本レポートは、2月28日(金)にリリースした以下の動画の内容を解説したレポートです。
【日経平均急落】一時3万7,000円割れ。
日経平均急落、三つの理由
2月28日に日経平均株価が急落、前日比1,100円安の3万7,155円となりました。昨年10月から続いてきた3万8,000~4万円のボックス相場を下放れた形となりました。
日経平均週足:2024年1月4日~2025年2月21日

以下三つのネガティブ要因が重なった複合ショックから日経平均は急落しました。
日経平均急落につながった三つの弱材料

もっとも大きな影響があったのが、トランプ関税への不安です。
【1】 発動を延期していたメキシコ・カナダへの25%関税を、3月4日に実施すると表明。
【2】 中国向け追加関税10%を発動済みだが、さらに10%上乗せすると表明。
【3】 鉄鋼・アルミニウムの輸入品全てに例外なく25%関税をかけると表明。
【4】 4月以降、世界中の国々に「相互関税」を課す方針を表明。
もし全て実施すると、自動車産業ほか、世界中の製造業が深刻なダメージを受けます。米国も無傷ではいられません。米景気も世界景気も、関税ショックで後退局面入りする可能性があります。どこまでが脅しでどこまで本当に実施するか分かりませんが、その不安を受けて、海外投機筋に「世界景気敏感株」である日本株を売る動きが広がったと考えられます。
第2の不安材料が、米国ナスダック総合指数を上昇させてきた生成AI関連株に、やや調整色が出ていることです。
第3の不安材料が、じりじり進む円高です。日銀(日本銀行)が利上げ姿勢を強めていることから、円高が進んでいることが、不安材料となっています。
複合ショックで日経平均急落となったわけですが、最大の不安はトランプ関税です。これまで米国株は、トランプ政権の政策のうち、株式市場にプラスの側面ばかり見て、「トランプラリー」といわれる上昇相場を形成してきました。ところが、足元トランプ政策のマイナス面に注目が当たっています。とりわけ関税ショックへの警戒が強まっています。
トランプ政権の政策、株式市場の受け止め

ウクライナ停戦の可能性が出たことは、欧州株にプラス材料です。戦争の終わらせ方に大いに問題があるものの、戦争が終わり、ロシアと欧州の間の経済取引が再開されると、欧州経済にメリット大です。それを織り込んで、年初来、欧州株の上昇率が高くなっています。
日経平均下値メドは3万6,000~3万7,000円
昨年末に筆者が作成した「2025年の日経平均予想」は、以下です。
2024年末に作成した「日経平均2025年予想」

年初、トランプ関税への不安で3万7,000円まで下がった後、年末、4万4,000円に向けて上昇すると予想しています。現時点で、この予想を変更する必要はないと考えています。
ただし、予測不能のトランプ関税ショックで、さらに下がる可能性も否定はできません。その場合、3万6,000円まで下がることもあり得ると思います。
年末4万4,000円へ上昇する予想を維持
三大不安(トランプ関税・AIラリー終焉(しゅうえん)・円高)から、当面、日経平均は上値が重くなりそうです。ただし、日経平均が弱含む局面では、積極的に日本株を買い増ししていきたいと思います。
メインシナリオでは、米景気がソフトランディングする中で、日本の景気・企業業績は緩やかな拡大が続くと予想しています。
東証プライム上場主要841社連結純利益(前期比%)

トランプ関税がどうなるか、予測不能です。ただし、私は、世界経済後退を招くことがない程度で、コントロールされると考えています。第1次トランプ政権の時から、トランプ大統領は株価をよく見る大統領でした。米国株が下がり始めると、対外強硬策を緩めるとみています。
ただし、実際にどう動くかはまったく予測不能です。世界経済を破壊するまで、エスカレートするリスクに注意が必要です。
円高があっても、1ドル=140円台までと予想しています。
日本株は良い買い場と判断
日本株は割安で、長期的な上昇余地は大きいと考えています。先週も、短期的なショック安に注意と本コラムで述べていました。想定通り、ショック安が起こりました。ここからは、時間分散しながら、積極的に日本株を買い増ししていきたいと考えています。
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(窪田 真之)