あなたは自分の年収に満足していますか?国税庁「民間給与実態統計調査( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf )」から一般的な給与所得者の年間平均給与をみてみると、男性545万円、女性293万円、平均すると441万円になるそうです。



また、正規雇用では504万円、非正規は179万円と性別・雇用形態でかなりの差があることが浮き彫りになっています。



そんななか、一種のステータスともいえる「年収1,000万円」は全体の5%にすぎません。さぞかしゆとりのある生活を送っているのかと思いきや、実はさまざまな事情があるようです。実際の声を聞きながら、貧乏高所得の実態に迫ってみましょう。



■年収1,000万円は損をしやすい?



高給取りであるというイメージが強い年収1,000万円世帯。しかし、実際は損をしやすいことも多いようです。また年収1,000万円世帯といっても、「世帯主が1人で1,000万円稼ぐ」のと「夫婦で1,000万円稼ぐ」のでは税率などの割合が変わってくるため、今回は「世帯主が1人で1,000万円稼ぐ」家庭をメインに考えてみましょう。



【1】 所得税を多くとられてしまう

世帯主1人が1,000万円稼いでいる家庭は、共働きの1,000万円世帯よりも所得税の負担が多くなります。所得税は家族構成などで変化しますが、仮に同じ4人家族であるとしたとき、世帯主が1人で1,000万円稼いでいる家庭の所得税は約68万円。夫婦が500万円ずつ稼いでいる世帯ではそれぞれに約14万ずつ所得税がかかり、合計約28万円。所得税だけで年間38万円の差が出てしまうのです。



【2】 児童手当が対象外

児童手当とは中学卒業までの子どもを養育している世帯を対象に、年齢や子どもの数によって1万円~1万5,000円が支給される制度です。しかし、この児童手当には所得制限が課されています。



内閣府のリーフレット「児童手当制度のご案内( https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/pdf/leaf_teate.pdf )」によると扶養親族2~3人(子ども1~2人・専業主婦の妻)世帯の場合、年収が1,000万円をこえると対象外となり、月額5,000円の特例給付に変わってしまうのです。1万5,000円受け取っている世帯と比べると、子ども1人あたり年間12万円もの差になります。



【3】 高校無償化の対象外

令和2年4月よりスタートした「私立高校授業料の実質無料化制度( https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/20200715-mxt_kouhou02_1.pdf )」。これは国公私立を問わず、高等学校に通う子をもつ世帯に支援金が出る制度ですが、対象となるのは中学生1人・高校生1人いる家庭で年収910万円が目安です。年収1,000万円の世帯では、この制度も対象外となってしまいます。



このように、一種のステータスでもある「年収1,000万円」は、税金や支援金制度でもライン上となりやすく、負担が多くなる傾向にあります。しかし、基本的には手取りが年収1,000万円以下の世帯と逆転することはありません。それでも生活の苦しさを感じる理由のひとつに、消費に関する意識の違いがあるようです。



■「背伸び消費」で気づくと貯金ゼロ



1,000万円もの稼ぎがありながら、貯金はない……もちろん個人差はありますが、そこに潜むのが節約に対する無関心。「ちょっとくらい使ってもいいだろう」という気持ちに拍車がかかり、「より良いもの」「より高いもの」に手を伸ばしてしまう「背伸び消費」になると、簡単には戻せなくなることも。



「貯金よりも生活の質を優先して、野菜は無農薬、シャンプーもオーガニックブランドで統一。実は貯金がほとんどないのですが、どうしても生活レベルを落としたくなくて」(Tさん・40歳)



「実はちょっと背伸びした家を購入したのですが、家計の余裕のなさに今かなり焦りを感じています。先月も赤字になってしまい、働きに出ないとダメかも」(Eさん・36歳)



また、年収が高いとかかりがちなのが教育費。子どもを私立小中に通わせて、一気にお金がなくなったという声も。



「子どもは絶対私立と決め、そのための準備もいろいろしてきました。でも、実際子どもが私立に通い始めると一気に家計が火の車に。ボーナスは学費と住宅ローンに消え、貯金もままなりません……」(Yさん・42歳)



「子どもを私立に入れたら、まわりはもっと高給取りなおうちばっかり。下にみられないように身なりに気をつけていますが、お金をかけすぎている自覚はあります。入学式で着たスーツは高かったのに、写真に残ってしまったからそれっきり着られず……」(Rさん・39歳)



■思い描くゆとりの生活を送るには



たとえ年収が1,000万円あったとしても、きちんとした節約と身の丈にあった生活が大切です。どの世帯にも共通する、「ゆとりの生活」を送るためのマインドについても伺ってみました。



「都心のタワーマンションに住むのがステータスだと思っていましたが、子どもが成長するにつれどんどん余裕がなくなり……今は郊外の古いマンションです。でも、前の家より広くて家賃は下がったので、生活の満足感は上がっています。見栄をはる必要がなくなって、気も楽になりました」(Iさん・38歳)



「人の目を気にして、いい車・いい家・いい暮らしにこだわらないこと。家計簿はしっかりつけて、支出を把握する。独身時代はいつもその場限りで散財し、貯金していませんでした。だから家庭を持ってからはきっちりと締めるところは締めています」(Aさん・44歳)



1,000万円の収入があっても、家賃や住宅ローンなどの固定費をかけすぎていると、あっという間に余裕はなくなってしまいます。

ゆとりのある生活を送るためには、やはり収支の把握や節約など、基本的なところを大切にしないといけませんね。



■年収1,000万円という響きにとらわれないように



「1,000万円プレーヤー」など、高所得の目安としてもあげられやすい年収1,000万円。しかし、身の丈にあった生活をしていないと、いくら年収が高くても貯蓄はままなりません。年収の高さや数字だけに惑わされず、家族構成や教育環境など、自分たちに合った暮らしをきちんと見つめたいものですね。



【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。



【参照】
国税庁「民間給与実態統計調査( https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2018/pdf/000.pdf )」
内閣府「児童手当制度のご案内( https://www8.cao.go.jp/shoushi/jidouteate/pdf/leaf_teate.pdf )」
文部科学省「私立高校授業料の実質無料化制度( https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/20200715-mxt_kouhou02_1.pdf )」



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