幸せとはなんでしょう?お金があって欲しいものが全て買えること?愛する人々に囲まれて美酒美食の毎日?働かず好きなことだけして遊んでいられること?



幸せの基準は人によって千差万別、あまりに主観的であいまいなので定義しづらく、これまで世界各国で進化論、脳科学、社会学、心理学、経済学など、あらゆる分野で「幸せに関する研究」が行われてきました。



ダニエル・ネトルの『目からウロコの幸福学 Happiness: The Science Behind Your Smile』(オープンナレッジ)は、それらの研究をもとに幸福の正体、そして幸せを手にするためのヒントを明らかにした一冊ですが、長らく絶版となっていました。

今年1月末に『幸福の意外な正体( https://amzn.to/39JzIKR )』(きずな出版)として新たに復刊されました。



■著者の「幸福」への疑問



同著を監訳した金森重樹氏は東京大学を卒業後、1億2,700万円という莫大な借金を負い、その後10年かけて借金を完済。年収も300万円台から1000万円、1億円、10億円と増やしていきました。



ところがまったく幸福感は上がらない。欲しいものを手に入れるとそれだけでは満足せずに、また他のものが欲しくなり、欲求は際限なく広がり、収入の増加によって一時的に幸福感が高まっても、短期間にその状態に慣れてしまい、時間が経つと空疎な感情を抱えている自分に気づいた経験から、本著を監訳し、幸福とは何かについて研究をしました。



以下では、その「幸福」についての研究結果を、少しご紹介します。ご興味を持たれた方はぜひ、『幸福の意外な正体~なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか( https://amzn.to/39JzIKR )』(きずな出版)を手に取ってみて下さい。



■幸せの3つのレベル



幸福には3つのレベルがあると考えられます。



【レベル1】
一時的な気持ち
喜び
楽しさ



【レベル2】
気持ちのバランスの判断
充足感
生活の満足度



【レベル3】
善良なる生活
美徳
潜在能力の開花



レベル1に行くにしたがってより直接的、かつ感覚的で情緒的になり、レベル3に行くにしたがってより広い意味、相対的、倫理的で政治的になります。



特にレベル1の喜びやたのしみという意味での幸せは「好ましい(ポジティブな)状況である」と万人が認めています。



では、ポジティブな状況とはいったいどういう事でしょうか。



■ポジティブな感情とネガティブな感情の違い



ポジティブな感情とネガティブな感情のあいだには、興味深い相違があります。

ポジティブ感情はどれも似たようなものですが、ネガティブ感情は原因も解決方法もそれぞれ違い、それぞれにネガティブなものです。



また、ネガティブな感情は非常にしつこく残ります。原因が取り除かれない限り、慢性的に生活を脅かすこともあります。



かたや、ポジティブな感情は「何かいいことが起きた」状態のときに生まれ、原因や感情の強さに違いがあっても、喜びはすべて同じ領域に属します。



幸せや喜びは、私たちに益をもたらすような変化を環境の中から感知し、そのいいものに神経を集中するべく、ほかの関心事や意図を忘れるよう導くプログラムなのです。



しかしながら、その幸せや喜びはずっと続くものなのでしょうか。



■「喜び」は衰えていくもの



喜びというのは、それをもたらしたものが存在し続けていたとしても、徐々に衰えていくものなのです。



たとえば、長いこと見つからなかったイヤリングの片方が、衣替えをしたコートのポケットから発見されたときにはうれしくて喜びにあふれますが、しばらくすると対になったイヤリングをつけるのが当たり前の状況になってしまいます。



もし、喜びのプログラムがほかの問題を忘れて何かいいことに意識を集中させるためのものであるなら、しばらくたったら終了する機能があらかじめ備わっていなければきわめて不都合だということになります。「喜び」は徐々に背景へと押しやられ、ほかのプログラムが私たちの関心を引くように仕向けなければならないのです。



このような馴化(慣れ)の作用はネガティブ感情にも起こりえますが、ポジティブ感情に比べれば、さほど早くもなければ完全でもありません。



人が、自分は幸せな生活を送っているという場合、四六時中文字通り喜びにあふれていたり楽しくて仕方がなかったりするわけではありません。

ポジティブとネガティブのバランスシートを吟味してみた時、長い目で見て自分はより好ましい状態にあると感じるのです。



■幸せは「比較」に左右される



起きているあいだじゅう、ずっと喜びに満ちあふれているというのは疲れることです。



人生にとって大切なのは、つねに歓喜を感じていることではなく、ときどき元気が出ればそれでいい。むしろ、全般的に見てほぼ満足という意味での幸せを感じることだと、たいていの人は理解しています。



対してレベル2の幸せとは何でしょうか。



【レベル2】の幸福の重要な要素は「生活の満足度」です。



これは、たとえば、「総合的に考えて、あなたは自分の生活にどの程度満足していますか?」といった質問に答えることで、引き出せる感覚です。



そのような問いへの答えは、「ふだんあなたは、どれくらい幸せを感じていますか?」という問いへの答えと、非常に強い関連があります。「喜び」についてであれば、人は自分の心の中を直接のぞいて、そのとき自分が、どれくらいの喜びを感じているかを知ることができるでしょう。



けれども「満足度」となると、その自己申告は、その瞬間の感情とももちろん関係がありますが、さらに経験的な知識を動員する間接的なプロセスを伴います。



つまりたいていは何らかの比較対象が必要となるのです。



だから、「どの程度満足しているか?」という問いに対して「何について?何と比べて?」という答えが返ってくるのは当然です。

そしてこのことが、生活の満足度を自己申告させると、どうしても周囲の条件に左右されてしまう理由でもあるのです。



■たった10セントで「生活の満足度」は上がる?



ある実験では、回答者が生活の満足度について質問を受ける直前に、失くしたと思っていた10セント硬貨をコピー機の上に発見するよう細工がなされました。



硬貨が返ってきた回答者たちは、返ってこなかった回答者に比べ、自分の生活全般について、はるかに高い満足度を示しました。これぞ、最も安上がりで効果的な公共政策だといえるかもしれません。



けれども、もし回答者がみな、コピー機の上に10セント硬貨があることをあらかじめ知っていたとしたら、そうはいかないはずです。



ポジティブな感情は、ある特定の領域で、物事が予想以上にうまくいったときに起きるからです。



生活の満足度という問いはあまりに漠然としていて判断基準が曖昧なため、おそらく回答者たちは、そのときの感情状態を一種のサンプルとして使い、10セントが戻ってきた小さな喜びを心の中に発見し、自分の人生はなかなかうまくいっている、と答えるのでしょう。



生活の満足度を判断する枠組みの中には、自分の現在と過去の比較だけではなく、他人の生活水準、あるいは可能性としてあり得た結果も影響を与えます。



自分が集団の中でどの位置を占めるかということも、人生をどう感じるかに大きな影響を与えるのです。



ほとんどの人は、まわりが年収400万円の世界で自分が500万円稼ぐほうが、他人が年収2000万円の世界で1000万円稼ぐよりもいいと答えます。1000万円という金額より、他人と比較して多いか少ないかが幸せかどうかを左右するのです。



レベル3の幸せについては、是非本書をお手に取って頂きたいです。


今までとは違う“幸せ”の捉え方が出来るのではないかと思います。



〈著者プロフィール〉
金森重樹
東京大学法学部卒。25 歳の時に1 億2000 万円の借金を負うも、マーケティングの技術を活用して35 歳で完済(著書『お金の味』に詳しい)。
その後、行政書士として脱サラし、現在は不動産、ホテル、福祉事業など年商100 億円の企業グループのオーナーになっている。
本業以外にも個人で日本最大である2 メガワットのメガソーラー発電所を宮古島に開設。
また断糖高脂質食を広めるためにTwitter( https://twitter.com/ShigekiKanamori )で情報発信を続け、2020 年2月時点で9 万人のフォロワーがいる。
著書に『プロ法律家のビジネス成功術』(PHP 研究所)、『借金の底なし沼で知ったお金の味』(大和書房)ほか、監訳書にベストセラー『自分の小さな「箱」から脱出する方法』(アービンジャー・インスティチュート著、大和書房)、『まさか! の高脂質食ダイエット』(グラント・ピーターセン著、きずな出版)など多数。



〈書籍概要〉



幸せは「比較」に左右される?「幸福の意外な正体」とは
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『幸福の意外な正体~なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか( https://amzn.to/39JzIKR )』
著者:金森重樹
発売日:2020年1月27日
定価:2,200円(税抜き)
発行:きずな出版



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