先週日経平均株価は4週ぶりに反発。直近の高値を突破し、短期チャートでは戻り基調が鮮明となる一方、売買代金の低調さが気掛かりです。

そこで、テクニカル分析から見た日経平均の戻りの目安を探ります。また、今週から本格化する日米企業の決算や、IMFの世界経済見通しなど、相場を左右する注目材料について整理します。さらに、市場の不安心理を示すVIX指数の動向から、足元の底打ち感についても考察します。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 短期の戻り期待と中期の下振れ警戒~くすぶる「恐怖指数」の波乱の芽~<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


短期チャートで読む日経平均は戻り目線?

 先週末4月18日(金)の日経平均株価終値は3万4,730円でした。前週末終値3万3,585円からは1,145円高と、そこそこの上げ幅だったほか、週間ベースでも4週ぶりの反発で取引を終えています。


 あらためて、先週の日経平均の値動きを日足チャートで確認していきます。先週掲載した こちらのレポート では、足元の日経平均の気掛かりなポイントとして、「株価は反発しているが、4月10日の直近高値3万4,639円を超えられていない」、「取引時間中にトレンドが出ていない」、「売買が盛り上がっていない」ことの3つを挙げていました。


<図1>日経平均(日足)の動き(2025年4月18日時点)
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
出所:MARKETSPEEDII

 まず、最初のポイント「直近高値を超えられない」については、上の図1を見ても分かる通り、クリアすることができました。株価の「節目」を超えたことで、目先の相場は上値をトライしやすくなったと言えます。


 次の上値の目標としては、25日移動平均線が候補になりそうです。

先週末18日(金)時点の25日移動平均線の値は3万5,475円となっています。


<図2>日経平均(15分足)の推移(2025年4月7日から18日)
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
出所:MARKETSPEEDII

 続いてのポイント「取引時間中にトレンドが出ない」についても、週末時点の状況は前向きとなっています。


 図2は、直近2週間の日経平均の動きを15分足で捉えて行くと、値動きの荒かった2週前(7日~11日)と比べ、先週(14日~18日)は、値動きの幅が落ち着いてきたほか、特に週末にかけては、日をまたいで上昇トレンドが発生していることが分かります。


 小さいながらも、継続的に買いが入って戻り基調のトレンドを描いていたことは、印象としてはかなり良いと言えます。


 ただ、最後の3つ目のポイント「売買が盛り上がっていない」については、状況は変わっていません。


<図3>東証プライム市場の売買代金と騰落銘柄の状況
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
出所:取引所発表データを基に作成

 図3は、東証プライム市場の売買代金と騰落銘柄数の推移ですが、先週の売買代金は、これまでの5~6兆円台から3兆円台での取引が続きました。とりわけ、週末18日(金)は週間で最も値上がり銘柄数が多かったのですが、売買代金は今年最低の3兆3,015億円でした。


 もっとも、「閑散に売りなし」という相場格言があるほか、先ほどの2つのポイントもポジティブであることを踏まえると、目先の日経平均は短期的に上値を試しやすいと思われます。


日経平均の戻りの目安は?

 そこで、日経平均の戻りの目安について考えて行きます。


<図4>日経平均株価の推移
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
出所:MARKETSPEEDII

 一般的に、株価が急落した後の戻り局面では、「下げ幅に対してどこまで戻せるか?」をテーマに、水準感が意識されやすくなるため、フィボナッチ・リトレースメントを参考にします。


 先週末18日(金)時点の株価は、3月26日高値と4月7日安値の下げ幅の「50%戻し」のところに位置しています。このまま戻り基調が続くのであれば、「61.8%戻し」や「76.4%戻し」が目標となりますが、具体的な株価は、それぞれ3万5,383円と3万6,467円になります。


 チャートを過去に遡って見ても、昨年7月から8月の急落時からの反発局面で、フィボナッチ・リトレースメントの「38.2%戻し」、「50%戻し」、「61.8%戻し」、「76.4%戻し」を意識しながら株価が推移していたことが分かります。


今週も注目材料が多い

 このように、テクニカルの視点では、短期的な株価の戻りへの期待がつながっている格好ですが、次は、株価材料の視点でも考えていきます。


 今週から日米で企業決算の発表が本格化していくため、基本的には個別の業績と全体相場への影響をにらみながら推移することになります。


 具体的には、国内では キーエンス(6861) や 信越化学工業(4063) 、 デンソー(6902) 、 ファナック(6954) 、 ニデック(6594) などの決算が予定され、米国市場では テスラ(TSLA) や ボーイング(BA) 、 プロクター・アンド・ギャンブル(PG) 、 3M(MMM) など、注目企業の決算が相次ぎます。


 決算での最大の焦点は、「関税政策などの米トランプ政権の動きによる企業業績への影響」になります。業績見通しについては、ある程度の悪影響を反映して開示したり、あるいは影響を考慮せずに開示したり、もしくは見通しを非公表とするなど、企業によって対応が分かれることになりそうです。


 ある程度の状況が確定した段階で、業績見通しの修正を後日発表することも想定されるため、余程のポジティブサプライズが無い限り、決算発表でいったんの材料出尽くし感とはならず、市場の不透明感ムードが継続し、株価の反発基調が強まりにくいことも考えられます。


 また、今週は22日(火)にIMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し」が公表されるほか、24日(木)には日米の財務相会談が予定されています。特に、日米財務相会談は内容によっては為替市場で円高に大きく動くことも考えられるため、注意が必要です。


 さらに、日本銀行の金融政策決定会合が来週の4月30日(水)~5月1日(木)、FOMC(米連邦公開市場委員会)が再来週の5月6日(火)~7日(水)に開催される予定でもあり、そろそろ日米の金融政策イベントに対する思惑も働きやすくなってくると思われます。


 したがって、株価材料の視点で捉えた今週は、「状況次第でムードが変わる」不透明感が続くことになります。


くすぶる「恐怖指数」の波乱の芽

 最後に、足元の相場に漂う底打ち感についても考えて行きたいと思います。


 先ほどの日足チャートや15分足チャートでも見てきたように、確かに足元の株式市場は、ひとまず株価の下振れ警戒感が後退している印象です。その根拠のひとつとして用いられているのが、「VIX指数」です。

VIX指数はシカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出・公表し、S&P500種指数を対象とするオプション取引のボラティリティ(価格変動)を基に算出したものです。


<図5>米S&P500とVIX指数の動き
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
出所:MARKETSPEEDII

 上の図5は、米S&P500とVIX指数の日足チャートですが、下段に表示されているのがVIX指数です。


 VIX指数は「恐怖指数」とも呼ばれ、市場参加者の心理を表していると言われています。「市場の不安感強まるとボラティリティが高くなる」、もしくは、「ボラティリティの高さが市場の不安を表している」という考え方が恐怖指数のイメージにつながった格好です。


 一般的に、VIX指数の数値が高いほど、投資家は相場の先行きに不安感を抱いていると見做され、通常はVIX指数の値は「10」から「20」の範囲内で動きます。このVIX指数の値が「20」を超えてくると要警戒とされます。


 あらためて図5を見ると、最近のVIX指数は4月7日に52.33まで急上昇した後、先週末の17日に29.65まで低下しています。チャートを遡ると、昨年夏場の急落時も、VIX指数が38.57まで急上昇した後、数値の落ち着きに伴って株価も復調傾向を辿っています。


 ただし、ここで注意しておきたいのは、「足元でVIX指数が低下したとはいえ、まだ20まで低下するには距離を残している」こと、「VIX指数はあくまでも相場の変動率の見通しに過ぎない」ことの2点です。


<図6>米S&P500とVIX指数(日足)の動き その2(2025年4月17日時点)
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
出所:Bloombergデータを基に作成

 上の図6は図5を少し見やすくしたものです。


 図6では、昨年の8月と12月、今年の3月4月にVIX指数がピークをつけていますが、いずれも、株価下落の底のタイミングとなっていることが分かります。


 こうしてみると、VIX指数は短期の取引では参考になりそうですが、中長期的にはあまり使えないかもしれません。


 というのも、昨年の8月からVIX指数が急上昇する度に、株価の上昇トレンドが弱くなり、足元では下落基調を強めています。加えて、足元のVIX指数の値はようやく「30」を下回ったばかりで、相場の変動率の見込みが高いままです。


 そのため、ひとまず落ち着いているように見える現在の相場環境も、再び波乱の展開となる可能性があることは意識しておいた方が良いかもしれません。


<図7>米S&P500とVIX指数(日足)の動き その3(2021年6月~2024年3月)
今週の日米株:恐怖指数高く、下落不安残る。決算はファナック、キーエンス、テスラ、3M…
<図7>米S&P500とVIX指数(日足)の動き その3(2021年6月~2024年3月)

 上の図7は、2021年6月から2024年3月までの米S&P500とVIX指数の推移を示したものですが、図の左側の2021年の10月から2022年の10月あたりに注目すると、VIX指数が「20」割れと「30」超えを繰り返しながら、S&P500が長期の下落トレンドを辿っていたことが分かります。


 この時期は、米国でインフレが予想以上に進行し、FRB(米連邦準備制度理事会)が急ピッチで利上げを実施したことに伴い、その後にやって来るかもしれない景気後退が懸念されていました。


 現在も、米トランプ政権の関税政策の影響により、「景気後退が懸念されている」という点では当時と共通している面もあるだけに、中期的にはまだ「下落トレンドが続く可能性が残っている」という意識は持っておいた方が良いかもしれません。


(土信田 雅之)

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