株価が下落すると、質への逃避ということで、格付けの高い国債をリスクヘッジとして買うのが従来の国際分散投資のセオリーでした。



ところが、ここ10年は各国の金利が下がりっぱなしで、米国でさえ長期金利が1%台となっています。

つまり、何らかのリスクイベントが起こってリスクヘッジしようとしても、リターンが低すぎる債券はもう買えない状況です。では、どうやって株価下落リスクをヘッジすればいいのでしょう。



■最近、金が注目されている



ここ最近、メディアでもよく報道されていますが金価格が上昇しています。その背景には株価下落によるリスクヘッジを金で行っている運用会社や投資家が増えてきているとの観測があります。



図表1:過去30年間の金価格推移(米ドル/オンス(約31.1グラム))



価格上昇で注目される金と株式の長期投資、どちらがお得?

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出典:DATAHUB( https://datahub.io )より筆者作成。期間:1989年6月末から2019年6月末。




図表1からわかるように、確かに金価格は最近の底値から回復してきています。かつ、2019年に入って株価が乱高下する状況では、金が退避資金の受け皿として利用されてもおかしくありません。一部の機関投資家やヘッジファンドが資産の一部を金に運用したとしても、むべなるかなです。



こうした背景もあり、日本でも金に対する関心がじわじわ高まっているようで、お昼のワイドショーなどで金の相場動向を専門家が語ったりしています。



では、本当のところ金は儲かるのでしょうか。



まず、金取引の特徴を見ていきましょう。



  • 金は現物資産(モノ)です
  • 金利や配当は付きません(有価証券ではありません)
  • 金価格は米ドル建てで取引されています(日本で買う場合は円建てですが、米ドル/円の為替レートによって円建て金価格が変動します)
  • 現物ですので、業者に保管を頼むか、貸し金庫や自宅で保管することになります(保管料がかかるが、自宅に置くのは危険)
  • 小口だと売買の際、手数料がかかる(1%~3%、投資信託のような信託報酬はない)
  • 売却時の譲渡益があった場合は譲渡所得(50万円を限度とする特別控除額あり)となり、給与所得等と総合課税となる
  • 今では、さまざまな金取引業者がスポット買い(不定期にまとまった金額の金を買う)や積立購入(毎月3000円程度から)を提供して、インターネットでの取引も可能になっています。色々な条件は付いてくるものの、金は身近な投資対象になりつつあると言えるでしょう。



    ■株価と比較すると株式のほうが有利!?



    図表1でも分かりますが、金価格が急上昇したのは2008年のリーマン・ショック以降です。ところが、この間は株価も債券も金も上がるといった、かつての経済理論では対処できない局面となっているのです。



    足元の金価格の上昇には長期的な観察が必要です。つまり、リスク資産のヘッジ対象資産であるのか、あるいは純粋な投資対象になるのかは、今後の市場環境によるでしょう。



    図表2:過去30年の金価格とS&P500指数(トータルリターン)との比較



    価格上昇で注目される金と株式の長期投資、どちらがお得?

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    出典:DATAHUB( https://datahub.io )及びCboe( http://www.cboe.com/ )より筆者作成。期間:1989年6月末から2019年6月末。1989年6月末を100として指数化。




    図表2は過去30年の金価格と、米国株を代表するS&P500指数(トータルリターン)との比較です。金価格と米国株のパフォーマンスはそれほど差がないようなイメージで、かつ金が急騰する際のパフォーマンスは株以上という印象ですが、過去30年においては米国株のパフォーマンスが金を圧倒しています。



    特に2012年以降からは、米国株価は上昇する一方で、金価格はマイルドに下落傾向です。

    どちらも需給関係で価格の方向性が決まりますが、少なくともこの期間では株式の方が有利だったからこそ、金価格は横ばいであったのです。



    加えて、売買時に有価証券取引以上の手数料や税金がかかることを考えれば、短期売買に向かないことは論をまちません(株式も短期売買には向きません)。



    さて、ここぞとばかり人気が出ている金ですが、仮に投資するとすれば、次のようなスタンスで臨んではいかがでしょう。



    • 現物投資として、不動産と同じような感覚で投資する(そう簡単に売らない)
    • 永遠のインフレ対策として孫子の代まで保有する(日本にインフレが来るなら)
    • 金貨等の金製品の期待収益がより高ければ、そちらに投資する(目利きになれれば)
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