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著者の土信田 雅之が解説しています。

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「 [今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算 」


 2月最終週となる今週の株式市場は、3月に向けて、どのようにバトンタッチするのかが注目されますが、先週末21日(金)の日米の株式市場の状況を見ると、相場の雲行きが少し怪しくなりつつあるような印象です。


強弱が分かれた先週の株式市場

 まずは、簡単に先週の国内外の株式市場全体の様子から確認して行きます。


図1 各国主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年2月21日時点)
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergを基に作成

 上の図1は2024年末を100とした、国内外の主要株価指数のパフォーマンスを比較したグラフですが、香港ハンセン指数の上昇が他の株価指数と比べて突出していることが分かります。また、欧州600指数や上海総合指数も、ハンセン指数ほどではないものの、堅調な推移が読み取れます。


 その反対に、低調な展開が続き、未だ昨年末比でマイナス圏に沈んでいる日本株のほか、米国株については、週末にかけて失速が目立ち始めています。


 このように、足元で市場間に生じている温度差が、どのように変化していくのかが今週の焦点になると想定されます。例えば、香港株の好調さは続くのか、先週末に投開票が行われたドイツの議員選挙の結果を受けた欧州株の反応はどうか、米国株の失速傾向は続いてしまうのか、日本株の下値を拾う動きが相場を支えるかなどが具体的なポイントとして挙げられそうです。


ちょっと心配な米国株市場の失速

 香港株上昇の背景については、 こちらのレポート でも詳しく説明していますが、いわゆる「DeepSeekショック」によって、中国のAIおよびテック企業への注目が高まったことと、中国政府の民間企業に対する政策スタンスの変更(引き締めから支援)による思惑が株価を押し上げた格好です。


 その一方で、米国株については週末の21日(金)の下落が大きく、NYダウが1.69%安、S&P500が1.70%安、ナスダック総合指数が2.20%安となりました。


 そこで、先週末時点の米主要株価指数の状況を確認して行きます。


図2 米NYダウ(日足)の動き
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDII

 まずは米NYダウです。先週末21日(金)に大きめの陰線が出現し、株価は4万4,000ドル台や50日移動平均線を下回ってしまいました。


 ただ、この日の終値(4万3,428ドル)を、チャートを過去に遡って水平ラインを描いていくと、同じ株価水準のところで、抵抗となったりサポートとなったりしていることが確認できます。


 したがって、今週はこの株価水準をベースに株価が戻していくのか、それとも下落が続いていくのかを見極めていくことになります。


 株価が上昇した場合には、直近の上値を結んだ線が上値の目安となるほか、下落した場合には、図2でも確認できるように、4万2,000ドルあたりが下値の目安になることが想定され、目先のNYダウは株価水準の上げ下げを意識しながらの展開となりそうです。


図3 米S&P500(日足)の動き(2025年2月21日時点)
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDII

 続いては米S&P500です。先週のS&P500は19日(水)に最高値を更新していましたが、やはり週末の21日(金)に下落する展開となりました。


 ただ、先ほどのNYダウとは異なり、50日移動平均線や6,000p辺りで下落が止まっており、今のところ、この水準がサポートとして機能しています。


図4 米ナスダック総合指数(日足)の動き(2025年2月21日時点)
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDII

 ナスダック総合指数も、2万pを挟んだもみ合いから21日(金)に大きく下落し、25日と50日の2本の移動平均線を下抜ける動きとなりました。


 1本のローソク足が2本の移動平均線を下抜ける格好は、「2本下抜け」と呼ばれ、下方向への意識が強まるサインとされますが、株価の動きをもう少し大きく捉える視点では、「三角保ち合い」を形成しつつあるようにも見えます。


 このように、米国株市場は足元で下落しているものの、図2~図4の日足チャートを見る限りでは、まだ相場が下落トレンド入りしたわけではなく、それを確認するのはこれからということになります。


 とはいえ、気掛かりなのは21日(金)の下落です。この日は P&G(PG) や コカ・コーラ(KO) 、 メルク(MRK) など、一部のディフェンシブ銘柄が買われたものの、相場全体としては、米国の景況感悪化とトランプ政権への警戒などが売りを促しました。


 実際に、この日に発表された経済指標を確認すると、米1月中古住宅販売(前月比)が予想以上に落ち込んだほか、米2月消費者態度指数(ミシガン大学)確報値では、消費者心理が低下する一方で、インフレ見通しが強まる結果となりました。さらに、米2月PMI(購買担当者指数)も前月よりも低下するなど、米国の景況感の悪化を示す指標が相次ぎました。


 ここ最近の米国株市場では、経済指標の悪化が米金利の低下を促し、結果的に株価を支える、「(経済の)悪いニュースが(株式市場の)良いニュース」の構図となっていましたが、これが足元で変化しつつあるかもしれないことは意識しておく必要がありそうです。


 ちなみに、今週の米国では、10-12月期のGDP(国内総生産)改定値をはじめ、住宅関連(1月新築住宅販売)や生産関連(1月耐久財受注)、消費関連(1月個人消費支出)などが予定されています。


エヌビディア決算が相場のムードを変えられるか?

 また、今週の米国では、これまで見てきた景況感以外にも、26日(水)に予定されている エヌビディア(NVDA) の決算にも注目が集まります。


図5 米エヌビディア(日足)の動き(2025年2月21日時点)
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDII

 上の図5は、エヌビディアの日足チャートですが、1月7日に最高値(153ドル)をつけて以降の戻り高値は、上値が切り下がっています。そのほか、ここ最近も140ドルの水準が株価の抵抗となっているため、現在のエヌビディアの日足チャートは積極的に上値を追っていく意欲に乏しい状況であると言えます。


 こうしたムードを一変させるものとして期待されるのが決算ですが、図にも決算のタイミングを記載しているように、株価が大きく上昇したのは昨年5月の決算が最後で、以降の決算(昨年8月と11月)を受けた株価の動きは下落となっています。


 つまり、決算を受けて株価を上昇させていくには、良い意味で「予想を裏切る決算」が必要になります。


図6 米エヌビディアの業績推移
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:Bloombergデータを基に作成

 上の図6は、エヌビディアの売上高と純利益の推移を棒グラフで、売上高の成長率(前年比)の推移を折れ線グラフで示したものです。


 エヌビディアの業績は、ここ2年ぐらいの急成長が株価を押し上げてきましたが、売上高の成長率は低下しつつあり、先ほどの図5で株価の下落を確認した時期が8月と11月の決算にあたります。


日経平均は200日移動平均線と3万8,000円を意識

 最後に、これまで見てきた状況を踏まえて、日本株の見通しについても確認してきたいと思います。


 とはいっても、基本的な見通しは 前回のレポート からあまり変わっていません。


図7 日経平均(日足)とトレンドライン(2025年2月25日時点)
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDII

 前回のレポートでも紹介した上の図7は、日足チャートにトレンドラインを描いて、日経平均株価の足取りをトレンドで捉えたものです。


 前回は、(1)の範囲への復帰や、日経平均4万円乗せへの期待について述べましたが、結局は期待通りの展開にはならず、(2)の範囲内での推移が続くことになりました。


 今週の国内市場は注目の経済指標やイベントが少ないこともあり、海外市場で大きな変化がなければ、この流れが続くことが想定されます。


図8 日経平均(日足)の動き(2025年2月21日時点)
[今週の株式市場]「怪しい雲行き」の日経平均は3万8000円維持できる?注目は市場間パワーバランスとエヌビディア決算
出所:MARKETSPEEDII

 とはいえ、先週の日経平均は200日移動平均線を下回る場面もあったため、一応、株価が下振れする展開も想定しておく必要がありそうです。


 その場合ですが、まず、下げ止まりの目安としては3万8,000円水準です。上の図8にもあるように、「200日移動平均線を下回っても、3万8,000円水準で踏みとどまる」というパターンを、昨年10月あたりから繰り返しており、「今回もそのパターンにハマるか?」という意識は強いと思われます。


 仮に、3万8,000円を下回ってしまい、早期に回復できないと、下値を探る展開に移行することになりますが、その場合は、図7の4×1ラインや、9月に底値で根固めしていた3万6,000円から3万7,000円の範囲内が次の下値の目安になりそうです。


 もっとも、足元の日本企業の業績は、最近までの決算動向を見る限り、決して悪いわけではないため、株価が下振れた場合には、下値で買いを入れるチャンスでもあると考えられます。


(土信田 雅之)

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