先日、初の施行となった大学入学共通テストも終了し、大学受験は最後のヤマ場を迎えています。既に私立大学の入試が始まっており、その後は国公立大学の2次試験が待っています。



今回はコロナ禍の受験で体調管理など難しい点が多々あるかと思いますが、こうした厳しい条件は皆一緒。受験生の皆さん、最後の力を振り絞って頑張ってほしいところです。



さて、現実問題として、おめでたい合格後に待ち受けるのが授業料などの経済的負担です。特に初年度は入学金や施設設備費などの費用に加え、私立大学では寄付金の納付もあります。



多くの場合、家計への負担は決して小さくありませんが、昨今における大学の授業料はどうなっているのでしょうか。



■9年連続で過去最高を更新した私立大学の平均授業料



文部科学省が昨年(2020年)発表した調査によれば、2019年度(令和元年度)入学の私立大学の平均授業料は91万1,716円(対前年比+0.8%増)となり、9年連続で過去最高を更新しました。



また、入学金24万8,813円や施設設備費18万194円など諸費用を合わせた初年度納入額は134万723円(同+0.4%増)でした。これに、表向きは“任意”という寄付金を加えると、さらに数十万円(学部によっては百万円超も)は増えると考えられます。



なお、この授業料等の金額は全学部平均です。学部によって大きな差がありますが、後述する国立大学との比較の関係上、この平均値を用います。ちなみに、2019年度の私立大学の授業料(約91万2千円)を少し細分化すると、文系が約79万4千円、理系が約111万7千円、医歯科系が約286万8千円、家政・芸術その他が約96万円となっています。



いずれにせよ、受験勉強に打ち込んできた新入生が支払える金額でないことは明らかであり、一時的かどうかは別として、親(家計)の経済負担が大きくなることは間違いありません。



■45年前の年間授業料の平均額は?



ここで、初年度特有の費用(入学金など)がなくなった後の年間授業料(平均額)だけを見てみましょう。私立大学は前掲したように91万2千円ですが、国立大学は前年と変わらずの53万5千円でした。ちなみに、私立大学、国立大学の順序で授業料の推移を見てみると、以下のようになります。



  • 1975年度:18万2千円、 3万6千円
  • 1980年度:35万5千円、18万0千円
  • 1985年度:47万5千円、25万2千円
  • 1990年度:61万5千円、33万9千円
  • 1995年度:72万8千円、44万7千円
  • 2000年度:78万9千円、47万8千円
  • 2005年度:83万0千円、53万5千円
  • 2010年度:85万8千円、53万5千円
  • 2015年度:86万8千円、53万5千円
  • 2016年度:87万7千円、53万5千円
  • 2017年度:90万0千円、53万5千円
  • 2018年度:90万4千円、53万5千円
  • 2019年度:91万2千円、53万5千円

■国立大学授業料の”格安感”はもうない?



物価変動率などを考慮する必要があるので、30~40年前と単純比較するのは適切ではありませんが、授業料がほぼ一貫して上昇していることは確かです。この授業料を4年間支払うことになる家計の経済的負担は大変厳しいものがあるでしょう。



まず注目したいのが国立大学の授業料です。さすがに私立大学よりは安いものの、一昔前のような“格安感”は消失しています。



これは、国の財政難を受けて財務省(以前は大蔵省)が値上げに踏み切ったことが要因と言われていますが、単純な上昇率だけを見れば、私立大学を上回っています。国立大学に入れば経済的負担が小さいというのは、現在では、私立大学との比較相対的な話と言っていいでしょう。



■国立大学の授業料は15年間据え置きだが



国立大学でもう一つ注目したいのが、近年の授業料の据え置きです。



これは、2005年度から国立大学法人化制度が始まり、各国立大学が、国の定める標準額を基準にして自由に決定することができるようになりました。したがって、現在の53万5千円は国が定めた標準額なのですが、実際にはほとんどの国立大学がこの標準額を授業料にしているようです。



53万5千円が高いか安いかは議論があるとは思いますが、15年間も値上げしていないという事実は見逃せません。



また、国立大学の授業料据え置きは、私立大学にも少なからず影響を与えていると見られます。2005年度に始まった国立大学法人化まで、国立大学の授業料値上げは“国私間の格差縮小”となって、私立大学側に追い風だったと考えられます。



しかし、その後は少子化による受験者数の減少が顕著となり、私立大学の重要な収入源の1つである“入試受験料”が大きく減っています。そのため、“本当は授業料をもっと値上げしたいけど、あまり値上げできない”という私立大学の苦悩を見て取ることができます。



国立大学の授業料据え置きが、私立大学の経営を圧迫している一因となっており、私立大学は国立大学の授業料値上げを待ち望んでいると見るのは、筆者の思い過ごしなのでしょうか?



■“そこまでして大学に行く必要があるのか?”を真剣に議論する時期に



実際、財務省と文科省の判断一つで、国立大学の授業料が再び値上げになる可能性は十分あるでしょう。しかし、その時に、私立大学が大幅な授業料値上げに踏み切れば、最終的には家計への負担増に結びつくのは明白です。多くの家計で実質的な収入が減り続ける中、負担増に耐え切れない可能性も高いと思われます。



仮に経済的負担増で大学進学者の減少が顕著となれば、私立大学を中心に経営困難に陥る大学が出てくるでしょう。私立大学にとっては、授業料を上げるのも地獄、下げる(上げられない)も地獄なのかもしれません。



一方で、家計に大きな経済負担をかけてまで大学に行く必要があるのか?という議論があることも事実です。



これは各家計での問題になりますが、本来ならば、大学受験の前に将来的な、少なくとも、向こう4年間の収支状況をシミュレーションが必要です。

そういう“事前準備”なしに大学へ進学すると、授業料支払いが困難になるという状況に陥ることになりかねません。



そうは言っても、もう今年の受験シーズンは最後のヤマ場。合格の知らせが届いて喜びに沸いた後、受験生は今一度、こうした現実に向き合ってほしいと思います。



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