■ブラックフライデーは米国のクリスマス商戦皮切りの大イベント



今年の「ブラックフライデー(Black Friday)」は11月27日(金)です。米国では11月第4金曜日(最終週末の場合が多い)に小売店などで大規模な特売セールが実施されます。

これがクリスマス商戦の幕開けを告げるイベントとして定着し、多くの消費者が小売店へ殺到する光景が恒例となっています。



いや、後述しますが、正確に言うならば「恒例となっていました」という過去形かもしれません。ただ、ブラックフライデーでクリスマス商戦の訪れを感じる消費者は依然として多いようです。



日本では似たようなシーンとして、年始に福袋を買うために百貨店に行列を作りますが、米国のブラックフライデーはその何倍もの規模になります。また、ブラックフライデーは感謝祭(Thanksgiving Day)の祝日の翌日に当たり、人々の消費マインドも通常より膨らむと言われています。



■ブラックフライデーに小売店の収支が一気に改善する?



なお、このブラックフライデーの「ブラック」ですが、これは”暗黒”を意味するものではありません。



金融市場では、「ブラックマンデー」(1987年10月19日)や「ブラックサースデー」(1929年10月24日)に代表されるように、歴史的な株価暴落を指す“暗黒”の意味で用いられています。また、「ブラック企業」でもお馴染みの通り、ネガティブな意味で使用されるケースが多く見られます。



しかし、ブラックフライデーの「ブラック」は小売店の収支が一気に黒字化することを意味しています。決してそれまで赤字続きというわけではありませんが、売上が大きく伸びるこの日を契機に、その後の利益が急増することは各社の決算資料などで示されています。



■イオンが火付け役となった日本のブラックフライデー



さて、米国では国民的なイベントになったにもかかわらず、日本ではブラックフライデーが浸透しませんでした。いや、実施しなかったという方が正しいでしょう。



明確な理由は不明ですが、第4金曜日とはいえ11月はまだクリスマス商戦には早いと判断されたのかもしれません(注:最近は早まっており、11月初旬から実施するケースも珍しくなくなりました)。また、11月末はボーナス支給前の企業が圧倒的に多いことも理由として挙げられます。



そんなブラックフライデーですが、日本でも徐々に根付こうとする気配が見られます。大きな契機は、4年前の2016年にイオンが初の試みとして導入した「日本版ブラックフライデー」でした。その実施規模は、イオングループの約20,500店舗(当時)でブラックフライデーを含む週末3日間にセールを行うなど、かなり力の入った取り組みでした。



また、翌2017年はブラックフライデーの前日(木曜日)に「ブラックフライデー フライングセールス」と称した“前夜祭”まで開催する入れ込み様で、その後も毎年、力を入れたイベントを開催しています。



イオン以外の小売企業を見ても、しまむらを始めとして、ブラックフライデーを特売セールの“ネタ”に使う企業は続々と増えています。また、ユニクロやGUもブラックフライデーという呼称こそ使用しないものの、この時期に「誕生感謝祭」と銘打った特売を行うのが恒例になってきました。



■本家の米国では完全オンライン化目前



一方、本家の米国では、最近はブラックフライデー商戦が縮小気味となっています。原因は、アマゾン等のネット販売の拡大により、実店舗(リアル店舗)の閉鎖が相次いでいるからです。



記憶に新しいところでは、有名百貨店「シアーズ」を展開していた流通大手のシアーズ・ホールディングスが2018年に破産法を申請し、その後も多くの小売企業が倒産や廃業するなど小売業界の変革スピードは加速しています。



さらに、今年のコロナ禍で、ブラックフライデーのオンライン化が一気に加速する可能性が高まりました。

実際、米国では小売店に殺到するブラックフライデー恒例のシーンは年々少なくなっているようですが、早ければ来年2021年には”殺到シーン”が消滅しても不思議ではありません。それくらい変革のスピードは速くなっています。



■日本はオンライン化で周回遅れ?



日本でも、楽天、ヤフー、アマゾンなどのネット企業がブラックフライデーセールを実施します。しかしながら、イオンを始めとする各社が「来店時の注意」として密を回避するよう促していることを見ても、実店舗に足を運ぶ人がまだ多数派と考えられます。



日本でもコロナ禍によるオンライン化が進むと思われますが、まだ米国の変革スピードには付いていけず、周回遅れとなる可能性もあります。逆に言うと、今回のコロナ禍を受け、ブラックフライデーを始めとした大掛かりなセールのオンライン化を急加速させることが可能と言えます。



もちろん、オンライン化に伴う余剰人員や余剰店舗の増加といった“痛み”や“副作用”は避けて通れませんが、いつかは対応しなければならない課題でもあります。



日本の小売企業が、こうした痛みを極力避けようとするのは理解できますが、その分だけ変革スピードに乗り遅れているのは否めないでしょう。こうした点にも注意しながら、コロナ禍の中で迎える今年のブラックフライデーに注目しましょう。



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