9月にアメリカで発売され話題となっている『The Psychology of money(仮題:お金の心理学)』( https://amzn.to/34giMdt )という本についてウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が取り上げていました(※1)( https://jp.wsj.com/articles/SB10248870856734043321204586559901867656200 )。



ベンチャーキャピタリストで行動ファイナンスのコラム二ストとして知られる同書の著者、モーガン・ハウゼル氏は「投資家に対し、お金と富が何のためにあるのかを考えるよう勧めている」と述べています。



今回は金持ちとは?裕福とは?ハウゼル氏の意見を参考に考えてみます。



■金持ちが裕福とはかぎらない



WSJによると、ハウゼル氏は「多くの金持ちは裕福ではない」と主張しているとのことです。なぜなら、お金持ちは、どれだけお金を持っているか他人に見せるため「大金をつかわなければならないと感じている」からだと。



またハウゼル氏は「『金持ちであること』(現在の収入が多いこと)と『裕福であること』(金を使わないことを選択する自由があること)を明確に区別している」といいます。



裕福であるということは、他人にどう見られるかはあまり構わない。それよりも、自分の時間の使い方をコントロールすることにお金を使えることだと、WSJはまとめています。



同書には興味深い極端な例が挙げられています。



  • ある男性は学歴もなく低収入の職に就いているが、節約しながら株に投資し、その株を長い間持ち続け、92歳で亡くなった時には600万ドル以上の財産を残しました。そして慈善団体に寄付したそうです。 

一方、



  • 金貨を石の代わりに太平洋に投げ、水切りをして遊んでは金持ちぶりを周りに見せつけていたテクノロジー業界で成功したある富豪は、結局破産したのだそうです。

ここでハウゼル氏が言いたいことは、いくら今、高収入だからといっても、他人に見せびらかすために大金を無意味に使っていたら一時的な金持ちにしかなれない。逆に低収入でも、身の丈をわきまえ、辛抱強く少額の投資や貯蓄をしていれば、時間とともに富は築けるのだということなのでしょう。



■身の丈をわきまえる



「身の丈をわきまえる」とは当たり前のようですが、自分の身の丈を受け入れるのは案外難しいことです。



都内に住むある知人は、旦那さんが小さな会社を経営していて「社長」だということをとても意識し、「子どもにいい教育環境を」と、都内の高級住宅地の賃貸マンションに住んでいます。



別の知人は大手企業とはいえサラリーマンの旦那さんと、都内下町に手頃な物件を見つけ一軒家を購入しました。



歳の差はあるけれども、結局、子どもさん達は同レベルの大学に入りました。高級住宅地の方の息子さんは学期留学をする同級生が多い中、会社の経営状況も良くなかったことと、貯蓄に余裕がないことから留学は諦めさせたといいます。一方、下町の方は娘さんに1年間留学させてあげたということです。その留学のおかけで、娘さんは自分のやりたい仕事に就けたといいます。



高級住宅地では物価も高いですし、子どもを私立中学に行かせる家庭も多く、お付き合いもそれなりに高くつくようです。下町のほうが比較的物価も安いです。公立の中学校に通わせ上手に節約を続け、結局、子どもが本当にやりたい事にお金を使えることになったのです。



■エゴか未来への投資か



ハウゼル氏は、CNBCに寄稿した記事(※2)( https://www.cnbc.com/2020/07/06/follow-5-money-rules-while-still-young-or-regret-later-in-life-finance-expert.html?__source=facebook%7Cmakeit )のなかでも「後で後悔しないように」と、特に若い世代に向けた富を築くコツ、「裕福」になるアドバイスをしています。



それによれば、ハウゼル氏は、必要以上にお金を使うのはエゴと成り上がりの結果だといいます。

貯蓄(投資)するとは、現在の地位を誇張するよりも、将来のためにより意義のあることにお金を使うことだ、と説明しています。



まさに前述の例でみたように、身の丈以上の「高級住宅地」というブランドを選んだ親のエゴが、最終的には子どもに留学を諦めさせることにつながったのではないでしょうか。



またハウゼル氏は、無名でも、手頃で効率の良いサービス(やモノ)を選ぶことは賢い選択だともいいます。あのビル・ゲイツ氏も、機能性を重視した数千円の腕時計をつけていると話題になりました(※3)( https://www.businessinsider.jp/post-202351 )。



ウォーレン・バフェット氏も、彼の莫大な資産からみるとかなり質素な家に長年住み続けていますし、何件も別荘を持つようなことはしていません。スーツも無名の中国製だと、以前どこかのインタビューで話していました。それで十分満足しているからでしょう。



ゲイツ氏もバフェット氏ももはや他人に富を見せびらかす必要などありませんが、彼らは元々、他人にどう見られるかなどには興味はないのです。根っからの「裕福体質」なのでしょう。



特にバフェット氏は子どもの頃から、お金を使うことより働いては投資や貯金をし、時間がお金を増やしていくことの楽しみを知っていたのです。



どうお金を使うかは個人の価値観によるものでしょう。今の一時的なエゴを満たすか。

時間をかけて富を増やし将来より多くの選択肢をもって裕福になるか。選択するのはいつも自分です。



参考

(※1)『「金持ち」と「裕福」の違い 成功する投資哲学とは』( https://jp.wsj.com/articles/SB10248870856734043321204586559901867656200 )WSJ
(※2)CNBC“Follow these 5 money rules while you’re still young—or ‘regret it later in life,’ says finance expert”( https://www.cnbc.com/2020/07/06/follow-5-money-rules-while-still-young-or-regret-later-in-life-finance-expert.html?__source=facebook%7Cmakeit )
(※3)「7600円から300万円まで、世界的企業のCEOの時計を拝見」( https://www.businessinsider.jp/post-202351 )BUSINESS INSIDER



参考図書

( https://www.amazon.co.jp/gp/product/B084HJSJJ2/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=B084HJSJJ2&linkCode=as2&tag=navipla-22&linkId=6c9af26c7ebddeec6e2e854913a25bf2 )



Morgan Housel ”The Psychology of Money: Timeless lessons on wealth, greed, and happiness”( https://amzn.to/34giMdt ) Harriman House(2020/9/8)



編集部おすすめ