4月に入り、新しい会社に就職した人もいらっしゃるのではないでしょうか。
その時に出てくるのが、「年金」の話。
日本の公的年金は国民年金と厚生年金の2階建てとなっています。
この年金について、今回は「みんなの年金の積立金を、年収いくらで誰が運用しているのか」を紹介します。
■1. 国民年金・厚生年金の仕組み
公的年金は、現役世代(今働いている世代)が支払った保険料を、高齢者などの年金受給者向けに分配する仕組みとなっています。そのため、皆さんが受給者となった際は、その時の働き手が年金の資金源を作ることになります。
また、保険料以外にも、年金積立金や税金などが年金の財源に充てられます。
公的年金は2種類の年金で構成されています。それが、国民年金と厚生年金です。国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の全員に加入する義務があります。保険料は一律で、納付した期間に応じて将来もらえる年金の額が決まります。
一方で厚生年金は、公務員やサラリーマンなどが加入できるもので、支払う保険料はその組織から受け取る報酬に応じて変わります。また、将来もらえる年金額は、加入期間や納付額に応じて変わります。
報酬が高ければ納付額も増えますが、将来受け取る際にその分多くもらえるということになります。
なお、下の図のように国民年金に上乗せする形で厚生年金がある仕組みになっています。
この構造を俗に「2階建て構造」などと呼びます。
出所:日本年金機構
■2. 国民年金・厚生年金の積立金の運用者
年金の積立金は、誰が運用しているのでしょうか。
答えは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。
■2.1 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)
GPIFは厚生労働省所管の独立行政法人で、厚生労働大臣から寄託を受け、厚生年金と国民年金の積立金の管理・運用を行っています。
年金積立金の運用は、厚生労働大臣が定めた「中期目標」において、「長期的に、積立金の実質的な運用利回り※として1.7%を最低限のリスクで確保すること」が要請されています。
※積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの
ちなみに資産運用の世界では、運用目標に賃金上昇率が使われることは一般的ではないです。
ではなぜ、年金積立金の運用目標は賃金上昇率をもとにしているのでしょうか。
それは、公的年金の保険料収入と年金給付が、賃金水準の変化に応じて変動するからです。
そして、このような収支構造の中で、年金積立金の運用が年金財政の安定に貢献するためには、長期的にみて賃金上昇率を上回る運用収益を確保する必要があるからです。
■3. 国民年金・厚生年金の積立金の運用者の年収
では、GPIFの人の年収はどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省が発表した「独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与水準の公表について(令和2年度)」によると、GPIFの役職別の年収は以下のようになります。
■3.1 GPIFの令和2年度の役職別年収
- 理事長:2837万円
- 理事:1616万~2749万円
- 経営委員:607万~1869万円
- 常勤職員:880万円
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の役員の報酬等の支給状況
出所:厚生労働省 年金積立金管理運用独立行政法人資料一覧「独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与水準の公表について(令和2年度)」
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の職員給与の支給状況
出所:厚生労働省 年金積立金管理運用独立行政法人資料一覧「独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与水準の公表について(令和2年度)」
トップの年収は3000万円近くあるほか、常勤職員の年収も約900万円と高めです。
なお、報酬についてGPIFは「高度で専門的な人材確保ができるよう、民間の資産運用業界(日系中央値~外資中央値)の実態を踏まえた市場水準をもとに設定した」と説明しています。
国民の大切な年金を運用する以上、有能な人材を雇うために高い報酬を支払うのは、当然かもしれません。
■4. 日本人の平均年収
ちなみに、日本人の平均年収はいくらなのでしょうか。
国税庁「令和2年分 民間給与実態調査統計」によると、日本の給与所得者の平均年収(平均給料・手当+平均賞与)は下記の通りです。
■4.1 【男女計】給与階級別給与所得者数・構成比
- 100万円以下:8.4%
- 100万~200万円以下:13.8%
- 200万円超 300万円以下:15.5%
- 300万円超 400万円以下:17.4%
- 400万円超 500万円以下:14.6%
- 500万円超 600万円以下:10.2%
- 600万円超 700万円以下:6.5%
- 700万円超 800万円以下:4.4%
- 800万円超 900万円以下:2.8%
- 900万円超 1000万円以下:1.8%
- 1000万円超 1500万円以下:3.4%
- 1500万円超 2000万円以下:0.7%
- 2000万円超 2500万円以下:0.2%
- 2500万円超:0.3%
- 平均:433万円
日本人の平均年収は、433万円です。
また、給与400万円代以下の層で全体の約7割を占めていることもわかります。
一方、多くの方が目指す「年収1000万円」以上の方は、わずか4.6%です。
■5. まとめにかえて
いかがだったでしょうか。
年金については皆さん共通の関心ごとかと思いますが、「誰が、年収いくらで積立金を運用しているのか」については、知らなかった人もいらっしゃるのではないでしょうか。
こうした年金の豆知識については、今後もご紹介していきます。
■参考資料
- 年金積立金管理運用独立行政法人( https://www.gpif.go.jp/ )
- 総務省「独立行政法人の役職員の給与水準等の公表(令和2年度)」( https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/dokuritu/02gyokan03_04000109.html )
- 厚生労働省 年金積立金管理運用独立行政法人資料一覧「独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与水準の公表について(令和2年度)」( https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shokanhoujin/dokuritsu/shiryou14/dl/r02.pdf )
- YouTube GPIF channel( https://www.youtube.com/channel/UCWpjyPh1kw0VyfIPpcVMIXw )
- 日本年金機構( https://www.nenkin.go.jp/ )

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