超低金利時代に魅力的?高配当利回り銘柄

 日本は長らく超低金利時代が続いています。定期預金にお金を預けても利率はわずか。個人向け国債も利率は非常に低く、1%の利回りでさえ夢の話です。


 ところが、日本株に視点を移すと、配当金の利回りが2%、3%は当たり前。中には5%を超えるものも珍しくありません。


 このご時世、配当金だけで年間利回りが5%を超える銘柄を見つけたら、まさに小おどりしたくなるくらい、全財産をつぎ込んでも買いたいお宝銘柄に見えるのではないでしょうか。


 ところが、世の中そんなに甘くありません。単に配当利回りが高いというだけで飛びつくのは危険すぎます。


 今回は、配当利回りから銘柄選びをするときの考え方について、お伝えしていきます。


「高配当利回り」=「オトク」なのではない

 まず皆さんにしっかり理解していただきたい重要な点があります。それは、「配当利回りが高い=オトク」では決してないということです。


 筆者は、株式投資において、常に目に見えている現実に対して疑問を持つべきであると、常々お伝えしています。


 例えば、割安に見える株を見つけたとしたら、「割安だ!」と喜んで飛びつくのではなく、「なぜ割安なのに買われないのか?」と、疑問に感じるべきです。


 これは配当金についても同じことで、「配当利回りが5%もあってオトクだ!」ではなく、「なぜ配当利回りが5%もあるのに、株価が上昇しないのか?」と疑問に思わなければなりません。


 もし配当利回りが5%あり、その利回りが今後もずっと続くという株があれば、それは極めて有利な投資対象になります。特に昨今の超低金利の状況なら、配当利回りが2.5%程度になるまで、つまり株価が今の2倍になるくらい買われても、おかしくはありません。


 ところが、配当利回りが5%を超える銘柄の中には、逆に株価が下がり続けているようなものも珍しくありません。もしも今後ずっと、5%の配当利回りが確保できるのなら、株価が下がり続ける…ことはないはずです。


 要は、配当利回りが5%を超えているような銘柄は、「将来、業績悪化などで配当金が減らされるリスクが高い」とプロ投資家は見ているわけです。


 仮に現在の配当利回りが6%で、2年後に業績悪化により配当金が3分の1に減らされるとしたら、2年後の実質的な配当利回りは2%にまで低下してしまいます。


 配当利回りが高く放置されている銘柄は、オトクではなく、将来に配当金が減らされるリスクが加味された株価になっているだけなのです。


配当金が減らされるとダブルパンチのダメージを受けることに

 配当利回りがかなり高い銘柄に投資する場合、失敗するとダブルパンチのダメージを受けてしまう可能性が高いので、十分注意してください。


 なぜなら、配当利回りが高い銘柄は、大きな額の配当金を受け取れることが魅力となって株価が形成されています。


 そうした状況で、業績悪化により配当金が減らされると、まず業績悪化により株が売られ、さらに配当金が減らされることで株が売られるという二重のダメージを受けることになってしまうのです。


 現在は ヤマダホールディングス(9831) の子会社になり上場廃止となった大塚家具は、数年前の配当利回りランキングで首位を飾っていました。


 その時の配当利回りは8%前後でした。しかし、株価は値下がりを続けました。


 やがて、業績悪化により配当金の額が減らされ、最後には無配となってしまったのです。この間、株価は大きな下落となりました。

配当金目当てで大塚家具の株を買った人は、かなりのダメージを受けたのではないかと思います。


配当利回りが高いのに株価が下落している銘柄は特に注意

 個人投資家の中には、「株価下落=割安になった」と判断する方も少なくないと思います。でもその考え方は極めて危険です。


 もし、株価が大きく下落する前と後とで、企業の実態やファンダメンタルズに何も変化が生じていないのであれば、株価下落は割安になったと素直に考えてよいでしょう。


 ところが、実際は企業実態やファンダメンタルズに変化がないのに、株価が大きく下がることは「◯◯ショック」のような株式市場全体の株価急落時を除いてはまず考えにくく、企業実態やファンダメンタルズの悪化を懸念して、株価が下落していると考えるべきです。


 このことは配当金にも言うことができます。株価が下落を続けていることにより配当利回りが上昇したような場合、これは決して割安になったのではなく、配当金が将来減らされるリスクが高まったため、株価が下落していると考えるべきなのです。


 現に、配当利回りが高いにもかかわらず株価が下落している銘柄を見ると、その後、実際に配当金が減らされるケースが多いのです。それにより再び株価下落…という負のスパイラルにはまってしまいます。


 そもそも「株価下落=割安」になったわけではなく、割安に見えるほど株価が下落していること自体に危機感を感じる必要があるのです。


配当利回りで選ぶなら「将来の利回りがアップする可能性が高い」ものを

 以上のことを踏まえて、配当利回りで銘柄を選ぶ際に意識していただきたいのは、「現時点での配当利回りが高い」ではなく、「将来の配当利回りが高くなる」という観点を持つということです。


 配当利回りが高い銘柄、筆者の感覚でいえば4%以上の銘柄は、多かれ少なかれ、将来的に配当金が減らされるリスクが株価に反映されていると思います。


 つまり、配当利回りが現時点で高ければ高いほど、配当金が減らされるリスクが高く、ひいては株価が大きく下落してしまうリスクも高いということです。


 でも逆に、現時点での配当利回りが2%程度とそれほど高くなくても、これまで年々配当金の額が増額されているような銘柄は、今後も配当金が増えていく可能性が高いといえます。


 現時点での利回りが2%であっても、増配により10年後の利回りが4%になる可能性があるのであれば、これは投資妙味があると言ってよいのではないでしょうか。


 現時点で配当利回りが高い銘柄は、配当金が減らされることで、株価も大きく下落する可能性が高くなります。


 一方、現時点で配当利回りがそれほど高くない銘柄は、配当金が増えることにより株価も上昇する可能性が高くなります。


 現時点での表面上の配当利回りが高いからという理由だけで、「高配当銘柄」に飛びつくような行動は、くれぐれもしないようにしましょう。


(足立 武志)

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