新型コロナウイルスの影響で、経済的な不安が高まった2020年。一方で、免疫力向上や自粛期間中の筋トレなど、健康にも今まで以上の関心が集まりました。

人生100年時代、健康な体があれば働き続けることで生涯年収をアップさせられるというのも、よく言われていることです。



それでは、お金と健康を同時に手に入れるには、具体的にどういったことが必要なのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの森文子さんに詳しくお話を伺いました。



■老後資金2,000万円よりも怖い!? 「生涯医療費」の問題



森さんは資産形成のための先取り貯金のように、健康なうちからコツコツと健康維持に取り組む“健康貯金”の大切さを説きます。それは、老後資金2,000万円よりも深刻かもしれない「生涯医療費」の問題があるから。



「生涯医療費」とは生まれてから亡くなるまでの医療費のことを指し、厚生労働省が発表した「生涯医療費(平成29年度)」によると、平均の生涯医療費は男性が2,622万円、女性が2,831万円※。また、その生涯医療費の半分が70歳以降に使われているのが明らかになっていることから、いかに若いうちから健康を維持し、老後も元気で過ごすことで医療費をかけずに済むかがわかります。



※現在の医療保険制度における医療費の自己負担は、年齢や収入などの条件により1~3割程度ですので、実際の自己負担額は上記より低くなります。



厚生労働省「令和2年版厚生労働白書」を見ても、日本人の死因の約半分が生活習慣病であることが指摘されています。森さんは「若いうちからの定期的な健康診断受診や規則正しい生活、良質な睡眠と食事など、基本的な健康づくりが将来の資産形成における大きな投資にもなります」と語ります。



■医療保険に加入するなら、若くて健康なうちに安い掛け捨て型を



また、もしもの病気やケガのための医療保険をどのくらいかけておくべきか、というのも気になる問題。森さんによると医療保険の加入ポイントは、「健康だから保険はいらない、あるいは不健康だから保険は必要…ではなく、もしもの時の医療費を自分で出せるのかどうか」だそう。



「高額療養費制度の自己負担限度額は、多くの方が1か月あたり8万円程度になります。この8万円をお財布から捻出できないかもしれないのであれば、医療保険の加入を検討してみるといいでしょう。医療保険は健康で保険料が安いうちに終身タイプで入っておき、掛け捨て型で十分。



医療保険は保障なので、貯蓄性を求める必要はありません。保障は保障、貯蓄は貯蓄でそれぞれに契約することが問題解決のポイントです。また、生命保険とセットになっている医療保険もありますが、医療は医療、死亡は死亡と別になっていると、日々新しい商品が販売される保険を見直す時にすごく楽ですよ」(森さん)



また、健康グッズやジムなど健康のためには毎月どのくらいのお金を使うべきなのでしょうか。総務省が発表した「家計調査報告2020年(令和2年)10月分」によると、二人以上世帯で保健医療にかけるお金は平均で月額15,822円でした。内訳は医薬品が2,642円、サプリなどの健康保持用摂取品が1,133円、保健医療用品器具が3,030円、マッサージや人間ドックの受診料など保健医療サービスが9,017円となっています。



こうした項目に毎月どのくらいお金をかけられるかは収入によっても異なりますが、日本人の平均額を知ることでだいたいの目安としてみるのもいいかもしれません。



■お金づくりと健康づくりに共通する4つのステップ



基本的な生活習慣や、もしものための医療保険など、将来の健康のための投資はさまざまあります。その中で「今の自分は何をしたらいいのだろうか」と悩んだ時に森さんが勧めるのが、お金づくりと健康づくりに共通する“実践的な4ステップ”です。それは、①現状把握、②目標設定、③行動、④習慣化。



「現状把握のためにはまず、やってみたいことや達成したいことなどの夢や目標を具体的に想像します。3年後までに貯金を200万円増やす、35歳までにマイホームを買う、など具体的であればあるほどいいでしょう。そこで目標のために生じている現在の問題を細分化するため、事実を明確にします。お金作りならキャッシュフロー表の作成や過去1年間の収入、支出、貯蓄の洗い出し。健康づくりなら、健康診断や体力測定による体の数値化です。そして最終目標に近づく方法を考え、行動に結びつく具体的な数値目標を立てます。



次に、行動するために現状の問題を分析します。お金なら稼ぎ方、使い方、貯め方、殖やし方の問題を、健康であれば運動、食事、睡眠、ストレスの問題を抽出。ネックとなっている問題がわかったら、挫折せず方向転換してもいいように複数の対策を講じた上で行動に移していきます。その行動を習慣化することで、最終目標に近づくことができるでしょう」(森さん)



森さんはお金づくりも健康づくりも「やる気だけでは継続しない」と断言。先取り貯金や家族や友人と一緒に行うウォーキング、スマホアプリなどで定期的にリマインドするなど、継続しやすい仕組み作りを強調します。



また、健康診断だけでなく、サントリーの「全国一斉健康タイプ判定」や明治「食の栄養バランスチェック」などさまざまな企業が提供している健康促進サービスやアプリを利用して自分の体を客観視してみるのも最初のステップとしては手軽でいいそうです。



生涯医療費の半分は70歳以降にかかる!「お金と健康の両立」をFPが解説

ファイナンシャルプランナーの森文子さん



最後に森さんは、健康維持に取り組むモチベーションアップのためには今のうちから将来の楽しいイベントをたくさん持っておくこともお勧めだとアドバイスしてくれました。



森さん曰く、「ご夫婦であれば子どもが巣立った後の旅行、子どもや孫の晴れの式を想像するといいのではないでしょうか。子育てで大変な毎日でも、たまにご夫婦で20年後、30年後の旅行の話をすることで『倒れていられない、元気でいなくちゃ』と健康維持のためのやる気が出てくると思います」とのことです。



「健康でい続けることでお金が増える」と考えると、毎日の健康づくりの大切さが身に染みてわかります。みなさんも2021年はお金への投資と同じくらい重要な健康への投資に本気で取り組んでみてはいかがでしょうか。



【参考資料】

  • 「生涯医療費(平成29年度)( https://www.mhlw.go.jp/content/shougai_h29.pdf )」(厚生労働省)
  • 「令和2年版厚生労働白書( https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/19/dl/all.pdf )」(厚生労働省)
  • 「家計調査報告2020年(令和2年)10月分( https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr.pdf )」(総務省)
  • 「全国一斉健康タイプ判定( https://www.suntory.co.jp/softdrink/kenkoucha/ )」(サントリー食品インターナショナル)
  • 「食の栄養バランスチェック( https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/exp/diagnosis/check.html )」(株式会社明治)
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