2024年も米国株式が世界株式の堅調をけん引した
2024年の米国市場では株式動向を象徴するS&P500種指数が23.3%上昇する堅調となりました。
強気相場の要因としては、(1)AI(人工知能)需要拡大期待がけん引したナスダック主力株の堅調、(2)FRB(米連邦準備制度理事会)による金融政策正常化(9月から12月にかけて政策金利を3回利下げ)、(3)米景気のソフトランディング(軟着陸)見通し、(4)大統領選挙で当選したトランプ次期大統領による減税・規制緩和を巡る期待などが挙げられます。
S&P500は2024年に最高値を57回(大統領選挙後は10回)更新しました。
図表1は、2020年初来の米国株(S&P500)、全世界株、「米国を除く全世界株」の推移を示したものです。全て「ドル建て時価総額加重平均指数」で、全世界株式の時価総額ウエートで6割以上を占める米国株の優勢が全世界株の堅調をけん引したことが分かります。
一方、「米国を除く全世界株」は、欧州株や日本株などが(ドル換算すると)アンダーパフォームしたことを示します。昨年12月2日の 本稿 でご紹介した通り、筆者は「2025年も幾度の調整を挟みS&P500は『6,600±200』で年末を迎える」とのメインシナリオを見込んでいます。
バリュエーション(予想PER(株価収益率))とファンダメンタルズ(予想EPS(1株当たり利益))から試算し、2025年も2026年もS&P500ベースの予想EPS(市場予想平均)が二桁台の増益率(2024年に続き過去最高益を連続更新)を維持することを想定しています。
<図表1>2024年に米国株式は23%上昇し世界株式堅調をけん引

昨年に続いて2025年版の「サプライズ(びっくり)予想」をご紹介
ご参考までに、昨年に続いて筆者が新年に想定する「2025年のサプライズ(びっくり)予想」を図表2でご紹介したいと思います。サプライズ予想の定義は、現時点(2025年初)ではコンセンサス(市場予想平均)やメインシナリオと見なされていないものの、筆者として「生起確率が5割以上あるかもしれない」と見込んでいる市場見通しやイベント予想です。
<図表2>初夢!?2025年のサプライズ(びっくり)予想
# 2025年の
サプライズ
予想 サプライズ予想の
概略 1 地政学リスクが大幅に後退 トランプ大統領がウクライナ戦争と中東紛争を休戦に導く。金融市場に「平和の配当」(原油相場下落と不確実性後退)がもたらされ、世界株高の要因に。 2 AI分野で「AGI」が登場 幅広い領域で人間並みの知性を持ち一定の意志決定や判断ができるAGI(汎用人工知能)が実現へ。多くの産業で導入され生産性向上に貢献しはじめる。 3 S&P500が7,000に到達 共和党政権による減税・規制緩和で利益成長期待と投資意欲が向上。
上記のうち、「地政学リスクが大幅に後退」が実現して原油相場下落と不確実性後退がもたらされると、世界株全体にとりプラス材料となるでしょう。トランプ次期大統領は第2次政権のレガシーとして「ノーベル平和賞」を意識しているとの見方があります。
AI分野でAGI(汎用人工知能)が想定していたよりも早く2025年に登場する可能性については、イーロン・マスク氏(テスラ社CEO)やサム・アルトマン氏(オープンAI社CEO)が示唆しています(ロイター)。
生成AIが「AIエージェント」に進化して人間の代わりに自ら考え行動し、AGIが幅広い産業で導入されて生産性向上の裾野が広まると、ナスダック主力株(情報技術株や情報サービス株)の利益成長期待が「S&P500が7,000を到達」との相場上振れシナリオを市場に意識させるでしょう。
なお、為替見通しについての専門家の平均的な予想は「日米金利差縮小でドル安・円高」が多いようです。
筆者は、日米の経済的国力差や実質金利差(「政策金利-インフレ率」の差)、日本のデジタル赤字拡大、外貨資産投資拡大に伴うドル買い円売り需給を想定し「ドル/円相場が165円を突破」と予想。国内では昨年の衆院選に続き、今年夏の参院選でも「手取りを増やす」と訴える国民民主党の躍進を予想しています。
「2024年のサプライズ(びっくり)予想」を振り返る
なお、筆者が2023年末にご紹介した「2024年のサプライズ(びっくり)予想」とその的中実績を図表3で振り返ってみます。詳細については当時の「 びっくり初夢!?2024年のサプライズ予想 」をご覧ください。七つのサプライズ予想のうち、四つの予想(背景色がピンク)が実現して打率(?)としては5割7分でした。
<図表3>2024年のサプライズ予想(2023年12月末時点)の振り返り
# 2024年の
サプライズ
予想 サプライズ予想の
概略や理由 1 米国初の女性大統領誕生 米国で「もしトラ」リスクを警戒する有識者層や富裕層が増えている。女性でインド系のニッキー・ヘイリー氏が共和党の大統領候補となれば当選確実へ。 2 地政学リスクが大幅後退 戦争疲れでウクライナとロシアが停戦交渉へ。イスラエルによるハマス攻撃も終結。「平和の配当」(商品市況下落と不確実性の低下)がもたらされる。
手前みそで恐縮ですが、まずは実現した「サプライズ予想」を下記にご紹介します。
(3)2023年末時のS&P500種指数は4,769ポイントでした。2024年にS&P500はサプライズ予想の「5,500」を突破して一時は6,000を超える想定以上の強気相場を示現しました。
(4)2023年末時のドル/円相場は141円台でした。多くの専門家が「2024年は円高の年」と予想していましたが、実際のドル/円は一時162円台まで円安となりました。
(5)2023年末に3万3,464円だった日経平均株価は、米国株高と為替の円安に企業の経営改革期待が重なり、1989年以来となる最高値を更新。2024年7月11日には4万2,224円(終値)まで上昇しました。
相場とは関連ありませんが、(7)大谷翔平選手が2年連続でMVPに輝き、所属するドジャースもワールドシリーズで優勝しました。大谷ファンの1人である筆者が皆さまの多くと喜びを共有できてうれしかったイベントでした。逆に、外れてしまったサプライズ予想としては、「米国初の女性大統領誕生」「地政学リスクが大幅後退」「日本初の女性首相誕生」で反省(?)しています。
上述した「サプライズ(びっくり)予想」は、想像を超える期待が実現する可能性を示した事例です。こうした一方、2024年初に導入された新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で定着しつつある資産運用の王道(長期投資や積立投資)においては「最後は勝つ(負けない)」と前向きにイメージすることが大切だと思います。
2025年は、市場が「トランプ劇場」などさまざまなリスク要因に戦々恐々となり、需給悪化で株価が調整して一時的にせよボラ(変動性)が高まり投資家センチメントが悪化する場面は幾度もありそうです。
長期分散投資を続ける上においては、相場変動時に過度に動揺せずに冷静な投資姿勢を維持し、「TIME in the market is more important than TIMING the market」(長期投資を続けることがタイミングを図る短期売買より大切)、「Buy the dips」(押したら買い)、「Just keep buying」(将来のために買い続けよう)など米国市場の格言や名言を意識することが一般投資家の資産形成にとり有意であると考えています。
皆さまにとり2025年が良い一年となるよう、心から願うばかりです。
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2024年12月2日: 「2025年の米国株を予想!S&P500の上値は?アメリカ・ファーストの光と影」
(香川 睦)