杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。


8月3日(日)の放送テーマは、「今こそ考えよう! 日本の気候変動2025」。気象庁 気候変動対策推進室の苗田陸生(のだ・りくお)さんから、日本の気候変動の現状、これからの将来予測について伺いました。

今後「猛暑」「豪雨」はもっと増える? 今年3月に公表された「...の画像はこちら >>

(左から)杉浦太陽、苗田陸生さん、村上佳菜子



◆気象業務“150周年”

2025年は、日本における気象業務が始まって150年という節目の年です。明治8年に現在の東京都港区虎ノ門で、気象庁の前身である東京気象台が観測を開始し、最初は1日3回の気象観測と地震観測からスタート。その約9年後に全国の天気予報が始まり、現代では全国各地の詳細な天気予報が高精度で発表されるようになりました。

気象庁は長年にわたり、気象や地震、火山などの自然現象を観測・監視し、天気予報や警報を通じて、私たちの命と暮らしを守り続けています。特に近年は地球温暖化の影響による大雨や異常気象が増えていることから、より気象庁の役割が重要になっています。

◆「日本の気候変動2025」で示された気候変動の影響は?

さらにもう1つ、気象庁が担う重要な役割が“未来の天気を予測すること”です。蓄積された観測データをもとにスーパーコンピュータを用いることで、数日先の天気だけでなく、100年先の気候変動まで見通すことが求められています。

また、日本では2018年に「気候変動対策は科学的知見に基づいておこなう」と法律で定められました。それを受けて、気象庁と文部科学省が共同で、日本における気候変動に関して取りまとめた報告書が「日本の気候変動2020」です。今年3月には最新版となる「日本の気候変動2025」が5年ぶりに公表されました。


「日本の気候変動2025」は、温室効果ガスや気温、降水、台風、海水温など、要素ごとに過去から現在までの観測結果と将来予測を示しています。基本情報を網羅している本編は約80ページ、より詳しい詳細編は、なんと400ページ近くにもおよびます。

そのなかで「気温」に関する観測結果を紹介すると、日本の年平均気温は1898年から2024年のあいだに、100年あたり1.40度の割合で上昇しています。これは、100年以上におよぶ観測データから明らかになった長期的な変化です。

「この数値は過去から現在までの平均的な状態の変化ですから、日々の寒暖差などの変動全体が底上げされていることを意味します。つまり、実際の日々の気温は1度上昇にとどまらず、より高温の時期が出現することもありえるという数値です」と苗田さんは説明します。

実際に、近年では「気温40度を超える日」が報道されるケースが増え、猛暑や熱帯夜の日数も年々増加していますが、「近年の猛暑事例のいくつかは、地球温暖化による気温の底上げがなければ起こり得なかった、という研究結果も新たに示しています。また“大雨”についても同様で、近年の大雨事例のいくつかについて、温暖化の影響により“発生確率と強度が大きくなった”という研究結果が示されています」と解説します。

◆“将来予測”の2つのシナリオ

続いては、「日本の気候変動2025」で示している将来予測について。この報告書では、21世紀末までの気候変動を2つのシナリオで予測しています。1つは、世界中が協力して温室効果ガスの排出を抑え、工業化以前(※)と比べて世界の平均気温の上昇を2度以内に抑えられた場合。
※工業化以前…産業革命以前の19世紀頃のことで、今のように工場が多く稼働しておらず、温室効果ガスの排出も少なかった時代

もう1つは、対策が進まず、気温が4度以上上昇してしまった場合です。
「この2つのシナリオを比べることで、どれだけ温室効果ガスの排出量を減らせるかによって、将来の気候がどれほど変わるのかがはっきりわかるようになっています」と説明します。

例えば「気温」の項目を見てみると、2度上昇シナリオでは、20世紀末と比べて全国平均で猛暑日が年間約3日、熱帯夜が約8日ほど増えると予測されています。一方、4度上昇シナリオでは、猛暑日は約18日、熱帯夜は38日ほど増えるとされており、大きな差があります。実際、1880年代の東京では熱帯夜は年間6日ほどでしたが、2023年には57日を記録。これは、すでに予測値である“38日”増を大きく上回っています。

続いて「大雨」に関する将来予測です。2つのシナリオどちらにおいても、全国平均で非常に激しい雨の発生頻度は増加すると予測されています。

たとえば、1時間に50ミリ以上の降水をもたらす大雨の年間発生回数は、2度上昇シナリオで20世紀末の約2倍。4度上昇シナリオで約3倍に増えるとされています。1時間に50ミリ以上の大雨は「滝のように降る雨」「傘が役に立たない雨」とも言われるほどで、生活やインフラに大きな影響を及ぼしかねません。

さらに、天気予報やニュースなどで耳にする「50年に一度」「100年に一度」といった極端な大雨も頻発すると予測されており、工業化以前の気候における100年に1回の大雨は、気温が2度上昇すると100年に約3回、4度上昇すると約5回に増えると予測されています。

◆「日本の気候変動2025」を活用しよう

「日本の気候変動2025」では、今回取り上げた項目だけでなく、日本近海の平均海面水温が上昇することや、沿岸の海面水位が上昇すること、台風の強度が強まることなど、さまざまな観測結果や将来予測などの情報を示しています。


また、この報告書で示されている情報は、国や地方自治体、事業者など各分野の方々が、今後の極端な気象現象や大雨の発生頻度などを考慮した、気候変動適応計画などの取り組みを考える際に役立てられることを期待して公表しています。「実際に、前回の報告書は各省庁や都道府県に活用いただいていますので、今回の報告書についても、より多くの方々にご活用いただければと思っています」と苗田さんも期待を寄せます。

そして、改めて「報告書の概要版は、一般の方にもわかりやすいよう、コンパクトに情報をまとめています。皆さんもぜひ一度、日本の気候変動の状況をご覧になってください」と呼びかけていました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「日本の気候変動2025」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。村上は “「日本の気候変動2025」を見て現実を知ろう”と注目ポイントを挙げ、報告書の重要性を強調します。続いて、杉浦は“未来の地球を変えるのは僕ら自身!”とスケッチブックに書き、「日本の気候変動に興味を持った方は、気象庁がWebサイトで公表している「日本の気候変動2025」をご確認ください」とコメントしました。

今後「猛暑」「豪雨」はもっと増える? 今年3月に公表された「日本の気候変動2025」から分かる“未来の天気予報”

(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/
番組公式X:@manabiyori_tfm
編集部おすすめ