■投資FIREのメリットとリスクを考える
近年盛り上がりをみせるFIREブーム。
経済的自立と早期リタイアを意味する「FIRE」(Financial Independence, Retire Earlyの略)に、憧れを抱く方も多いのではないでしょうか。
FIREを行うための不労所得作りとして代表的なのが不動産や株式、投資信託、債券などです。
FIREを行うにはまとまった資金が必要であり、いずれもリスクがあるため知識や経験が必要と言えます。
そんなFIREブームですが、たとえば株式を保有していて株価が下落すれば当然元手となる資産が減り、回復するまでには数年間という年月がかかる可能性もあります。
いずれの手段であれ、基本的には長期的に持続・成長すると思える資産を保有することを基本としますが、そうならなかった場合にはFIREの前提自体が崩れてしまうこともあるでしょう。
ブームにのるのではなく、何かをはじめるにはそのリスクや注意点と向き合うことが重要です。
今回は投資FIREの落とし穴と、そもそも早期リタイアが幸せなのかについて考えていきましょう。
■「投資FIRE」の落とし穴。リスクは知るだけでなく入り込む
株であれ、債券であれ、不動産であれ、リスクはあるもの。
たとえば金融商品だけでも、金融庁によれば「株価変動リスク」「信用リスク」「流動性リスク」「金利変動リスク」「為替変動リスク」があります。
出典:金融庁「投資の基本」
FIREを考えている方は、リスクについて学び想定している方が多いと思いますが、実際にどこまで考えられているでしょうか。
今回のコロナ禍が良い例ですが、誰にとっても一寸先は闇。感染症により生活様式がここまで変わるとは誰しも予想していなかったように、想定外のことは10年、20年という年月で見れば十分起こり得るでしょう。
「ずっと」持続・成長すると思える資産でも、想定通りにはいかない可能性もあります。
その場合に自分はどんな心理状態になり、どのような判断を取るかまで考えておきたいところ。
たとえば株価が下落した場合、数年間株価が低迷し続けても自分は保有し続けられるのか。保有している間、どれくらいのストレスを抱えるのか。保有し続けるか、売却するかの判断を自分は的確に下せるのか。万が一売却した場合には、その後の生活をどうするのか。
リスクは学ぶだけでなく、もう一歩入り込み、実際に起ったことを想定して検討する必要があるでしょう。
■不労所得だけじゃない「働くリスク」もある
FIREだけでなく、どんなものでもリスクはあります。FIREは「不労所得」をもとにおこないますが、「勤労所得」、つまり仕事にもリスクはあるでしょう。
FIREがブームとなる一方で、現代は60代以降も働く方が多く、厚生労働省「令和3年版高齢社会白書」によれば60代前半の約7割、60代後半の約半数、70代前半の約3割が働いています。
出典:厚生労働省「令和3年版高齢社会白書」
一方で、厚生労働省の資料によれば健康寿命は男性で72.68歳、女性で75.38歳です。
これは平均であり、実際には個人差が大きく、いつ病気やケガをするかは誰にも分かりません。
働くことは普通のこと、だからリスクがないと思いがちですが、実際には「いつ働けなくなるかわからない」というリスクは誰しも抱えています。
それは個人の問題だけでなく、今回のコロナ禍のように雇用自体に影響が出たり、時代が変わりなくなる職種があったりする場合もあるでしょう。
働くことについても、一歩踏み込んでリスクを想定する必要があります。長い目で見たキャリアプランを立てることや、万が一働けなくなった場合の備えをしておくのも一つでしょう。
勤労所得も不労所得もリスクがありますが、リスクに入り込んで対策を考えたいところです。
■そもそも早期リタイアはほんとうに幸せか
FIREブームが起きたことにより、経済的自立や早期リタイアに夢を膨らませがちですが、そもそも早期リタイアは本当に幸せなことでしょうか。
少し前によく言われたことですが、特に男性は仕事を辞めた後にやることがない、話す人がいないというような状態になる場合もあります。
早期リタイア後の生活を本当に楽しめるかは個人差が大きく、「そこまで自分は望んでいなかった」ケースもあるでしょう。
勤労所得も不労所得もリスクはありますが、メリットもあります。
たとえば仕事をすることで毎月収入が得られることは、安心感が大きいでしょう。FIREをすればキャリアが途絶えますが、仕事を続ければキャリアが持続しており、万が一の時でも転職もできる可能性が上がるという面をもちあわせます。
また、厚生年金に加入し続けることにより、老齢年金や障害年金、遺族年金が手厚くなるメリットも考えられるでしょう。
収入やキャリア面だけでなく、仕事自体が楽しみや生きがいとなっている方にとっては、むしろ仕事を続けたほうが心身の健康にも良いと言えます。
FIREをして想定外のことが起きた場合には、再度働く可能性もあります。FIREをするにしろ、しないにしろ、仕事は生活の基盤となります。
FIREブームを機に、まずは自身の仕事と向き合うところからはじめたいもの。仕事に不満がある場合には、自分に合った長く続けられそうな仕事を探してみるのもいいでしょう。
■両者でリスクを補うのも有効
仕事のメリットをみてきましたが、不労所得にもメリットはあります。
知識をつけ、リスクをきちんと学んだ上で運用をおこなえば、資産を増やすことも可能です。
資産運用に定年はないですし、働けなくなっても運用は続けられる場合もあり、勤労所得のリスクを補ってくれます。
勤労所得と不労所得は、お互いのリスクを補い合うという面ももっています。
最近ではプチFIREやサイドFIREといった考え方もありますが、両方の手段をとることでリスクを補い合うのも有効と言えそうですね。
いずれにせよ、大切なのは自分に合った仕事や不労所得を選択し、想定外のことが起きた場合についても考えておくことではないでしょうか。
■参考資料
- 金融庁「投資の基本」( https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/knowledge/basic/index.html )
- 厚生労働省「令和3年版高齢社会白書」第2節 高齢期の暮らしの動向 1 就業・所得( https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/zenbun/pdf/1s2s_01.pdf )
- 厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」( https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000872952.pdf )

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