米国のトランプ大統領の高関税政策でただでさえ乱高下が続く中、今週は日本時間27日(木)早朝にAI(人工知能)関連の花形株 エヌビディア(NVDA) が決算発表します。


 同社の株価は2025年に入って前年末比2.99%安とかつての勢いを失い、先週も前週末比3.18%安と反落しました。


 今期2025年2-4月期の業績見通しが予想を下回ると、全体相場を巻き込むような株価急落もありそうです。


 米国では、好景気を支えてきた旺盛な個人消費に陰りが見える指標が相次いでいるため、25日(火)の民間調査会社コンファレンス・ボードの2月消費者信頼感指数、26日(水)の1月新築住宅販売件数にも注意が必要です。


 先週の20日(木)には世界一の小売チェーン、 ウォルマート(WMT) が市場予想を下回る2026年1月期の通期利益見通しを発表。


「ウォルマートショック」と呼べるような全体相場の急落が発生し、ウォルマートは前週末比8.9%急落しました。


 さらに、21日(金)には米国個人消費の動向を反映した2月のミシガン大学消費者信頼感指数確報値や1月中古住宅販売が予想を下回り、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前日比1.71%も急落。前週末比でも1.66%安でした。


 今週28日(金)には米国の1月個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されます。


 米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が最重要視する、食品・エネルギーを除くコアPCEデフレーターは、前回12月の前年同月比2.8%の伸びから2.6%の伸びに鈍化する見通しです。


 また、米国の景気減速見通しが台頭しているため、今週は日米金利差縮小によるさらなる円高の進行にも注意が必要です。


 先週は19日(水)に日本銀行の高田創審議委員が「一段のギアシフトを進める局面だ」と発言。追加利上げに積極的な姿勢を示したことで、日本の長期金利の指標となる10年国債の利回りが一時15年ぶりとなる1.435%まで上昇。


 為替市場では1ドル=148円90銭台まで円高が進みました。


 21日(金)には日銀の植田和男総裁が、長期金利が急上昇する場合は機動的に国債の買い入れを増額すると火消し発言に回りました。


 しかし、日本が天皇誕生日の振替休日だった24日(月)夜のニューヨーク為替市場は1ドル=149円70銭台で取引を終了するなど、1ドル=150円割れの円高が続いています。


 先週の日本株は円高進行やトランプ大統領の高関税政策に対する警戒感から自動車株、精密機械株などが下落し、国内金利上昇で不動産株や小売り株もさえない展開でした。


 日経平均株価(225種)は週半ばに崩れ、前週末比372円(1.0%)安の3万8,776円で終了しました。


 24日(月)夜の米国市場は取引時間中、リバウンド上昇を試みたものの、トランプ大統領がカナダ、メキシコへの25%関税が「予定通り進んでいる」と発言したこともあり、S&P500種指数は前営業日比0.5%安と続落しました。


 エヌビディアの決算発表を前に週前半は膠着(こうちゃく)相場が続きそうな気配です。


 週明け25日(火)の日経平均株価の終値は、前週末比539円安の3万8,237円でした。


先週:ウォルマートショックや個人消費低迷で米国株暗転。日本株は半導体株に見直し買い!

 先週は18日(火)に米国トランプ大統領が米国に輸入される自動車、半導体、医薬品に25%程度の関税を課すと発言。


 日本車の関税が現状の2.5%から25%に引き上げられると、2024年に600兆円を超えた日本のGDP(国内総生産)を0.2%程度押し下げるという見方もあります。


 これは日本経済の中核を担う自動車産業にとっては大打撃であり、主力の トヨタ自動車(7203) は前週末比3.5%安と3週連続で下落しました。


 同じ18日にはサウジアラビアで、米国とロシアの高官がロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた協議を行いました。


 しかし、当事者であるウクライナのゼレンスキー大統領は協議に呼ばれず、トランプ大統領は同氏を「交渉カードを持っていない」「会議に出席する価値なし」などと口撃。


 先走り気味の停戦交渉の行方はいまだ不透明です。


 ただ19日(水)に公表された1月29日終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録で、FRBが米国政府の債務上限問題に関連してバランスシート縮小(量的引き締め)の減速・一時停止を検討していたことが明らかになり、S&P500種指数は上昇。6,144ポイントの史上最高値を更新しました。


 しかし、20日(木)のウォルマートの決算や21日(金)の予想を下回る多くの経済指標を受けて個人消費の減速懸念が高まり、米国株は急落しました。


 日本では、21日(金)に1月のCPI(全国消費者物価指数)が発表。


 庶民の生活実感に近い生鮮食料品を含むCPIが前年同月比4.0%の上昇、生鮮食料品を除くコアCPIが3.2%の上昇と、いずれも前月を上回る伸び率でした。


 これを受けて、これまで2025年後半とみられてきた日銀の追加利上げが、7月の参議院選挙前の5月1日(木)、6月17日(火)の金融政策決定会合に前倒しされる観測も一部で浮上しています。


 国内の長期金利の指標である10年国債の利回りは21日(金)に一時、1.46%台まで上昇。


 金利の上昇で不動産購入や消費意欲低下が警戒されたことで、不動産株や小売株といった内需株の一角が下落しました。


 主力の 三井不動産(8801) は前週末比4.6%安と3週連続で下落。


 円高進行でインバウンド(訪日外国人)需要の減速が警戒される 三越伊勢丹ホールディングス(3099) が9.6%安となるなど、百貨店株も軟調でした。


 その一方、半導体成膜装置の KOKUSAI ELECTRIC(6525) が27.0%高、半導体ウエハ洗浄装置で世界一の SCREENホールディングス(7735) が15.3%高。2024年後半以降、株価下落が続いていた半導体株に見直し買いが入りました。


 また金利上昇が収益に貢献する銀行株や保険株も上昇し、 第一生命ホールディングス(8750) が3.8%高。


 2024年12月に株主優待制度の廃止を発表して株価が暴落した回転すしチェーンの くら寿司(2695) が20日(木)に一転、優待制度再導入を発表してストップ高。週間でも18.4%高となるなど、いまや株主優待の新設・拡充・復活が個別株を急騰させる大きな材料になっています。


 またポケモンカードをコレクションできるアプリ「ポケポケ」の大ヒットで業績が大幅に改善しているゲーム会社の ディー・エヌ・エー(2432) が9.3%高。同社は2025年2月に入って前月末比46.9%も急騰しており、2025年の人気株筆頭候補といえそうです。


今週:次世代製品好調ならエヌビディア株急騰も?米国物価指標やホームデポ決算に注意!

 今週は日本時間27日(木)早朝のエヌビディアの決算発表が半導体株をはじめ全体相場に大きな影響を与えそうです。


 これまで前年同期比2~3倍という超ハイペースの売上高成長が続いてきた同社ですが、前々期の2024年7-10月期は前年同期比93.6%の増収と、ついに100%(2倍)のハードルをクリアできませんでした。


 今回発表の2024年11月-2025年1月期も増収率は前年同期比70%台の予想で、成長鈍化は避けられないもよう。


 今期2025年3-5月期の売上高見通しが、市場予想の60%台を超えられるかが焦点になりそうです。


 むろん、次世代高速半導体の「ブラックウェル」が売上増加に貢献している可能性もあり、同社の株が急騰する可能性も捨てきれません。


 また今週も、25日(火)の2月消費者信頼感指数や全米最大のホームセンター運営会社 ホームデポ(HD) の決算発表など、個人消費がらみの米国経済指標・企業決算が米国株を大きく動かす可能性があります。


 そのほか、今週は2月末で退任するFRBのバー副議長やボウマン理事などFRB高官の発言も相次ぎます。


 28日(金)にはFRBが重要視する物価指標である1月の個人消費支出の価格指数(PCEデフレーター)も発表されるため、今後の追加利下げの時期などについて具体的な発言があると株式市場に影響が出そうです。


 日本では同じ28日に東京都区部の2月CPIが発表。


 生鮮食料品を除くコアCPIは前年同月比2.3%増に鈍化する見通しです。


 生鮮食料品の高騰は地球温暖化などの影響もありますが、物価高に対する批判を回避したい政府・日銀が追加利上げを急ぐようなら、円高や国内金利上昇が進むため、日本株にとってマイナスといえるでしょう。


 新型コロナウイルス感染症の発生源となった中国・武漢では、人間に感染するコウモリ由来の新たなコロナウイルス発見のニュースも報じられています。


 また23日(日)に総選挙が行われたドイツでは最大野党の中道右派が勝利し、極右政党が第2党に躍進しました。


 明るいニュースといえば、22日(土)に米国著名投資家のウォーレン・バフェット氏が保有する日本の五大商社株の買い増しを検討しているニュースが流れたこと。


 2024年5月に最高値をつけた 三菱商事(8058) が2025年に入って前年末比8.6%下落するなど、商社株の上昇トレンドはすでに崩れています。バフェット買いを好感した今週の値動きに期待したいところです。


 2020年のコロナショック、2022年のロシアのウクライナ侵攻、2023年のシリコンバレー銀行破綻による米国地方銀行ショックなど、近年は2月末から3月頭にかけて大きな事件が発生し、相場が急変動することも多いので注意が必要です。


(トウシル編集チーム)

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