東京都足立区は2022年7月25日、第一生命保険と、区の発展や区民サービスの向上の推進に向け、包括連携協定を締結したと発表しました。



今回はこのリリースや第一生命の業績を振り返ったうえで、日本における生命保険の動向についても解説していきます。



それでは早速、リリースの詳細を見ていきましょう。



■東京都足立区が第一生命保険と包括連携協定を締結



足立区は第一生命保険と、相互連携や協働・協創による活動を通じて、区の発展や区民サービスの向上を推進する計画を示しました。



具体的には今後、第一生命の職員によって以下のような取り組みが検討されています。



  • 地域清掃活動への参画
  • 営業時、高齢者の異変に気付いた時に地域包括支援センターに連絡する「絆のあんしん協力機関」への登録
  • 認知症サポーター養成講座の受講
  • 水害から命を守る「あだち安心電話」への登録PR

このように、自治体との連携を強める第一生命。



国民の生活から近い距離にある事業を手掛ける同社としては、事業以外で広範な接点を持つことが、ビジネス上の強みにもつながります。



ここで、第一生命の直近の業績を見てみます。



■第一生命ホールディングスの直近業績



次に、第一生命ホールディングスが2022年5月12日に発表した2022年3月期の決算から、直近業績を見てみましょう。



  • 経常収益:8兆2097億円(前期比+4.9%増)
  • 経常利益:5908億円(同+6.9%増)
  • 親会社株主に帰属する当期純利益:4093億円(同+12.5%増)

第一フロンティア生命における保険販売の増加が、保険料等収入の伸びにつながりました。



今期については、資産運用収益の減少などを背景に経常収益は減収を見込んでいます。



なお、資産運用収益の減少の大半は、責任準備金の戻入等と相殺されることから、利益への影響はないという見通しも示しています。



足元では堅実な業績の成長を見せる第一生命。



ところで、日本国内の生命保険の動向はどのようになっているのでしょうか。



■生命保険の契約動向



次に、一般社団法人生命保険協会「2021年版 生命保険の動向」のデータをもとに、国内の生命保険の実態について振り返っていきます。



同調査によると、2020年度の生命保険の新規契約件数(契約転換制度による転換後契約の件数を含む)は1702万件と、前年度比▲18.2%減となりました。



また、新規契約高(転換による純増加金額を含む)は44兆1290億円(同▲11.2%減)となりました。



第一生命が足立区と包括連携協定を締結。国内の生命保険の契約動向もデータで解説

出所:一般社団法人生命保険協会「2021年版 生命保険の動向」



第一生命が足立区と包括連携協定を締結。国内の生命保険の契約動向もデータで解説

出所:一般社団法人生命保険協会「2021年版 生命保険の動向」



以下、2016年度から2020年度までの各データです。



■個人保険の新契約件数の推移



  • 2016年度:1559万件
  • 2017年度:1404万件
  • 2018年度:1563万件
  • 2019年度:1371万件
  • 2020年度:1135万件

■個人保険の新契約高の推移



  • 2016年度:73兆円
  • 2017年度:62兆円
  • 2018年度:70兆円
  • 2019年度:53兆円
  • 2020年度:46兆円

近年、新契約件数・新契約高はそろって減少傾向にあり、この動向について生命保険協会は「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う対面販売の休止」が主な原因という見解を示しています。



■生命保険の新契約の男女別動向



次に、生命保険の新契約について、男女別の動向を見てみましょう。



第一生命が足立区と包括連携協定を締結。国内の生命保険の契約動向もデータで解説

出所:一般社団法人生命保険協会「2021年版 生命保険の動向」



■生命保険新契約の男女比較(2016年度)



  • 男性:49.8%
  • 女性:50.2%

■生命保険新契約の男女比較(2017年度)



  • 男性:49.9%
  • 女性:50.1%

■生命保険新契約の男女比較(2018年度)



  • 男性:50.8%
  • 女性:49.2%

■生命保険新契約の男女比較(2019年度)



  • 男性:51.9%
  • 女性:48.1%

■生命保険新契約の男女比較(2020年度)



  • 男性:52.2%
  • 女性:47.8%

2016年度では女性の方が多かったですが、2020年度では男性の方が多くなるなど、緩やかにではありますが男性の比率が増加傾向にあります。



なお、新契約の保険種類別構成比で男女を比較すると、以下のようになりました。



第一生命が足立区と包括連携協定を締結。国内の生命保険の契約動向もデータで解説

出所:一般社団法人生命保険協会「2021年版 生命保険の動向」



■新契約の保険種類別構成比(男性)



  • 終身保険:13.1%
  • 定期保険:20.0%
  • 養老保険:3.2%
  • その他:63.7%

■新契約の保険種類別構成比(女性)



  • 終身保険:15.9%
  • 定期保険:12.9%
  • 養老保険:2.0%
  • その他:69.1%

終身保険の比率は女性の方が僅差で多いですが、定期保険の比率については男性の方が約7%ポイント近く多い結果となりました。



■まとめにかえて



包括連携協定を締結した、足立区と第一生命。



第一生命は、業績は伸びてはいるものの、その勢いは強いとは言えない状況です。



自治体との連携などを通じてサービス利用者との接点を増やすことが、業績にどのように寄与するのか。



今後に注目です。



■参考資料



  • 足立区「令和4年7月21日(木曜日)、第一生命保険株式会社と包括連携協定を締結しました」( https://www.city.adachi.tokyo.jp/hodo/houdou220721kyoutei.html )
  • 第一生命ホールディングス株式会社「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」( https://www.dai-ichi-life-hd.com/investor/library/earning/pdf/2021_001.pdf )
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