してしまった。
この曲はカバーではなく、最初から最後までローラ・ニーロ自身の歌でおかけします。じっくり聴いてください。「Lonely Women」です。
<番組概要>
番組名:村上RADIO~ローラ・ニーロ・ソングブック~
放送日時:8月31日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/