モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。今回の放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『ニュースを避ける傾向』がある人は18% 理由は『気持ちが暗くなる』が最多」。
情報社会学が専門の学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんに解説していただきました。

“ニュースを避ける人”が増加中…「気持ちが暗くなる」「気分が...の画像はこちら >>

※写真はイメージです



◆暗い気持ちになるからニュースは見たくない?

スマートニュース メディア研究所がおこなった調査で、意識的にニュースを避けることがあるかどうか質問ところ、「頻繁にある」「時々ある」と答えた人が18%いたことが分かりました。理由としては「暗い気持ちになる」が目立った、ということです。

吉田:塚越さん、こちらの調査結果について、詳しく教えてください。

塚越:これは、スマートニュース メディア研究所が今年1月~3月に18歳から79歳の男女計2,117人を調査したものです。いろいろな項目がありますが、「あえてニュースを避けることがありますか?」という問いには、「頻繁にある」と「時々ある」が合わせて18.1%。また、「たまにある」が30.8%だったので、これを合わせると半数近い人がニュースを避けることがあると回答しています。

その理由について、「気持ちが暗くなる」「気分が悪くなる」というものが多く、およそ6割の人がそのように回答しています。他にも「関心の持てないニュースまで知りたくない」や「センセーショナルな見出しが多すぎる」という回答が続きます。年代別だと、ニュースを避ける傾向が一番高いのは30代でした。

また、避けたいジャンルについては、「ない」がおよそ半数で一番多かったのですが、その他だと芸能ゴシップが21.7%、次に戦争紛争が18.9%です。感情が強く動くものに対する忌避感があるのかなと、私は読み取りました。


ちなみに、このスマートニュース メディア研究所の調査は2年ごとにおこなっており、2023年の調査では設問がやや異なるので単純な比較はできませんが、「ニュースを避ける」と答えた層は8%でした。2025年は18%になっているので、質問の違いを考慮しても、人々のニュース回避意識が強まっている兆候として読むことができます。実際、ロイターがグローバルな調査をしているのですが、世界的に見てもここ数年でニュースを回避する人は増加傾向にあることが分かっています。

◆あえて暗いニュースばかりチェックしてしまう「ドゥームスクローリング」とは

吉田:暗いニュースをチェックし続けてしまう傾向は「ドゥームスクローリング」と呼ばれていて、こちらも問題になっている、ということですね?

塚越:そうですね。嫌なニュースを避ける傾向がある一方で、スマホで暗いニュースや情報ばかり追い続ける「ドゥームスクローリング」と呼ばれる現象も注目されています。この言葉は2018年頃に海外で生まれた言葉で、「doom(破滅、悲運)」と「scrolling(スクロール)」をかけ合わせた言葉です。暗い情報なのに、スマホでスクロールしてしまう、つまりずっと見続けてしまうという現象です。特にコロナ禍で広がった言葉で、精神面へのダメージが指摘されています。

嫌なニュースは避ける傾向にあるのに、暗い情報を追い続けてしまうのは、矛盾していますよね? 実はこれ、私たちの精神的な状態に深く関わっています。不安定な社会で多くの人が不安を感じている一方で、そういう状態は嫌だと思っている。すると、心のなかに不安な状態と、それは嫌だという、矛盾した状態が生まれてストレスを感じてしまう。これを心理学用語で「認知的不協和」といいます。
人は認知的不協和になると、これを解消したくなるんですね。

この状態に陥ったとき、人はいくつかの方法で解決を図ろうとします。1つ目は、ニュースを見ない。ニュースを避けがちになります。2つ目は、逆に過激で、不安を煽るようなニュースを見ることで、「やっぱり世の中は、不安定だ」ということを知る、暗いニュースを見てそれを正当化する。実際に「世の中は暗く不安定なんだ」と確かめて、心を落ち着かせようとします。ニュースを避ける傾向も、暗い情報を自ら進んで見てしまうのも、根っこは同じです。不安な状態にあって、その状態を「何とかしたい」という、認知的不協和の解消が目的です。

一方で、ニュースを見なくなると、社会に参加しなくなることが問題になります。他方で、不安なニュースをたくさん見る方向で不協和を正そうとすると、やはりメンタルへのダメージが強くなってしまいます。さらに、不安が増していって心を正当化しようとして、極端な情報、偏った情報、陰謀論のようなものにハマってしまうという指摘もあります。そうしたニュースを見すぎるのも問題なのかなと思います。


最近は、SNS上で「大きな災害が来る」といった予言が話題で、そうした投稿を見た方もいると思います。これらの投稿が話題になっているのも、今お話ししたように、認知的不協和の解消という文脈から読み解くことができるかなと思います。個人的には、予言は当たらなくても言及されず、当たったものだけが言及されるといったことを頭に入れておいていただきたいなと思います。

◆“対面で人と会う”などバランスを大切に

ユージ:スクリーンタイム「ニュースを避ける傾向」と「ドゥームスクローリング」、塚越さんは、どうご覧になりましたか?

塚越:「フィルターバブル」(※)といって、(SNS上などで)欲しい情報がたくさん見えてしまうので過激に見てしまう、それで疲れて見なくなる。両方に問題があると言いましたよね。スマホで何でも見えてしまうのは問題なので、SNSの使用時間を決めておくといいと思います。

iPhoneだとスクリーンタイムという機能があって、例えば「Xのアプリは1日30分までしか使えない」など制限することができます。ある程度、距離を取っておくことが大事です。「バランス」が大事なので、対面で人と話す時間を作るのもいいですね。スマホで情報を見るにしても、楽しく明るい情報にも接するという意識も大切にしていただければと思います。

※ネット上のアルゴリズムによって、個人の興味・関心のある出来事ばかりがSNS上やスクリーンに表示され、まるで泡のなかに閉じ込められたかのように同じ情報・意見に囲まれてしまうこと。

ユージ:本当にそう思います。
ちょっと暗いニュースをクリックすると、アルゴリズム的に自分のオススメに出てくるので、暗いニュースが多くなっていきます。

塚越:どんどん暗くなるんですよね。

ユージ:アルゴリズムでそういうニュースが表示されているとはどこにも書いていないので、どうしても「暗いニュースばっかりだな」となるのですが、いま塚越さんが話したように定期的に明るい話題も自分で探りにいくと、それがアルゴリズムに反映されて、適宜明るい話題も表示されるようになっていきます。

塚越:どうしてもニュースだけだと、暗い内容が多いですが、世の中には面白いニュースもあります。まさにこの番組なんて、暗いニュースから真面目な話までしますし、ユージさんは面白い話を振りまいてくれていますよね。バランスのいい番組ということで、今後もよろしくお願いいたします。

“ニュースを避ける人”が増加中…「気持ちが暗くなる」「気分が悪くなる」その裏にある心理とは? 専門家が解説

吉田明世、塚越健司さん、ユージ



<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/
編集部おすすめ