「どうせ前と変わらないし」と普段はあまり見ない給与明細でも、年末にボーナスをもらったときにふと見ると、税金やら社会保険やらがごっそり引かれていて驚いた人もいると思います。月々の給料から出している食費や家賃や光熱費、飲み会代、人によっては保険料もバカになりません。
こんな状況では、収入を貯蓄に回すことはなかなか厳しいものの、退職金や年金がもらえるかさえもわからない時代で、いまのうちに貯蓄しておかないと将来は大変かも……というのが多くの人の思いでしょう。小説形式の投資入門書である著書『隣の人の投資生活』が好評のクレア・ライフ・パートナーズ代表・工藤将太郎さんが、こうした危機感から失敗しないために大事な点を解説します。
■20~30代はどれだけ貯めている?
実は、厚労省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、世帯全体では貯蓄がある世帯は80.3%で、平均にして1033万1000円の貯蓄額があるというデータがあります。正直、「こんなにあるの!?」とびっくりした人も多いのではないでしょうか。しかし、実際には一部の高所得者が平均貯蓄額を引き上げているとも考えられます。
そこで、無作為で20~30代の300人にアンケートをとってみました。アンケートの結果は別表のようになりました。

■節約か投資か
数字を見ると、「貯蓄なしが」全体の10%を超え、100万円以下が29%と最も多い結果になりました。先ほどお話しした平均貯蓄額とはかけ離れていますよね。このままの貯蓄ペースで、果たして老後までもつのでしょうか。
貯蓄を増やすには、大きく分けると2つの方法があります。1つは節約、もう1つは投資です。
■「怪しい投資話」になぜ乗ってしまうのか?
一方で、投資については、将来への危機感から積極的に投資を行ったのはいいのですが、結果として「怪しい投資話」に乗ってしまうというケースは実際に増えています。私の会社でも、そうしたことで被害を被った方のご相談を受けることがよくあります。少しご紹介しましょう(被害者保護の観点もあり、実際の例とは若干、状況などを変えています)。
ある営業職の方は、「東南アジア系のファンドで高利回りの商品がある」という話を紹介され、200万円ほどを投資しました。しかし、お金を払ったあとしばらくすると紹介者は音信不通になり、結局、1円も戻ってきませんでした。
また、あるメーカー勤務の方は、友人の紹介で経営者を名乗る男性と会いました。その男性が言うには、「実はこんな有望新規事業を準備中だが、多少、資金の必要な事業なので、これに出資してくれる人を探している」とのこと。「ニーズがあり、時代の流れにも合っていて、間違いない事業なので、いま出資してもらえれば増やして返済する」と熱心に説得され、コツコツ貯めてきた貯金の大半である700万円を投資することにします。しかし、お察しの通り、その700万円は数年経ったいまも返ってきていません。
■怪しい話に引っかかる人の特徴
こうした話に引っかかってしまう人の特徴として、「欲望を抑えられない」「お金を増やすことが目的になっている」「見栄っ張り」「人の言うことを聞かない」など、わかりやすいものもあります。一方で、以下のようにちょっと意外な(本人や周りが気づかないうちに深みにハマってしまう)ものもあります。
・大企業勤めや安定した職業で、自分が守られていることに気づかない人
・自己啓発にはまりやすい、根がやさしく、驚くほど素直な人
・親が過保護でいつまでも精神的な自立ができていない人
・ネットがすべて正しいと思ってしまっている人
・自分で納得しないと行動できない人
「自分が守られていることに気づかない人」は、お金と時間にわりと余裕があり、他者を見下す傾向にあるので、下手に出てくるような営業には意外と弱いのです。また、「自分で納得しないと行動できない人」は、その裏返しで、自分に対して過度な自信を持っている人が多くいます。
実はかつての私自身も、「怪しい投資話」に乗ってしまった1人でした。パチンコ台投資や出会い系サイト運営など、さまざまな投資に手を出し、数多くの失敗を重ねながら、資産運用の「現実」と「本質」を学んできました。

筆者の工藤さんの著書(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
■まとめにかえて
拙著『隣の人の投資生活』でも、ストーリーの中にそのエッセンスを練り込んでいますが、失敗を重ねていく中で、私は資産運用において3つの大切なことを見つけました。
1.資産運用への知識
2.早めの計画・実行
3.勉強や情報収集を継続しつつ自分の受け皿を広げる
さまざまな投資の種類についての知識がなければ、とりあえず聞いたことのある投資に手を出してしまいます。また、多くの投資の種類を知っていても、それについての深い知識がなければ、昔の私のように失敗してしまいます。
上記の「3」はやや応用編に属すると思いますが、まずは「知識を得て」「動き出す」ために、できることから始められてはいかがでしょうか。
■ 工藤将太郎(くどう・しょうたろう)
西南学院大学卒業後、日本生命保険相互会社入社。資産形成について知識を深めるとともに、自身でも積極的に不動産投資や海外投資を実践。
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