先週末の日経平均株価は前の週に続き上昇しましたが、反発力は乏しく、上値の重たい展開となりました。一方、海外指数と比べると、日本株のほうが反発力の強さを示した面もあり、今後も上昇を続けるか、あるいは上値ライン付近でのもみ合いが続くのかどうか、今週の「相場のチェックポイント」とあわせて解説します。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 「意外な強さ」を見せる日本株~チェックすべき今週の相場ポイントは?~ 」


 先週末3月21日(金)の日経平均株価終値は3万7,677円でした。


 前週末の終値(3万7,053円)からは624円高、週間ベースでは2週連続の上昇となり、 前回のレポート でも指摘したように、目先の株価の底打ち感は確認できたと言えそうです。


上値は重たいが、日本株の戻りは意外と順調?

 その一方で、株価の反発力については、日経平均の日足チャートを見る限り、微妙な印象となっています。


図1 日経平均(日足)の動き(2025年3月21日時点)
[今週の株式市場]「意外な強さ」を見せる日本株~チェックすべき今週の相場ポイントは?~
出所:MARKETSPEEDII

 先週の日経平均の様子を上の図1で確認すると、週初の2日間は、いわゆる「窓」空けを連続して出現させながら勢いよく株価が反発し、1,000円ほど上昇する場面があったものの、3万8,000円台や25日移動平均線といった「節目」に上値が抑えられる格好で、週末にかけては上昇幅が縮小していく展開となりました。


 また、ローソク足の形を見ると、節目付近では上ヒゲの長い線が続いていたことも確認できます。


 一般的に、上ヒゲの長い線は、「上を目指したものの、売りに押されて実現しなかった」ことを意味するため、相場の高値圏で出現すると、天井サインと受け止められます。


 しかし、先週のように株価が戻り基調の途中で、「節目」も絡む場面で出現した場合には、「少なくとも節目の突破を試す動きを見せた」と考えることができ、そこまでネガティブではありません。


 もちろん、節目を突破できず、「やっぱり駄目だったか」感で売りに押される展開は想定されますが、足元の株価の底打ち感が支えとなって、下値が限定的にとどまるのであれば、再び株価上昇をチャレンジしていくシナリオも残した格好と言えます。


 では、足元の日本株は上昇していく可能性はあるのでしょうか?


 確かに、先週の日経平均は上値が重たく、微妙な値動きでしたが、実は、海外の株価指数と比べると、意外と日本株の反発力が強かった面も見せています。


図2 国内外株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年3月21日時点)
[今週の株式市場]「意外な強さ」を見せる日本株~チェックすべき今週の相場ポイントは?~
出所:MARKETSPEEDIIおよびBloombergデータを元に作成

 上の図2は、以前のレポートでも何度か紹介したことがありますが、昨年末を100とした国内外の株価指数のパフォーマンスを比較した指数チャートです。


 先週末21日(金)時点の日経平均は94.44と、まだ昨年末比でマイナス圏に沈んではいるものの、前週末からは1.68%上昇していたほか、TOPIX(東証株価指数)については、100.69とプラス圏を回復しただけでなく、週間の上昇率も3.27%と結構大きくなっています。


 同様に、海外株価指数の先週末からの騰落率に注目すると、米国株については、ダウ工業株30種平均が1.19%高、S&P500種指数が0.5%高、ナスダック総合指数が0.16%高となっていたほか、中国株では、上海総合指数が1.6%安、香港ハンセン指数が1.12%安、そして、欧州株(ストックス600)が0.56%高だったことを踏まえると、先週の日本株の戻りが相対的に大きかったと言えます。


バリュー優位で堅調さを見せる日本株

 となると、目先はTOPIXの動きについても確認していく必要がありそうです。


図3 TOPIX(日足)の動き(2025年3月21日時点)
[今週の株式市場]「意外な強さ」を見せる日本株~チェックすべき今週の相場ポイントは?~
出所:MARKETSPEEDII

 上の図3はTOPIXの日足チャートですが、図1の日経平均と異なり、先週のTOPIXの値動きは、3本(25日・75日・200日)の移動平均線だけでなく、昨年7月11日と12月30日の高値どうしを結んだ「上値ライン」も上抜けて、2,800pの節目の株価も回復するなど、かなり強い動きを見せていることが分かります。


 時価総額の大きいメガバンク株や、 こちらのレポートの後半 でも指摘していたように、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが商社株を買い増ししていたことが判明し、国内バリュー株を中心に、再び日本株を買う動きが強まったことなどがその背景として考えられます。


図4 TOPIXのグロース指数とバリュー指数の比較(2025年3月21日時点)
[今週の株式市場]「意外な強さ」を見せる日本株~チェックすべき今週の相場ポイントは?~
出所:Bloombergデータを元に作成

 上の図4は、2023年末を100とした、TOPIXのグロース指数とバリュー指数のパフォーマンスを比較したものになりますが、昨年夏の株価急落以降、次第にバリュー指数がグロース指数よりも優位になっていることが分かります。


 つまり、足元の日本株のバリュー優位は一時的なものではなく、ジワジワと醸成されていった中期的な傾向と考えることができ、こうした流れはまだしばらく続きそうと考えるのが自然です。


 そのため、当面の値動きの目安としては、図3にもあるように、このまま株価が上昇して、昨年秋から形成していた「上昇ウェッジ」の延長線上に囲まれた範囲内まで株価水準を切り上げられるか、それとも、上値が重たくなり、先ほどの上値ラインをサポートにしたもみ合いが続くかの2つがシナリオとして考えられそうです。


今週の相場の「チェックポイント」はかなり多い

 そんな中で迎える今週の株式市場ですが、これまで見てきた相場の動きも含めて整理すると、今週はチェックすべき相場のポイントはかなり多そうです。


 まず、最初のポイントになりそうなのが、先週の日米金融政策イベント通過後の相場の地合いの変化です。


 先週は、日本銀行金融政策決定会合と、FOMC(米連邦公開市場委員会)がともに18日(火)~19日(水)という同じスケジュールで開催されましたが、それぞれの結果を受けた株式市場は、日銀金融政策決定会合後の日本株市場が失速、FOMC後の米国株市場が上昇という初期反応を見せました。


 とりわけ、後者のFOMC後の米国株の上昇は、いわゆる「ドット・チャート」で示されたFRB(米連邦準備制度理事会)メンバーの金利見通しが、「年内の利下げ実施2回」を想定する見方が維持されたことと、4月からQT(量的縮小)の緩和開始を決定したことの2つが好感された格好です。


 ただし、ドット・チャートでは、米国の景気減速とインフレ進行の見通しも強まっているため、今回のFOMCの結果は、継続的な株価上昇材料としては力不足かもしれません。


 そのため、引き続き、米国の経済指標や企業業績などをにらみながら景況感を探っていくことになりますが、今週の米国では、3月のPMI(購買担当者指数)や2月の新築住宅販売、3月消費者信頼感指数(カンファレンスボード)、3月個人消費支出(PCE)などが予定されています。


 また、2つめのポイントは、米トランプ政権が検討を進めている「相互関税」が、いよいよ来週の4月2日に公表される予定になっており、今週はそのカウントダウン期間に入ることです。


 先週の株式市場では、トランプ米大統領が、この相互関税をめぐって、「柔軟性は重要」や「多少の融通の余地があるかもしれない」、「近いうちに中国の習近平氏と協議するつもり」などと発言したと報じられ、ひとまず過度な警戒感が後退しています。


 しかし、実際のところ「蓋を開けてみないと分からない」状況に変わりはなく、関税をめぐる報道や思惑によって、市場が揺さぶられる展開に注意する必要があります。


 ちなみに、現時点で日程は定まっていませんが、今週のどこかで米中の通商代表が協議を行う予定となっており、仮に、関税緩和に向けた話が進んだ場合には、株式市場の強力な追い風になりそうです。


 そして、3つめのポイントが3月決算期銘柄の権利付き最終日が27日(木)、翌28日(金)が権利落ち日というスケジュール感で、今週が実質的な3月の最終週になることです。


 冒頭でも述べたように、先週末21日(金)の日経平均終値が3万7,677円、その後の日経225先物取引の終値が3万7,400円となっています。単純な比較では、両者の差分である300円ぐらいが「配当落ち」と考えられ、権利落ち日にあたる28日(金)の取引で、この配当落ち分を埋められるのかが注目されることになりそうです。


 したがって、今週の日本株は、相場に方向感が出てくるのが米トランプ「相互関税」の内容が明らかになる来週以降と想定される中、引き続き、下値の堅さを示せるかを確認していくことになりそうです。


(土信田 雅之)

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