■東芝メモリ買収失敗の二の舞にならないのか
■ブロードコムがクアルコム買収提案を発表
2017年11月2日、複数のメディアが米半導体大手のブロードコムが同業のクアルコムを買収すると報じました。その後、11月6日にブロードコムは正式にこの計画を発表しています。
発表資料( http://investors.broadcom.com/phoenix.zhtml?c=203541&p=irol-newsArticle&ID=2314458 )によると、ブロードコムはクアルコムの株式を1株70ドル(現金で60ドル、ブロードコムの株式で10ドル相当)で買収するとされ、買収金額はおよそ1,300億ドル(1ドル114円換算で14.8兆円)となる見込みです。
また同資料では、以下のような理由から極めて実現可能性が高いことが強調されています。
日本では昨年、ソフトバンクグループが行った英国の半導体メーカー、アーム社の買収が話題になりましたが、その買収金額は約3.3兆円でした。今回の買収金額がそれを大きく上回るにもかかわらず、ブロードコムはその実現可能性に非常に強い自信を持っていることを、この発表資料から読み取ることができます。
では、このブロードコムという会社は、いったいどのような半導体メーカーなのでしょうか。
今年の春ごろ、東芝が分社した東芝メモリの買手候補にも一時名前が挙がったため、ご記憶の方も多いかもしれませんが、それでもアップルやインテルといった米企業に比べると知名度はまだ低いと思われます。そこで、ブロードコムとはどのような会社かをおさらいしたいと思います。
■そもそもブロードコムとはどのような会社か
ブロードコムは通信機用を主力とし、設計開発だけを自社で行うファブレス(工場を所有しない)半導体メーカーです。事業モデルはこのように極めてシンプルである一方、企業としての歴史はやや複雑です。
大もとはヒューレッドパッカード(HP)を起源としており、そこから分社したアジレントテクノロジーがさらに半導体部門を分社化し、アバゴテクノロジーという現在のブロードコムの前身が作られています。
かつてのHPは、計測器からパソコン、サーバー、プリンタまでを手掛ける総合電機メーカーであり、日本でいえばNEC(6701)や日立(6501)のような存在でした。日本のルネサスエレクトロニクス(6723)も総合電機メーカーから分社して設立されていますので、似たような歴史をたどってきたということになります。
そのアバゴテクノロジーは、分社後にLSIロジック、アギア(もともとはAT&Tの半導体部門)を統合し、さらに2016年に通信用半導体メーカーであるブロードコムを約4.6兆円という巨額な金額で買収。その時点で社名をアバゴからブロードコムに変更しています。
つまり、現在のブロードコムは「新生ブロードコム」ということになります。ちなみに、株式市場でのブロードコムのティッカーシンボルが「AVGO」となっているのは、こうした経緯があるためです。
なお、現時点ではクアルコム買収後の社名がどちらになるのか(買収側になるのか、被買収側になるのか)は不明です。
■買収が成功すると世界第3位の半導体メーカーに
では、買収が実現した場合、新会社はどのような規模になるのでしょうか。
同社の発表資料によると、2017年度の推定売上高は下図のようにクアルコムが2.6兆円、ブロードコムが2.2兆円、NXPが1兆円です。このため、統合後の売上高は、クアルコムによるNXPの買収が実現した場合で約5.8兆円、実現しなかった場合でも4.8兆円となり、インテル、三星電子に次ぐ3番手のポジションとなるとされています。
なお、ブロードコムの売上構成比は光通信用などの有線関連が50%、アップル向けRFチップなどの無線関連が29%、データセンター用ストレージシステム向けが16%となっています。一方、クアルコムは売上の大半が無線用です。このため、統合された場合、売上高の半分以上が無線関連になると推定されます。
世界半導体メーカー売上比較(単位:兆円、1ドル114円換算)
出所:会社資料より筆者が作成
■今後の注目点
では、このメガディールは本当に実現するのでしょうか。
その理由の1つとして、買収価格が安すぎるという点があります。今回の70ドルという価格は、買収が正式に発表される前の11月2日終値に対して28%のプレミアム、また、2日までの30日間の平均株価に対して33%のプレミアムですが、この価格では低すぎるということで、今後ブロードコムが買収価格を引き上げるかが注目されます。
また、被買収側のクアルコムが今回の提案を積極的に歓迎しておらず、このままでは敵対的な買収となってしまう可能性もあります。さらに、クアルコムはアップルや各国政府と特許ラインセンスに関連した訴訟を多く抱えており、その解決策が現時点では不透明という懸念も、株式市場が買収の実現可能性に対して懐疑的な要因という見方もあります。
この案件は、はたして東芝メモリの買収と同様に打ち上げ花火で終わってしまうのでしょうか。世界の半導体業界の勢力図を大きく変える可能性のあるディールであるため、今後の動向を注視していきたいと思います。

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