新型コロナウイルスの新規感染者数が増加し続ける中、いよいよ夏季休暇が迫ってきました。



子どもが手を離れつつある50歳代は、レジャー費に対する使い道も変化しているのではないでしょうか。



「そろそろ自分のためにお金を使いたい」そう考えている方もいるかもしれませんね。

50歳代の多くは子どもが独立しはじめ、一方で老後生活が現実味を帯びてきます。老後資金を始めとした貯蓄は皆さん共通の関心ごとかと思いますが、貯蓄に関する統計データなどはあまり目にする機会がありません。

そこで今回は、日本の50歳代の貯蓄のデータを紹介したうえで、「1000万円の貯蓄がある人は老後安心できるのか」についても考察していきます。



■日本の50歳代世帯、貯蓄の「実情」とは



まずは、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年調査結果」をもとに、50歳代世帯の貯蓄の平均を見ていきましょう。



円グラフで見る「50歳代」の残酷な貯蓄格差。定年前に1000万円あれば安心なのか

出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)各種分類別データ」をもとにLIMO編集部作成



■50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額(金融資産を保有しない世帯を含む)の平均値・中央値



50歳代のうち、二人以上世帯の「金融資産保有額」の平均値・中央値は以下のようになります。



  • 平均1386万円
  • 中央値400万円

平均値と中央値では大きな差があることがわかります。

平均値とは、みなさんご存知のとおりすべての値を足し合わせて対象の数で割った数字です。

一方、中央値とはデータを数字の大小順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る数値です。

平均値とここまで乖離している状況から見るに、それだけ上位の富裕層の金額が大きく、平均が吊り上げられていることがわかります。



■50歳代・二人以上世帯の金融資産保有額分布(金融資産を保有しない世帯を含む)の金額別の各割合



もうひとつ「貯蓄の実態」をつかむための方法として、金額ごとの人数分布も参考となります。画像の「円グラフ」とともに御覧ください。



  • 金融資産非保有:23.2%
  • 100万円未満:8.9%
  • 100~200万円未満:6.5%
  • 200~300万円未満:4.5%
  • 300~400万円未満:4.0%
  • 400~500万円未満:3.4%
  • 500~700万円未満:6.4%
  • 700~1000万円未満:6.3%
  • 1000~1500万円未満:8.0%
  • 1500~2000万円未満:5.7%
  • 2000~3000万円未満:6.6%
  • 3000万円以上:12.9%
  • 未回答:3.5%

いかがでしょうか。



200万円未満の世帯の割合は38.6%、2000万円以上保有する世帯は19.5%です。退職金を手にする前の時点で、すでに差が開いていることがわかります。



■50歳代世帯の負債を考慮した純貯蓄額とは



50歳代の世帯では、住宅ローンなどの負債が残っているケースもあるでしょう。そこで、今度は50歳代世帯の負債のデータをまとめてみました。



■50歳代・二人以上世帯の借入額(借入金有無回答世帯)の平均値・中央値



50歳代世帯の負債の平均値・中央値は次の通りです。



  • 平均値:1421万円
  • 中央値:1000万円

こちらも平均値が中央値を上回っています。50歳代ではおよそ1000万円の負債(主に住宅ローンの残債)を抱えていることが多く、一定数がそれよりも多い負債を抱えていると捉えられます。



■50歳代・二人以上世帯の純貯蓄額(貯蓄額-負債額)の平均値・中央値



こうした負債額を差し引くことで、ほんとうの貯蓄額「=純貯蓄額」を見ていきましょう。



  • 平均値:▲35万円(1386万円-1421万円)
  • 中央値:▲600万円(400万円-1000万円)

平均値と中央値、ともにマイナスという結果となりました。50歳代の貯蓄事情は意外に厳しいようです。



では、老後に向けていったいいくら貯蓄があれば、安心して生活できるのでしょうか。



■老後に貯蓄1000万円で足りるのか



2019年には、高齢無職の夫婦世帯が老後を30年過ごすには、年金収入以外に2000万円が必要になるという「老後2000万円問題」が話題となりました。

しかしこの「2000万円」には落とし穴もあります。



■【高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)】の収入と支出



円グラフで見る「50歳代」の残酷な貯蓄格差。定年前に1000万円あれば安心なのか

出所:厚生労働省「iDeCoを始めとした私的年金の現状と課題」をもとにLIMO編集部作成



金融審議会「市場ワーキンググループ」(第21回)厚生労働省提出資料では、日本の高齢夫婦無職世帯の収入と支出は以下のように計算されています。



  • 実収入(主に年金):20万9198円
  • 実支出(主に食費):26万3718円
  • 月々の赤字額=約5万5000円
  • 老後必要額=5万5000円×12ヵ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円 ※約2000万円

こちらが「老後は2000万円必要」と想定した根拠です。



多くの方は次のように感じたのではないでしょうか。



  • 夫婦でなく単身世帯の場合は?
  • 年金はそこまでもらえない
  • 支出はもっと多いはず
  • そもそも老後は30年なのか

など



特に賃貸住まいの方などは、上記の支出に十分な住居費が含まれていないため、家賃分の上乗せが必要となります。



自宅介護や持ち家が当たり前だった高齢者に比べると、今後老後を迎える現役世代は必要額が膨らむ傾向になるのです。



インフレ等も加味すると、1000万円はもとより2000万円でも足りない可能性があります。



■老後に向けて今から準備を



「今は教育費や住宅ローンで精一杯だから」と老後の貯蓄を先延ばしにしていると、いざ定年退職を迎えても十分な貯蓄ができていない可能性もあります。



金銭的な不安を抱えたまま老後を迎えるのも避けたいですよね。



ここでは、老後に向けて大きな資産をつくる際の3つのポイントをお伝えします。



■貯蓄ポイント1. 「世界株式」に目を向ける



大きな資産を作っていくために、預貯金よりも資産運用に目を向ける方は多いです。

このとき、成長する資産に着目することが大切です。



経済成長が見込める先に投資している金融商品(=成長資産)を選びましょう。



仮に年率6%で運用ができた場合、12年間で資産は倍に増えます。今後も成長することが見込める世界経済に、長期的な視点に目を向けていかれるとよいでしょう。



しかし、特に初心者ではリスクが怖いため手が出しにくいことも。そんなときは次のポイントを守りましょう。



■貯蓄ポイント2. 「長期積立」でコツコツ運用が鉄則



次に大切にしたいのが、「長期・積立・分散」の大原則です。



金融商品は日々値動きがあるので、一括で大きな金額を買うと、値下がりした場合に大きく損が出る可能性もあります。



しかし定期的に積立投資を行うと、「価格が高いときには少なく、価格が低いときには多く」買い付けることができます。



つまり、買いつけのタイミングを分散させることで、購入単価が平均化(ならされること)に繋がり、値動きの影響を受けにくくなるのです。



このように分散することでリスクを抑えながら、運用益の安定を目指していけると理想的ですね。



■貯蓄ポイント3. 「投資と保障のバランス」を忘れずに



積立投資は長期戦が大原則といいました。

そのためには「定期収入がある」ことが前提となるでしょう。



例えば失業や病気などで積立に回す資金が枯渇した場合、資産運用そのものの継続が難しくなる可能性もあります。



収入激減や病気などのリスクに備え、最低限の保障を保険商品で備えておけば理想的です。



■まとめにかえて



50歳代の貯蓄事情についてご紹介してきました。平均値と中央値の大きな開き、また分布の様子から察するに、そこには貯蓄格差があるようです。



定年後の生活を見据えると、「2000万円」にこだわらず貯蓄が必要であるといえます。



目の前の生活も大切にしながら、老後資金こそ時間を味方につけて効率的に貯めていきましょう。



■参考資料



  • 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」( https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2021/21bunruif001.html )
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